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邦画アニメ2020振り返り|BL人気作の映像化に圧倒的感謝

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2020年……。名前を出すのもうんざりな“あのウイルス”のせいで、映画業界も波乱続きだったと思います。だって、映画館が開かないんですよ。上映したくてもできないじゃないですか? 

筆者はあらゆる作品が公開延期のお知らせをするたびに、「謝らないで、悪いのはあのウイルスだから!」とTwitterに向かって口頭でつぶやいたものです。

とはいえ、映画館が開かず公開が延期された作品もあった中、邦画アニメは50作品近く上映されています。その中の約1割を占めるジャンルの邦画アニメがありました。それは、BL。年に1本あるかないか、というジャンルだったのが信じられないくらいの盛り上がりだったように思います。

そして2020年に公開された劇場版BLアニメには、「映倫が設ける4つの区分を網羅した」という特徴も。そこでなぜこの区分になったのかにも触れつつ、2020年の映画館を盛り上げてくれた劇場版BLアニメ(※1)の見どころを紹介します。

※1…5作品中、イベント上映作品はのぞいた4作品

映画館をライブハウスにしちゃう
青春×バンドBL『映画 ギヴン』【G】


(C)キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会

佐藤真冬、上ノ山立夏、中山春樹、梶秋彦ら4人のバンドを舞台に、彼らや周囲にいる人たちの間で巻き起こる恋愛や友情を描いた『ギヴン』。劇場版では2019年に放送されたTVアニメの続編、大人組と呼ばれるベースの春樹とドラムの秋彦、そして秋彦の同居人 村田雨月たちの三角関係が描かれます。

“共鳴”がテーマとなっていたように感じる本作。春樹ら3人が自分自身や恋愛のことでもがき苦しむ姿を見た真冬は、そこに自分の姿を重ね「夜が明ける」という楽曲の歌詞を完成させます。




そしてライブで演奏された「夜が明ける」。痛みも悲しみも経験してきた真冬だからこそのメッセージが、楽曲にのって春樹と秋彦、雨月の新たな一歩へとつながっていく様子に、観ているこちらの感情まで揺さぶられるのです。そんな彼らの共鳴は、映画館をライブハウスだと錯覚させるくらいの力を持っていました。



またセンチミリメンタルによる主題歌が、書き下ろしとして最高峰だったことも付け加えておきたいポイント。どこか詩的で掴みにくい彼らの感情をエンドロールとともに深めていける、「これぞ主題歌」だと思わずにはいられない楽曲です。

映倫区分は誰でも観覧可能な「G」。音楽を通してヒシヒシと伝わってくる剥き出しの青春と恋愛に、きっとあなたも“共鳴”するでしょう。

潮風を感じる純愛BL
『海辺のエトランゼ』【PG12】


(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

『海辺のエトランゼ』は沖縄の離島を舞台に、ゲイの小説家・橋本駿と家族を亡くした青年・知花実央の純愛を描いた作品です。好きになった相手と心も体も通じ合うことは叶わないと諦めてきた駿。大切な人と一緒にいることが当たり前ではないと痛感してきた実央。違うベクトルで“孤独”を感じてきたふたりは駿の“下心”をきっかけに惹かれ合い、男同士の恋愛がマイノリティであることを理解した上で一緒にいることを選びます。そのふたりの覚悟に、深い優しさを感じるのです。



この多幸感を加速させるのが、映像の美しさ。潮風や生命力あふれる植物の匂い、打ち寄せる波……。そんな自然の息吹がスクリーンを越えて伝わってくるのです。ちなみに筆者はあのウイルスに立ち向かう策ができたら、絶対に聖地巡礼をすると決めています。すでに交通手段と宿の候補は挙げているので、頼むから行かせてほしい。


また本作の区分は、12歳以下の子どもの鑑賞には保護者の助言や指導が必要とされる「PG12」。裸で抱き合う、軽度の喘ぎ声が入るなどの性愛描写が見られるため、この区分に指定されたのでしょう。

ただふたりのセックスからは、誰かを好きになることの幸せがありありと伝わってきます。だから性愛描写のことも含め内容について事前に説明をした上で、観た率直な感想をきちんと“語り合う”のなら親子で観てもいい作品だと思います。

※決してお子さんに見せることを推奨する意図はありません。一度ご自身で鑑賞する、周りの大人に相談するなどして、あくまでご家庭や保護者の方の方針に沿った判断をお願いします。

不思議な三角関係の甘々BL
『イエスかノーか半分か』【R15+】


(C)BL FES!!製作委員会

『イエスかノーか半分か』は、人気アナウンサーの国江田計とアニメーション作家の都築潮、そしてジャージとマスクが標準装備の男オワリの三角関係を描いたラブストーリーです。

実は、国江田とオワリは同一人物。毒舌でぐうたらな姿を徹底的に隠していた国江田は、とある事故をきっかけに都築に本当の一面を知られてしまい、とっさに“オワリ”と名乗ります。オワリであることをいいことに国江田は、都築にだけは本当の自分をさらけ出すように。しかし都築が国江田に惹かれているのを知り、複雑な思いを抱えるようになります。



本当の自分を知ってほしい一方で、知られて落胆されたくないという矛盾を抱える国江田。そんな彼とオワリ双方に「惚れてまうやろ!」というイケメンぶりを発揮してくる潮。実質ふたりなのに三角関係となっている不思議な恋愛模様に、胸の高鳴りが抑えられなくなっていくこと必至です。


本作は直接的な性描写はないものの何をしているのかが想像しやすく、かつ喘ぎ声もしっかり入っていたため、15歳以下の閲覧を禁止する「R15+」に区分されています。ほとんどの劇場で上映は終了しているので、観るとしたら配信やBlu-ray等になるかと思いますが、鑑賞は15歳になってからでお願いしますね。

タバコの香りがする刺激的な極道BL
『囀る鳥は羽ばたかないThe clouds gather』【R18+】


(C)ヨネダコウ・大洋図書/「囀る鳥は羽ばたかない」製作委員会

舞台は極道、主人公はドМで変態、淫乱――。見るからに“大人の香り”が漂う『囀る鳥は羽ばたかないThe clouds gather』は、真誠会若頭の矢代と付き人兼用心棒の百目鬼力の、きっとこれから始まる壮大なラブストーリーの序章を描いた作品です。

本作では、矢代に焦点をあてた物語が展開されました。ヤクザで好色家な矢代は共感性に乏しいキャラクターのように思えますが、どうしようもなく“人間味”を感じる人物です。その理由は、彼の過去に起因する“自己矛盾”にあります。そんな捉えどころのない矢代の本音を無意識のうちに引き出すのが百目鬼。きっと映画が終わるころには、矢代のそばにいてほしいと願わずにいられないでしょう。


口淫や局部は映さないものの下半身のアップがあるなど、性愛描写に生々しさが感じられる本作。一方的に自分の欲をぶつける暴力性をはらんだ描写もあり、観ていて辛いシーンもあります。さらに殴る蹴るシーンも目立つ上、若者への影響力から年齢制限を設けるようWHOから世界各国へ勧告が入った喫煙シーンも散見されます。

ただこれらの描写は矢代のバックグラウンドや、ヤクザの世界を際立たせるのに必要不可欠なシーン。そのためこれらをカットせずに「R18+」で描き切る決断をしたであろう、作り手の熱意が感じられる作品でもありました。

■ネタバレレビューはこちら
『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』<R18+>レビュー|百目鬼、頭を頼むぞ

2021年もいい映画館でBLアニメが観れますように

「いや、この筆者が単純にBL好きなだけやん」

こう思われた方、正解です。2020年の邦画アニメシーンを振り返ると言っておきながら、必然的にBL作品が多くなってしまうのは分かりきっていました。

ただ1つだけ、言わせてください。紹介した劇場版BLアニメは本当に素晴らしい作品です。だからどうか、紹介した作品を観ていただけないでしょうか。年齢制限のある作品は、その年齢になってからでも決して遅くありません。何年たっても色褪せない作品ばかりですから。

そしてBL漫画には数多くの名作があります。その世界を大きなスクリーンで観られる時代に生き続けたいので、製作・制作に携わる皆さま、2021年以降も劇場版BLアニメをつくっていただけると、これを書いているいちBLファンの生きる糧となります。どうか、どうか、よろしくお願いいたします。

(文:クリス)

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