映画コラム

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2020年12月26日

『AWAKE』レビュー:吉沢亮がAI将棋開発に炎を燃やす!|再生と希望と挑戦を描く

『AWAKE』レビュー:吉沢亮がAI将棋開発に炎を燃やす!|再生と希望と挑戦を描く



増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

人工知能=AIの発達は日進月歩の勢いで、そのうち本当に「仮面ライダーゼロワン」のように人間型AI=ヒューマノイドが作られる世の中も来ることでしょう(現在上映中の劇場版、感動で涙モノでしたね)。

さて、本作は2015年に行われたAI対人間の将棋対決“電王戦”に着想を得た青春映画です。

一度は夢に挫折した若者がAI将棋との出会いによって生きる活力を取り戻し、やがて再び勝負の場に打って出ていくさまが熱く描かれていきます。

好漢・吉沢亮が、そんな主人公を演じます!

(ちなみに“AWAKE”とは“目覚め”“覚醒”といった意味があります)

AI対人間の将棋対決へ至る
静かで熱い青春の軌跡


 
映画『AWAKE』は、2015年のAI“AWAKE”VS人間の将棋対決“電王戦”に挑むプログラマー清田英一(吉沢亮)と7段のプロ棋士・浅川陸(若葉竜也)が初めて出会った2003年へ遡り、そこから2015年の対決に至るふたりの運命を描いていきます。 

プロ棋士をめざしていた英一でしたが、どうしても圧倒的な強さと才能を誇る陸に勝つことが出来ません。

ついに英一はプロの道をあきらめ、普通の生活に戻って大学に入学します。

しかし幼い頃から将棋以外何もしてこなかった英一は、人付き合いにも苦労しながらぎこちないキャンパス・ライフに甘んじる日々ではありました。

ところがある日、彼はふとしたことから人間の感性ではおよそ考えられない独創的な手を打つコンピュータ将棋に出会います。



そこに理想を求めるべく、英一は人工知能研究会の扉を叩き、先輩の磯野()の手ほどきを受けながら独自のソフト“AWAKE”の開発を始めていきます。

やがて“AWAKE”はコンピュータ将棋大会で優勝を果たすまでに発達し、ついに人間のプロ棋士との対局“電王戦”に出場するよう依頼されます。

相手が今や7段の若手強豪棋士として活躍している陸と知り、英一は奮い立つのですが……。
 

どのような世界も人も
熱く燃えることはできる!



本作は将棋以外に何のとりえもなかった、いわゆるオタク気質の若者が、不器用な人付き合いに苦労しながらもやがてAI将棋に希望を見出し、因縁とも宿命ともいえるライバルに再び挑戦するまでの熱い日々を描いていきます。

こうした構図は体育会系スポーツ映画のパターンではありますが、それを将棋プラスAI開発の世界に導入してスリリングな昂揚感を醸し出させているのが本作の面白さともいえるでしょう。

将棋もAI開発も映像的には“静”の世界であり、特に昭和の時代だとこういった題材は“映画に向かない題材”とされてきた節もあったようですが、平成の時代に入って徐々に文系オタクや理系オタクに光が当たるようになっていった感もあります。

そして令和の世となった現在、こうして“静”を躍動的に描く映画が続々と登場してきているのも、実に喜ばしいことと言えるでしょう。

また吉沢亮のように、そうしたオタク気質の若者を主演俳優としてのオーラを発散させながら巧みに演じきることのできる若手俳優が続々と台頭してきたことも、こうした企画を成立させてくれる秘訣にもなっている気がします。



監督は、これが商業映画デビューとなった山田篤宏。

第1回木下グループ新人監督賞グランプリに輝いた自身のオリジナル・シナリオの映画化で、そこには本作の主人公同様ともリンクする野心と挑戦が好もしく感じられます。

対戦相手双方の感情と緊張を重視した演出によって、将棋のルールを知らない人にも、勝負の展開などをわかりやすく伝えてくれているのも妙味です。

若葉竜也や落合モトキ、寛一郎など若手キャスト陣も総じて好演していますが、幼い頃の主人公らの将棋の先生・山崎役の川島潤哉のさりげない存在感も印象的で、特に勝負を終えた後の彼の言葉は、この映画の本質を見事に伝え得たものになっていました。

どのような世界でも熱く燃えることができることを示唆した本作、おそらくはすべての観客に何某かの希望を与えてくれることでしょう!

(文:増當竜也)

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