乃木坂46の今と未来|白石卒業後も人気は持続するのか? #乃木坂46
乃木坂46が今年も「紅白歌合戦」(NHK総合)に出演する。グループにとって紅白は2015年の初出場から6回連続6回目の出場だ。今年は白石麻衣の卒業後の初の紅白ということで、パフォーマンスにも注目が集まる。
2020年の乃木坂46の活動総括
新型コロナウイルス感染症の拡大によって握手会やライブなどが制限され、思うような活動ができなかった2020年。乃木坂46は5月に新型コロナウイルスの感染拡大防止を呼びかけた楽曲「世界中の隣人よ」を公開し、医療従事者や自粛を余儀なくされている人々へのエールを送った。同曲のMVには生駒里奈や西野七瀬、桜井玲香など卒業生がリモート参加したことでも話題となり、チーム乃木坂の結束力を感じさせられた。中でも最も象徴的な出来事といえば、エース白石の卒業だろう。白石の卒業コンサートは10月にオンラインでの開催となるなど、決して万事順調とまではいかなかったが、エースの門出をファンとともに祝うことができたことにまずは感謝したい。
それに続くように2期生の堀未央奈がソロ曲「冷たい水の中」のMVを公開し、11月27日にリリースされる26thシングル「僕は僕を好きになる」をもって卒業することを発表。MVでの卒業発表という前例のない発表方法に驚かされたが、彼女らしい演出とも思えてならない。2020年は1期生、2期生をともに引っ張ってきた2人の卒業(発表)によって、これまで以上に世代交代の流れを強く感じさせられた1年だった。
乃木坂46と「紅白歌合戦」の歴史
乃木坂46と紅白の歴史を振り返ると、決して順調とは言えない道のりだった。2014年はすでに4万人弱の会場を埋めるアイドルグループへと成長していた乃木坂46。紅白への出場が確実視されるなか、乃木坂46の名前が呼ばれることはなかった。この悔しさを糧にして乃木坂46は2015年には初出場のきっぷを掴んだ。披露した楽曲は乃木坂46の代名詞とも言える「君の名は希望」。当時所属していたメンバー全員が出場し、初出場ながらお茶の間にも乃木坂46らしいステージを見せた。続く2016年は橋本奈々未がセンターを務めた「サヨナラの意味」を披露。2016年の紅白では翌年に卒業を予定していた橋本に対して当時キャプテンだった桜井玲香が手紙を読み上げるというサプライズもあった。前年と同様紅白のウラトークを担当していた公式お兄ちゃんのバナナマン設楽統が「いい顔だ!」と橋本の最後のパフォーマンスを讃えた一言は現在でも鮮明に覚えている。
2017年は同年の「第59回日本レコード大賞」(TBS系)でも大賞を受賞した「インフルエンサー」を披露した乃木坂46。超高速ダンスに代表される高難度のパフォーマンスは乃木坂46を新たなフェーズへと導いた感が強い。
2018年はというと西野七瀬のラストシングルとなった「帰り道は遠回りしたくなる」が披露され、西野七瀬がこのステージをもって卒業を果たした。2019年は桜井から秋元真夏へとキャプテンの交代があった激動の年。紅白では前年にリリースされ「第60回日本レコード大賞」で連覇をとった「シンクロニシティ」を欅坂46、日向坂46ら坂道グループと合同で披露し、坂道グループの一体感を感じさせるステージとなっていた。
乃木坂46の音楽性と「Route 246」の魅力
乃木坂46の特徴としてよく挙げられるのが、「清楚」「私立女子高っぽさ」といったものである。欅坂46の言うなれば反社会性、日向坂46のハッピーオーラに代表される底抜けの明るさみたいなものとはまた違う乃木坂の特徴として語られることが多い。1stシングルから5thシングルまでを生駒里奈がセンターを務め、乃木坂らしさの礎を築き上げると、その後は白石麻衣や西野七瀬、齋藤飛鳥とセンターが移り変わっていき、「儚さ」「お洒落」といった現在の乃木坂46のイメージが醸成されていった。そのような乃木坂らしさは楽曲の数々にも現れている。乃木坂46の代表曲である「君の名は希望」や「きっかけ」のように音の心地よさやメロディの美しさ、繊細な歌詞性を重視した楽曲はまさに乃木坂らしさが反映されたものだろう。乃木坂の楽曲はキャッチーさには欠けるが、豊かな音楽性がある。
21日には紅白の曲目が発表されたが、乃木坂46は「Route 246」を歌唱することが決定した。個人的には「世界中の隣人よ」になると思っていたので少々面食らった感じではあるが、本曲はむしろ紅白の華々しいステージはぴったりかもしれない。
「Route 246」は作曲・編曲を小室哲哉が手掛けた楽曲で、乃木坂46にとっては初の小室による楽曲提供となった。小室は2018年から音楽業界の引退を発表していたが、今回秋元康によるアプローチもあり、2年3ヶ月ぶりに復帰することが決定したのだという。同曲でセンターを務めたのは小室サウンド好きを公言している齋藤飛鳥が務めている。
楽曲はというとやはりシンセの主張が激しい小室サウンドが基調となっており、ここに乃木坂らしさを見出すのは難しいが、手足を駆使した繊細なダンス表現には乃木坂らしさも感じられる。これまで乃木坂46を応援してきた方には新鮮に、初めて紅白で見る方には懐かしい気持ちで見ることができるだろう。
楽曲やダンス意外に注目したいのが衣装だ。楽曲に合わせへそ出しやショートパンツといったスポーティな衣装が特徴的で、ステージに立つと一層見栄えがする。紅白では乃木坂46の新たな一面が見られるだろう。紅白では衣装が新調される可能性もあるが、ぜひ衣装にも注目してみたいところだ。
白石麻衣卒業による今後の展望
紅白を終えるといよいよ新年が始まるが、2021年1月27日にリリースされる26thシングル「僕は僕を好きになる」で乃木坂46は新センターに山下美月を迎え新たなスタートを切ろうとしている。このシングルをもって堀は卒業を発表しており、1期生の白石、2期生の堀というこれまでキーとなってきたメンバーが抜けるその穴を埋めるのは後輩である3期生や4期生となってくるだろう。過去にも2018年リリースの20thシングル「シンクロニシティ」で生駒、同年リリースの22thシングル「帰り道は遠回りしたくなる」で西野が卒業と立て続けにセンター経験者が卒業を発表したが、それぞれ初週売上は111.7万枚、106.3万枚と大きく売上を落とすことはなかった。西野卒業後にリリースされた23thシングル「Sing Out!」でも初週100.4万枚を記録し、続く4期生の遠藤さくらがセンターを務めた「夜明けまで強がらなくてもいい」では初週96.5万枚と惜しくもミリオンを逃すも、現在の乃木坂46の安定感を表しているかのように、これまではメンバーの卒業が大きく売上に影響を与えてはいないことが分かる。。
では今回の白石卒業は今後の乃木坂46をどう左右するのだろうか。女性ファンを多く抱えていた白石卒業は乃木坂46にとって打撃となることは間違いないが、熱心な乃木坂ファンよりも、ライトなファン層への訴求力が強いメンバーと言えるため、白石の卒業そのものはCD売上の観点からはさほど影響がないと考えるのが妥当なところだろう。
他方で、現在新型コロナウイルスの影響により従来行われていた握手会が行うことができず、オンラインミート&グリートと呼ばれるオンラインで行う個別トーク会に代替されている。個別トークにおいてもアイドルと1対1のコミュニケーションは担保されているとはいえ、あくまでもオンライン上でのもの。そこにはファンが求めるリアルな実体験はない。リアルの場で推しのアイドルと会話を交わすことができ、ある種ファン同士のコミュニケーションの場にもなりつつある握手会の開催中止は、リアルな実体験を求めるファンの需要に応えられないという点で、CDの売上に大きく影響を及ぼすことは間違いないだろう。ともすれば、2021年以降ある程度の売上減少は免れない。
とはいえ、この2つのタイミング(白石卒業とコロナ禍における握手会の中止)で新曲のセンターに山下を置いたことで、運営がこの辺りで勝負をかけている感がある。1期生からでも2期生からでもなく、将来を見据えた上での3期生からの選抜。山下は近年は活躍が目覚ましく、2020年1月には1st写真集「忘れられない人」を発売するなど、山下は3期生のなかでもトップクラスの知名度を誇り、間違いなく次世代の乃木坂46を背負っていくメンバーのひとりだ。おそらくさらなる新しいファン層の獲得も見込めるだろう。
加えて、山下以外にも2020年9月に初のソロ写真集「夢の近く」(講談社)を発売し、ソロでの活躍も目立ち始めている梅澤美波や3月に2ndソロ写真集「無口な時間」(光文社)の発売や映画『ぐらんぶる』でも俳優としての新境地を見せた与田祐希を始め、6月にスタートした「ノギザカスキッツ」(日本テレビ)でも活躍し、「しあわせの保護色」のカップリング曲である「I see…」のMVが表題曲を超える再生回数(2020年12月29日時点で1613万再生)を記録するなど、遠藤さくらを筆頭に賀喜遥香や筒井あやめら4期生16人の活躍も著しい。
2021年は乃木坂46にとって正念場であることは間違いないが、新センター山下を筆頭に、メディアでの活躍が著しく着実に力をつけている3、4期生の力で乗り越えてくれることを願うばかりだ。
(文:川崎龍也)
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