映画コラム

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2021年01月29日

菅田将暉の魅力と2020年の振り返りー映画、ドラマ、歌

菅田将暉の魅力と2020年の振り返りー映画、ドラマ、歌



映画『糸』より


映画やドラマの出演、そして歌手活動。俳優の枠を飛び出し、さまざまな方面で活躍を止めない菅田将暉。

2020年のドラマ出演は「MIU404」の1本。映画出演は『糸』『浅田家!』の2本。楽曲発表は「虹」の1曲。これまでの露出頻度に比べると少々抑え気味の印象も。ただ、その存在感は本数と反比例していました。

「MIU404」で再証明した圧倒的な存在感と『糸』のギャップ



ドラマ「MIU404」より


2020年6月~9月に放映されていたTBSドラマ「MIU404」。主演は綾野剛・星野源と豪華タッグでした。第3話の終盤でサプライズ登場した菅田将暉に驚いた方も多いでしょう。その人気ぶりゆえに、翌年すぐに再放送されるほどでした。

主演のふたりと相対する悪役・久住を演じた菅田将暉。一見気さくで飄々とした雰囲気がありながら、腹の奥では何を考えているのかわからない。ミステリアスな立ち回りは、善か悪どちらにも染まらないグレーゾーンな役柄を見事に表現していました。

思い出されるのは、2019年1月に放送された日テレドラマ「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」で演じた教師・柊一颯役です。序盤は生徒たちに対して徹底的に悪側でいようと頑なでした。しかし、少しずつ明かされる事実やヒントとともに柊の態度にも変化があらわれます。どちらも時代を象徴する作品です。




映画『糸』より


「MIU404」と時期を同じくして公開されたのが、映画『糸』。小松菜奈とW主演であることも話題となった、純愛を描いた物語です。

「MIU404」や「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」と比べると、その役柄は真逆。小松菜奈演じる葵と出会い、彼女を助けようと駆け落ちを持ちかける少年・漣。もう子どもではないのに、大人ほど上手く立ち回れない歯がゆさをほのかに残したふたりは、スクリーン上で際立っていました。

菅田将暉が出演してきた恋愛映画を挙げるとするなら、記憶に新しいのは『溺れるナイフ』でしょう。また、2021年1月公開予定『花束みたいな恋をした』も有村架純とのW主演で純愛がテーマ。今後はどんなギャップを見せてくれるのか、楽しみですね。

2020年唯一の楽曲「虹」はドラえもん映画主題歌に、MVも話題

歌手としても活躍する菅田将暉。初シングル「見たこともない景色」からスタートし、「呼吸」「さよならエレジー」「ロングホープ・フィリア」と続きました。例年2曲ずつの発表となっていた楽曲ですが、2020年は「虹」の1曲のみとなっています。



『STAND BY ME ドラえもん 2』の主題歌にも抜擢された「虹」。作詞作曲は「さよならエレジー」でもタッグを組んだ石崎ひゅーい氏が担当しました。

元から親交があったというふたり。今回も菅田将暉からの依頼によりコラボレーションが実現したとのこと。映画のストーリーを反映したメロディや歌詞、そして切なくも未来に繋がる希望を感じさせる歌声。お互いリスペクトし合っているからこそ、どこか心温まる安心感が漂う楽曲に仕上がったのではないでしょうか。

また、「虹」は菅田将暉自ら俳優としてMVに出演したことでも話題になっています。古川琴音とともに夫婦役として育児に奮闘する姿を描いたMVは、夫婦+小さな命の繋がりを感じてより楽曲の良さが滲む仕上がりに。出産直前、病院へ向かうタクシーからふたりで見上げる虹の儚さに、感情が動く方も多いでしょう。

映画「浅田家!」で魅せた繊細な演技




2020年に菅田将暉が出演した映画で、特筆したいのは『浅田家!』です。二宮和也演じる写真家・浅田を主人公に、実話を元にした本作。菅田将暉が演じたのは、東日本大震災により甚大な被害を受けた東北で、写真洗浄ボランティアをする大学生・小野でした。



映画『浅田家』より


小学校のグラウンドの一角で、ひたすら写真洗浄をする小野。浅田が一言、二言声をかけても、上の空で生返事をするだけ。顔を上げず、ひたすら写真を見つめながら泥をこそぎ落とす小野の目の暗さとやるせなさは、震災が残していったものを如実に象徴するようです。

浅田が小野の腕をつかみ、しっかりと目を合わせながら「何をしてる?」「手伝わせてくれ」とあらためて声をかけます。徐々に表情がはっきりし、目の焦点が定まり、光が戻ってくる様は印象深く心に残りました。憑依型と評される菅田将暉だからこそ、表現できたシーンではないでしょうか。

2011年。あれから約10年が経とうとしている現在も、震災が土地や人を襲った過去は消えません。時に薄まり、時に濃くなる。時期によってグラデーションに差が出てはいるものの、完全に忘れ去ることはできない。『浅田家!』そして本作での菅田将暉の演技は、その事実をあらためて教えてくれる象徴とも言えると思います。

俳優は、目でも演技する。その点から考えると『浅田家!』での菅田将暉は、これまで以上に目や表情での演技力を発揮したように見えました。大胆にもなれる、不遜な悪役にも、底が知れないダークヒーローにもなれる。そして、妻や子や友人を思い涙する、ひとりの青年にもなれる。



新作映画『キネマの神様』より

菅田将暉が2020年に出演した映画、ドラマの本数は例年より少なめでした。しかし、圧倒的な存在感は変わりません。2021年はすでに3本の映画出演が予告されており、2022年には大河ドラマ「鎌倉殿の13人」への出演も決定。ますます存在感を増す菅田将暉の演技を、これからも見守りましょう。

(文:北村有)

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