映画ビジネスコラム

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2021年02月06日

2020年 映画産業分析:コロナに耐えた東宝&配信を巡る「2つ」の現象

2020年 映画産業分析:コロナに耐えた東宝&配信を巡る「2つ」の現象



配信を巡る2つの両極端な現象

2020年、映画産業の大きなトピックのひとつが「配信シフト」でしょう。この配信を巡って日本においては、両極端な2つの現象を私たちは目撃しました。



一つは、先ほども少し触れましたが、ハリウッドメジャーが劇場公開を取りやめ、配信にかじを切ったことです。ディズニーは自社の配信プラットフォーム「ディズニープラス」を開始。劇場公開予定だった作品をディズニープラスでの配信に積極的に切り替えました。

ワーナーも追随するように、「HBO GO」のサービスを本格化させています。この動きは映画館の今後のあり方を揺るがす事態だったと言えるでしょう。とりわけ、ディズニーの配信への加速スピードは大きく、今後ディズニーの新作は劇場で見られるのかわからない事態になってきています。



そして、もう一つは『鬼滅の刃』の歴史的大ヒットは配信が生んだということです。2019年に放送されたTVシリーズは、民法キー局でも、NHKでもなくローカル放送20局程度での深夜放送でしたが、あらゆる配信サイトに提供するマルチチャンネル戦略を展開し、話題沸騰後にも次々と配信サイトで見る人が増え続け、結果として大ヒットとなりました。

調査会社GEM Standardが作成した、『鬼滅の刃』のコンテンツ接触の重なりのグラフによると、「TVアニメを観た人」は88%、「映画を観た人」は33%。「映画を観た人」33%の内訳は、「映画とTV両方観た人」=10%、「漫画・TV・映画全部観た人」=19%、「映画だけ観た人」=1%。これを計算し直すと、映画を観た人の87.9%がTVを視聴済みだったということになります。深夜放送の視聴率はそれほど大きくありませんから、かなり多くの人が配信で『鬼滅の刃』TV版を観ていたことになるでしょう。

筆者の知り合いでも、映画が大ヒットして話題になっているので、配信サイトで全話観て映画館に行く人が何人かいました。映画公開が始まってから、各配信サイトでも『鬼滅の刃』は常にランキング上位にいる状態が続いていましたので、映画と配信が相乗効果を起こして、互いに観客動員数と再生数を伸ばす結果になったと思われます。

ハリウッドで進行しているのは配信化と島宇宙化の2つ

上記の配信を巡る2つの現象は対照的です。ハリウッドメジャーは、自社の配信サイトにだけ作品を囲い込む戦略で、『鬼滅の刃』はあらゆる配信サイトに作品を提供しました。実は、ハリウッドで今進行しているのは、配信シフトだけではなく、作品の囲い込み、あるいは島宇宙化という事態ではないでしょうか。



『鬼滅の刃』現象に見られるように、配信そのものは映画館と決して相性が悪いわけではないと思いますが、この島宇宙化はもしかすると、映画館とは相性が良くないかもしれません。特定の配信サイトでしか見られないとなると、どれだけ優れた作品でも話題の広がりは限定的になり、仮に関連作品が映画館で上映しても映画館は恩恵を受けにくそうです。

なにより、囲い込みビジネスのキモは、「そこでしか見られない」という状態を作ることにあるので、そのビジネスモデルが成功すると、映画館に作品を出すより、自社配信サイトと契約してもらった方が儲かりやすいでしょう。

ハリウッドメジャーにもそれぞれの事情があるでしょうが、上手い具合に映画館と配信が共存可能な事業モデルを構築してほしいと思います。

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