映画コラム
『ガンズ・アキンボ』レビュー:“ハリー・ポッター”がデスゲームに強制参加!?
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闇との対峙に魅せられた!?
ダニエル・ラドクリフの今
それにしても、気になるのはダニエル・ラドクリフです。1989年生まれの彼、その人気を世界的に決定づけたシリーズ第1作目『ハリー・ポッターと賢者の石』(01)の頃の彼は、とても可愛らしい少年でした。
しかしながらシリーズ最終作『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』(11)を経てからの彼、やはり何かが変です。
そもそも大人気子役が大人の俳優に脱皮するのは難しいとは昔からよく言われることですが、ダニエル・ラドクリフもまた長年しみついたハリー・ポッターのイメージと今後どう向き合っていくのか、かなりの葛藤があったことでしょう。
そして彼は、ハリー・ポッターも幾度か直面した闇との対峙に魅せられたか、この後ダーク・ファンタジーの道を好んで進んでいった節が感じられなくもありません。
『ウーマン・イン・ブラック/亡霊の館』(12)『ホーンズ 容疑者と告白の角』(13)『ヴィクター・フランケンシュタイン』(15)など、これらのダニエル・ラドクリフはまさにダークサイドの住人とでもいった貫録を示す存在感を示していました。
極めつけは2016年のダニエル・シャイナート&クワンの“ダニエルズ”監督による『スイス・アーミー・マン』で、ここで彼が扮しているのは、何と前代未聞の死体役!
(しかも体内に充満したガス=オナラで、ジェットスキーになって海をわたる!? あ、あと途中からは喋ったり、ペニスが勃起したりもします……)
ここで彼は第49回シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀男優賞を受賞するとともに、綺麗事ではすまされないこの世の闇と堂々向き合う異色個性派スターとしての地位を獲得した感もありますね。
またそんな彼だからこそ、現在のネット社会とそれに興じる人々を痛烈に風刺した本作の企画に大いに賛同し、実に映画の柄に見合った存在感を発揮することができたのでしょう。
(ちなみに彼、SNSの類いは怖いから全然やってないのだそうです)
ダニエル・ラドクリフ以外にも、女殺し屋役サマラ・ウィーヴィングのキレッキレな魅力をはじめ、キャストそれぞれも「我ここにあり!」とでもいった個性を見事に発揮。
現代社会への警告もブラックユーモアたっぷりの風刺に昇華させることで説教じみた所は微塵もなく、ただただ見る側を大いに興奮&堪能させ、それと共に人間だれしも大なり小なり備えている心の闇を二挺拳銃の弾丸の嵐によって吹き飛ばしてくれる快作中の快作です。
こういった作品が時々ひょいっとお目見えするから、映画ファンは映画を見続けることをやめられないのでした!
(文:増當竜也)
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