『るろうに剣心 最終章 The Final』レビュー:「宿命の映画」


人生を懸ける作品と語る佐藤健の覚悟



今回の『The Final』と『The Beginning』の2部作がこれまでのシリーズ3作と違うところが、物語に分かりやすい(見えやすい)大きな方向性がないところでしょう。1作目では吉川晃司演じる鵜堂刃衛、2&3では藤原竜也演じる志々雄真実を倒すという大きな方向性がありました。

今回も敵役・最凶(最恐)の敵として新田真剣佑演じる雪代縁は登場し、悪いことも沢山してくるのですが、しかしのその根源を探ると剣心の過去の罪に行きついてしまいます。

『The Final』『The Beginning』の2部作で描かれるのは緋村剣心の贖罪の物語です。そこには分かりやすいカタルシスはありません。そういう意味でこの『The Final』『The Beginning』のエピソードを映画というエンターテイメントに落とし込むことは難しい作業であったと言えます。

しかし、主演の佐藤健は「“剣心の生き様”をしっかりと描けば、観客にはしっかりと届く」という思いがあったと語っています。「“追憶編”が作りたくて今までやってきた」「ここまで人生を懸ける作品は、他にはない」と『るろうに剣心』シリーズのことを語る佐藤健のこの覚悟が10年に及ぶ大ヒットシリーズを見事な決着にまで導いたことになります。

 ただの映画ファンになってしまった5分間の話

最後にちょっとした(個人的にはとっておきの)エピソードで締めたいと思います。マスコミ関係者試写はライターや評論家、興行関係者、その他多くのメディア関係者が出席します。それらの人々に加えて映画に関わったスタッフ・キャストの方々もやってきます。時には主演俳優と同席するようなことがあります。そんな時は暗黙の了解で、居ることに気が付いてそっとしておくことがマナーと言えます。

さて、私が『るろうに剣心最終章 The Final』のマスコミ試写に参加した時、なんと大友啓史監督が同席していました。私は「ああ、大友監督だ!?」と思いつつ、静かにやり過ごすつもりでいましたが、『るろうに剣心 最終章 The final』のあまりの熱量に我を忘れて、上映終了後に思わず大友監督に感想をぶつけてしまいました。「凄いものを見せてもらった」ことのお礼に近いものを一言言いたいという気持ちが、いつものマナーを守る自分を忘れさせててしまったのです。

実は大友監督とは某SNSで薄く繋がっていました。名前を名乗ったところ、なんと監督がそのことを覚えていてくださり、そのまま5分ほど立ち話をしてしまいました。
「凄まじい映画で、心地よい疲労感があったこと」「2&3(『京都大火編』『伝説の最後編』)をまとめた以上の熱量を感じた」ことを少し興奮気味に大友監督に伝えると、「作った本人がものすごく疲れています」と嬉しそうに気持ちを語ってくれました。

試写室では作品をしっかりと見てどれほどのものかと丁寧に品定めする、作品関係者と同席してもそこはミーハーな気持ちを持たずにマナーを守る。そんな当たり前のことを『るろうに剣心最終章 The Final』はあっさりと忘れさせ、SNSで繋がりがあったとはいえ、初対面の大友監督に思わず感想をぶつけてしまうという暴挙を起こさせました。
反省しなくてはいけない行為でもあるのですが、作品への思い入れをさらに強めてくれる5分間でもありました。

ちなみに「『The Beginning』は一体どんな映画になるんですか?」という質問に対しては「全く違う映画になっていますよ」という期待をただただ高めさせる言葉が大友監督から返ってきました。

(文:村松健太郎)

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(C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

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