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映画館への休業要請:金曜夜に会見・発出の無神経さ、現場を考えているのか?




2021年4月23日金曜日夜、政府は新型コロナウィルスの感染拡大に対して3度目の緊急事態宣言の発出を決定しました。

対象地区は東京都、大阪府、京都府、兵庫県の四県。期間は4月25日の日曜日から5月11日の火曜日までを予定していますが、対象地区の拡大、宣言期間の延長の可能性もあります。これまでもまん延防止等重点措置が発令されていましたが、今回、さらに厳しい姿勢を選んだことになります。

しかし、その一方で、前回の宣言解除からわずか2カ月弱での発令、3度目の緊急事態宣言の予定されている期間の短さ、効果の説明やエビデンスの提示の欠如した禁止・自粛要請、変異株の脅威への見通しの甘さなどが批判の対象となっています。

そんな中で対象地区となった東京・大阪・兵庫・京都の映画館の大半は休館を余儀なくされ、すでに苦しい経営状態をさらに圧迫されることになります。

[関連記事] 緊急事態宣言により休業する映画館一覧(本記事の2ページ目へ)

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首都圏の概念はどこへ?“ステイホーム”の一言で人流は防げるのか?

今回の3度目の緊急事態宣言と、それに合わせた要請については多くの問題を抱えていると言えます。

特に映画館・映画関連に関してだけで言っても宣言対象地区の近隣地区についての対応が後手に回っていることが危惧されます。

東京と道路一本、橋一本で繋がっている神奈川の川崎や横浜、埼玉、千葉の映画館は都内からの観客の流入が多く、その人流を求心力・訴求力を急速に失いつつある行政からの“ステイホーム”の一言だけで縛りが効くのかは甚だ疑問です。

京阪神地区は今回一括して、宣言の対象となっていますが、その一方でこれまで歩調を合わせてきた東京都と神奈川県、埼玉県、千葉県とは緊急事態宣言の対象地区とまん延防止等重点措置の対象地区とで分かれています。

これまで東京都内外への多くの人流があることから“首都圏一括”で対応をしてきましたが今回の線引きにより、東京都近郊の都以外の映画館への観客の流動が多くなる可能性が高い。結果、都境(県境)を跨いだ人の流れや、各地の想定外の人の滞留が生まれかねません。

結果、東京近隣県での新型コロナウィルスの感染拡大が進むようであっては本末転倒という結果になりかねません。

東京都と隣接した各県の商業圏の客層の構成についてもう少し深い理解があれば、このようなバランスを欠いた決定は起きないはずなのですが…。

東京・京阪神の映画館休館の大きすぎる影響

ゴールデンウイークという言葉は映画業界から派生したという説はご存知の方もいらっしゃるかと思います。確かにゴールでウィークはお正月、春休み、夏休みと並んで映画動員が一気に増える“書き入れ時”です。

それが丸々休館となると大きな影響が出ることは避けられません。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『名探偵コナン緋色の弾丸』と立て続けにヒット作が現れ、やっと映画館が賑わいを取り戻し、4月23日金曜日からは大作『るろうに剣心 最終章 The Final』が公開されたばかりでした。

全国の映画動員の分布をみると東京都で全国の30%前後、京阪神で15%前後を占めていると言われています。

大きく見積もった場合、全国の50%の動員が失われる可能性があります。このことは現状の公開作の上映についても不安材料となりますが、それに加えて緊急事態宣言期間中に公開を予定している作品についても影を落とします。

期間中には4月29日と5月7日の2回、映画が公開される週末を迎えます。その中には『映画 賭ケグルイ絶体絶命ロシアンルーレット』や『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』『ジェントルメン』などの大作・話題作が公開を予定しています。

しかし、東京と京阪神地区を丸々失った状態での公開については大きなリスクを抱えることになるので、場合によっては映画の公開延期ドミノが発生する恐れがあります。

すでに4月23日公開予定だった『映画クレヨンしんちゃん謎メキ!花の天カス学園』と4月29日公開予定だったスタジオジブリ作品『アーヤと魔女』の延期が決まっています。こうなってくると一作品単位の話では終わらず、映画業界全体に大きな影響を及ぼします。

東京都と京阪神地区のビジネス停止はそれだけ大きなことなのです。そしてこれはそのまま日本のエンタメ産業、そして観光などのサービス業などにあてはまることでもあります。

金曜日の夜に発出する無神経さ、現場を考えているのか?

今回の新型コロナウィルスの感染拡大に対しての3度目の緊急事態宣言については多くの疑問・注文があるのですが、先ずその発出のタイミングについて問題があると感じています。

ゴールデンウイーク前という発想なのかもしれませんが、4月25日(日曜日)からのことを4月23日(金曜日)の夜に正式決定し、総理大臣が会見を行う。

実質、緊急事態宣言への対応が可能となるのは24日土曜日だけになります。そのために本部機能のある部署に休日出勤をする人がいるようであれば、人流の抑制という言葉とは大きな矛盾を生んでいます。

さらに、24日の各映画館の状況を見ると、通常の土曜日以上の混雑を見せている映画館もあり、そこには自然と人流と人の滞留を生んでしまうことになります。

急な宣言発令によってイレギュラーな人流と密を生んだとなっては感染拡大という大元の目的と大きくズレています。

これまでクラスターの発生してきた飲食店などと同列に集客があると言うことだけで1000平方メートルを超えるという条件のもとに全ての商業施設に対して一律休業・休館要請ではあまりにも乱暴ですし、支給される協力金も到底納得できるものではなく、とても十分とは言えません。

23日の菅総理の会見でも「劇場などはクラスターが発生していない、感染対策をしっかり行っていただいている、けれでも人流を断つために敢えてお願いする」という発言があり、映画館・劇場と新型コロナウィルスの感染拡大とに直接的因果関係がないと示しています

それでも休業・休館の要請が強行され、しかも、期間の延期、対象地区の拡大の可能性もあり、先行きが見通せなくなり、そのことがさらに物事の流れを止めかねません。

新型コロナウィルスの感染拡大防止は何より必要なことではありますが、行政の側は人流の抑制と言ってみたり、経済を回すという言葉を使ってみたりと、その時々で便利な言葉を生み出しては一貫性を欠いた対応が続いてしまっているのが現状と言えるでしょう。

最後に

今回の3度目の緊急事態宣言の発出に関しては行政の見通しの甘さに日本のエンタメ産業、サービス業が振り回されている感覚が強くあります。

映画館だけに限って言えば、感染拡大対策はかなり念入りにされていて、ここまでに映画館から新型コロナウィルスのクラスターが発生したという事案は寡聞にして知りません。

それでも、人が集まる、留まるということだけで、ここまで(急に)書き入れ時に制限を要請されれば“正直いい加減にして欲しい”という言葉も出てくるというものです。

(文:村松健太郎)

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