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2021-05-08

その他

映画館 休館継続の理不尽さ|行政が矛盾を生み出す怪



2021年4月25日から5月11日の17日間、東京都、大阪府、京都府、兵庫県の4都府県に対して発令された緊急事態宣言の延長が決まりました。

さらに、上記の4都府県に加えて、愛知県と福岡県も5月12日から緊急事態宣言の対象となります。ただ、国からの休業要請の対象が若干緩和され、映画館など1000平方メートル以上の大型商業施設に対しては、午後8時までの時短営業の要請へと変更になります。

しかし、これで映画館の営業がすんなり再開できるわけではなさそうです。なぜなら、独自に大型商業施設への休業要請を決めた自治体もあり、非常にややこしいことになっています。

今回もまた、大変に理不尽かつナンセンスな決定がされていますが、まずは今回の緊急事態宣言延長による変更点をまとめます。

[関連記事] 3度目の緊急事態宣言|映画館への影響は甚大、そして協力金は到底足りない!

東京と大阪の2大都市は休業要請継続

緊急事態宣言は国が発令し、各都道府県が実行するものとなります。映画館に関わる国の延長内容は以下の通り。

対象地域は、東京都、京都府、大阪府、兵庫県。5月12日から愛知県と福岡県が追加となります。対象期間はいずれも5月31日まで。

映画館やショッピングセンター、デパートなど1000平方メートルを超える大型商業施設は、これまでは休業要請でしたが、ここが緩和されて20時までの時短営業の要請となります。

緊急事態宣言を延長しておきながら、規制を緩和することに専門家から矛盾を指摘されていますが、とりあえず国としては映画館の営業にGOサインを出したと考えていいでしょう。

しかし、「宣言の対象地域の知事は自らの判断でこれまで通りの休業要請を継続するのも可能」という形式を取っています。休業要請を続ける場合は国が財政支援するとのこと。


ですので、各自治体がどのように判断したかが問題です。以下にまとめます。
東京都:1000平方メートル以上の大型商業施設(映画館を含む)は引き続き休業要請。劇場やテーマパークなどのイベント系施設は上限人数5000人以下か収容率50%以下で21時まで営業可能(令和3年5月7日 東京都発表の資料

京都府:1000平方メートル以上の大型商業施設は土日のみ休業要請、平日は20時までの時短営業。しかし、映画館や劇場、ライブハウスなどは上限人数5000人以下か収容率50%以下で営業可(令和3年5月7日 京都府発表の資料

大阪府:これまでの休業要請を継続。1000平方メートル以上の大型商業施設(映画館含む)は休業要請。1000平方メートル以下は20時までの時短営業。劇場などは無観客開催を要請、不可能なら20時までの時短営業。(令和3年5月7日 大阪府発表の資料

兵庫県:1000平方メートル以上の大型商業施設は土日のみ休業要請、平日は20時までの時短営業。特別な断りがないので映画館も含まれると思われる(令和3年5月7日 兵庫県発表の資料


そして、12日から追加となる愛知県と福岡県は以下の通り。
愛知県:1000平方メートル以上の施設は20時までの時短営業を要請(令和3年5月7日 愛知県発表の資料

福岡県:劇場、観覧場、映画館、演芸場などは上限5000人か収容率50%以内の要請、21時までの時短営業(令和3年5月7日 福岡県発表の資料


このように、各自治体バラバラの対応となります。とりわけ今回の対応で大きな矛盾を生み出しているのが東京都です。

なぜ映画館は休業で、劇場は営業可能なのか

東京都は、映画館やプラネタリウムなどには、1000平方メートル以上の大型施設に対して休業要請を継続するということですが、一方で、演劇などの劇場や演芸場、文化会館、テーマパークなどは5000人以下か50%以下での営業を認める方針です。この分野は、4月25日から5月11日までは、無観客開催の要請がなされていました。

今回の変更によって、映画館は休業要請だが、劇場は開催OKという奇妙な状況が生まれることになりました。劇場だけでも営業できるなら前進したとも言えるかもしれませんが、この矛盾は、5月7日20時からの小池都知事の会見をつぶさに見返してみても理解ができません。


会見ではこのようなやり取りがありました。令和3年5月7日知事会見録テキストより引用します。(改行は読みやすくするために筆者が挿入)
【記者】東京新聞の岡本です。先ほどイベント系の考え方のところでですね、映画などは引き続き休業要請するというお話でしたけれども、一方でテーマパークなどについては5000人、50%という基準になっているかと思います。
この部分について、例えば百貨店などの商業施設については、引き続き人流抑制の観点から、都独自で休業要請するということなのに対して、こちらはなぜいわゆる緩和というふうに見えると思うんですが、という判断になったのか、都独自としてやらなかったのか、そこの理由を教えてください。

【総務局長】はい。先ほど知事からもご説明がありましたけれども、いわゆるイベント系の考え方です。いわゆるテーマパークなんかのイベントを行う施設ということになりますが、これは基本的には現在の緊急事態宣言下においても、無観客で開催をしてくださいということになっております。無観客開催ができない場合は、休業という形になるわけですけれども、この無観客開催について、実は、施設によって、例えば無観客開催をしっかりやっていただいている施設、あるいは無観客開催ができないので休業に至ってしまった施設、無観客開催自体がわかりにくいという、様々な声を現場を持つ東京都は聞いております。今回これが一切撤廃されました。無観客開催ということではなくて、21時まで、9時までの時短で開催をしていいですと。
ただし、人数キャップとして5000人、それから施設キャップとして50%という枠がはまりました。では、これに対して都としては、独自に無観客開催を要請するのか、それとも一律に休業を要請するのか、さらには時短を少し変えるのか、様々なオプションがあると思うんですが、現時点では知事からご説明申し上げましたとおり、まずは徹底した入場整理ですとか、そういうものをやっていただいた上で、国の今回は緊急対処方針の、いわゆる時短でやるという方針をとっておりますが、これも知事から先ほどお話がありましたけれども、今後こういったテーマパーク等で、人流の増加が顕著になる恐れが見えたときには、この緊急事態宣言期間中に、さらなる対策を講じて検討していくということでございます。

【記者】(読売新聞・佐藤記者)すいません、2点教えてください。まず1点目が、事業者向けの要請について教えていただきたいんですけれども、劇場については観客の上限を設けていると思うんですが、ただ休業要請の対象からは外れていると。一方で、映画館やプラネタリウムは休業の対象に入っているんですけれども、このように分けられたのはなぜか、教えていただければと思います。

【総務局長】はい、それではお答えいたします。いわゆるイベント系の考え方でございますけれども、現行の緊急事態宣言の中では基本的には無観客での開催が原則になります。
一方で映画館のように無観客で開催ができないイベント系施設、特にイベントを行う施設に着目した場合は、無観客開催ができないものについては、現行休業ということになっております。
現在の建て付けはこうなっておりますけれども、今回、こちらがいずれもいわゆる時間短縮で開催をしていいということになりますので、先ほど知事からご説明がありましたとおり、都としてはまだその段階ではないという判断で、引き続きのこれまでの対応を都として要請をするという判断でございます。

この説明で、わかる人いますでしょうか。多分、意味不明だったから別々の記者がほぼ同じことを再質問せざるを得なかったのでしょうね。

好意的に解釈すると、劇場やテーマパークはイベントなどを行う施設という分類で、映画館は商業施設に分類されている。イベント系の施設には劇場とかテーマパークとかゴルフ練習場などがあり、無観客開催なんてやりようがない施設もあるし、わかりにくかったのでその矛盾を撤廃しました、ということでしょうか。

実際、遊園地からは「無観客開催というのは実質休業要請だ」と抗議の声が上がっていました。今回の東京都の判断は、この矛盾を解消しようという狙いがあると思われます。

しかし、一つの矛盾を解消したら、今度は映画館と劇場で対応が別れてしまうという別の矛盾を生んでいます。上記の会見のやり取りでも明らかですが、その矛盾について明確な説明はありません。「分類が違うから」ということなんでしょうが、分類そのものがおかしいのではないでしょうか。

そして、東京都の判断と京都府の判断が別れているのが興味深いです。京都府は公式資料でわかるように、映画館を劇場等と同じカテゴリに入れて、デパートなどの大型商業施設から映画館を切り離し、5000人以下か50%以下の観客数で営業を認めています。

そもそも、国は映画館を含む大型商業施設の休業要請を撤廃して、各自治体の判断に委ねた形になっていますから、京都府のような解釈も本当は可能なんじゃないでしょうか。だとすれば、東京都は映画館と劇場でなぜ対応が異なるかをきちんと説明する責任があるはずです。

しかし、上の会見のやり取りでそれが達成できたとは到底考えられません。休業した事業者への協力金は「追って詳細を発表」だそうで、いくら貰えるのかもわからない状態なので、各事業者もこれでは全く対応を決められない状況です。

今回の緊急事態宣言の結果を総括したのか

4月25日から17日間の緊急事態宣言発令の狙いは、「人流の抑制」でした。果たしてこれは達成できたのでしょうか。

小池都知事は5月7日の会見でこのように語りました。
繁華街の人の流れ、人流も大幅に減少していること、これは人流調査などによってデータとして示されております。これはすなわち、都 民の皆様のコロナ対策に関しての意識の高さを表すものであり、そのことについては本当 に誇りを持つ、誇りを抱くものでございます。しかし、新規陽性者が減少に転じたとは言 い切れないのが現状であります。ましてや重症者数は増加傾向にあるのも現状でございます。(令和3年5月7日知事会見録テキスト) 

つまり人流は減ったけど、感染者は減ってないし重傷者は増えているということです。それでは、なんのために人流の抑制をしたのでしょうか。この失敗を総括せずに根拠不明な休業要請を続けるのは理不尽の極みです。

映画館や大型商業施設への休業要請は、重大な私権制限です。これ以上は従業員などの生存に関わる重大案件であり、東京都はきちんとした根拠を示すべきです。

一度休館するといつ再開できるかわからなくなってしまった

感染は減ってないが、対策は厳しくなっていないし、休業補償もよくわからない。GWが終わって人は仕事が再開したので人流は元通り。東京都は感染者が減る見込みが立っていない状況といえるでしょう。

ということは、いったん映画館は休館すると、いつ再開できるのか、計算も目処も立たない状況になったということです。今回だって、根拠不明で休業要請が延長されています。

こうなると、緊急事態宣言の罰則規定の20万円を払ってでも営業してしまった方がダメージコントロールしやすいと判断した方が合理的とすら言えます。(そうしろとは言いません)

どうして、都が自ら、命令に違反したほうが良い状況を作り上げているのでしょうか。

実際、GWに営業した1000平方メートル以下の映画館の興行はそれなりに好調だったようです。
一方、緊急事態宣言下の4都府県でも、床面積1千㎡以下のミニシアターでは営業を継続する館が複数見られた。都内数館にヒアリングしたところ、GWの動員はまずまずだった様子。年配層やファミリー層を中心とした外出自粛の影響、他県への客流出の影響も見られたものの、こちらもやはり「作品力」が左右したという声が多く、若者向けの作品は総じて好調に集客したようだ。ある劇場は若者向けの話題作が多かったため、満席(50%制限)が続出した。また、別の劇場で公開した新作は、午前0時にオンラインでチケットを販売開始し、朝までに1日2回の上映が完売する日が続いた(50%制限)。普段年配層の多い劇場でも、一般券がよく売れ、5月1日のサービスデーは満席(50%制限)が出たという声が聞かれた。(GW興行、新作不足、作品力の有無が影響する- 文化通信

これ以上、意味不明な理由で休業要請を続け、十分は補償もない状況を続けないでほしい。今、行政がすべきことは、違反した方がインセンティブがある状況を作ることではなく、休業した方が合理的だと思える対策と補償を打つことです。

もはや、芸術や文化の存続を超えて、飲食的や大型商業施設などを含む各事業者の生存権に関わる事態になっていると考え、行政は対策を考えてほしいと切に願います。

(文:杉本穂高)
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