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映画コラム

REGULAR

2021年05月14日

『タイタニック』ローズはなぜ最後に「捨てた」のか?その理由を全力解説

『タイタニック』ローズはなぜ最後に「捨てた」のか?その理由を全力解説


3:スケッチの時に身につけた理由



では、なぜローズはヌードの絵をジャックに描いてもらう時に、呪いであり、忌むべき存在の碧洋のハートを身につけたのでしょうか。

その理由の裏付けとなるのは、ジャックがこれまでの女性のスケッチを見せた時のことです。彼は「パリの女はすぐ服を脱いでくれるから助かる」「恋をしたのは手だけ、脚の悪い売春婦だよ。明るい娘だった」とひどい言い分で女性たちのことを振り返り、あまつさえマダム宝石(ビジュー)というあだ名が付けられた夫人を「ありったけの宝石をつけて、帰らぬ恋人を待っている。ドレスは虫食いだらけなんだよ」とまで言っていました。

そして、ローズは(パリの女のように)すぐに服を脱いで、(手に恋をした売春婦のように)陶器の人形のような描き方はイヤと明るく言い、(マダム宝石のように)碧洋のハートという宝石を身につけて、ヌードのスケッチをしてもらうのです。つまり、ローズは「ジャックが今までスケッチしてきた女性と同じ」になろうと、彼の望む女性になろうと振る舞っていたのです。

ローズは、そうしてジャックが過去に描いてきた女性と同じ振る舞いをしないと、自分のヌードのスケッチなんて描いてもらえない、それほどまでに自分に価値がないと思い込んでいたのかもしれません。もしくは、碧洋のハートよりも、自分のヌードを美しく描いてくれたら、自分にも価値があり、ジャックに愛してもらえるかもしれないという希望を持っていたのかもしれません。

そして、ローズはジャックと刹那的に愛し合うことができたもの、結果としてジャックはタイタニック号の沈没により亡くなってしまいます。しかも、忌むべき存在であった碧洋のハートは残ったまま……残酷にも、ローズは帰らぬ恋人を待ち続けたマダム宝石と同じ立場になってしまっていたのです。

4:キャルの切なさと滑稽さ



もう1つ切ないのは、ローズが碧洋のハートを隠し持つことができたのは、キャルに「みすぼらしい格好だな」と言われジャケットを着せられたため(キャルはその時には碧洋のハートがポケットに入っていることに気づいていなかった)だったことでしょう。

キャルは男性権威的主義的で、ローズを束縛し暴力も振るっていた、全く擁護はできない悪人です。しかし、ボートに乗り込む前のローズにジャケットを着させたのは、みすぼらしいというだけでなく、ずぶ濡れになり寒がっていた彼女の身を案じていたからのようにも思えるのです。

事実として、キャルは嘘をついてまで、ローズだけを目の前のボートに乗せようともしていました。これもジャックを出し抜いて自分も別のボートに乗るための方便とも取れますが、ローズへの愛情が全くないとは言い切れないところもあるのです。

そんなキャルが、結局はタイタニック号に戻ったローズとジャックを銃で撃ち殺そうとし、物質的な価値がある碧洋のハートも渡したことに気づいて自嘲するシーンの、なんと滑稽で、そして切ないことでしょうか。キャルの心からの善意とも取れる行動でさえも、碧洋のハートという「呪い」に転換してしてしまっているのです。

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