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映画コラム

REGULAR

2021年05月14日

『タイタニック』ローズはなぜ最後に「捨てた」のか?その理由を全力解説

『タイタニック』ローズはなぜ最後に「捨てた」のか?その理由を全力解説


5:ただ1つの証だった



さらに残酷なのは、ローズにとってジャックの存在を証明する物質的な証拠が、碧洋のハート以外にはなかったということでしょう。

年老いたローズは、必ず数々の自身の写真と共に旅をしていると話しており、写真という「形として残る思い出の存在」を大切にしていることが見て取れます。だからこそ、前述してきたように呪いであり、忌むべき存在のはずの碧洋のハートを、ずっと捨てられなかったのでしょう。

しかし、ローズは「美しい自分のヌードのスケッチ」という、碧洋のハートに代わるジャックが存在した証を、再び見ることができました。そして、調査団たちに自分とジャックとの思い出を赤裸々かつ鮮明に話すこともできました。

なぜ、最後にローズが船頭から、海へと碧洋のハートを捨てたのか……? その理由は、これではっきりとしたでしょう。「呪いであり、忌むべき存在であると同時に、ジャックが存在したただ1つの証であった碧洋のハートは、ジャックの存在を確かにできたことで、もう必要ではなくなった」のです。

さらに、ローズはこうも調査団に話していました。「今までジャックのことは誰にも話さなかった。主人にもね。女って海のように秘密を秘めているの。彼が、私を救ってくれたの。それもあらゆる意味でね。写真も残っていない。でも、彼は私の心の中に生き続けているわ」と。

海に碧洋のハートを捨てることで、普遍的な「海のように深くて広い女性の秘密」を、そして高価な宝石(Heat of Ocean)よりも自分自身の心(Heart)に残る美しい思い出のほうに価値があると示唆しているのです。この多重的なラストの、なんと見事なことでしょうか!

また、調査団の1人のブロックは、ローズの話を全て聞いた後に「ダイヤが見つかったら、これを吸おうと思ってた」「3年間、俺の頭の中はタイタニックのことでいっぱいだった。でも何もわかっていなかった」と言いつつ、葉巻を(ローズと同様に)海に投げ捨てていました。ここでも、やはり(誰にとっても)「真に価値があるのは物質的なものではない」ことが示されていますね。

6:もう1つのエンディング



ちなみに、「ローズが誰にも知られずに船頭から碧洋のハートを海に捨てる」というのは、実は当初予定されていたエンディングではありませんでした。

脚本の初期では、ローズがダイヤを海に投げ込む寸前に調査団たちに気づかれ、「真の宝とは何か」と咎められるものの、結局は海に投げ込むという展開が考えられており、実際に撮影もされていたのですが、結局は現在のエンディングに差し替えられたのです。

「真実はローズ(と観客)だけが知っている」という現状のエンディングの方が、前述した「女って海のように秘密を秘めているのよ」というローズの言葉を強調していますし、「観客それぞれに意味を考えてもらう」余地を残しているので、こちらのほうが素敵だと思います。

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