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6月の「プライド月間」にLGBTQ+を背景とする映画たちを通して、アレコレ考えてみる


諸問題の概念を払拭させてくれる『スーパーノヴァ』『Summer of 85』『湖底の空』


現在、日本ではこうしたLGBTQ+を直視した作品が増えてきていますが、世界にまで目を向けると、特に劇映画の世界はさらにその先を見通した作品群が現れ始めています。


『スーパーノヴァ』(C) 2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film Ltd.

たとえばハリー・マックイーン監督の『スーパーノヴァ』(7月1日公開)は、長年愛し合ってきたピアニスト(コリン・ファース)と小説家(スタンリー・トゥッチ)、初老の男性同士の愛の最終章を描いたものですが、ここでは従来の異性間同士の恋愛映画と何ら変わらない、自然体としての雰囲気が当たり前のように保たれたままドラマが進められていきます。

ふたりをめぐる周囲の人々も、特に男性同士だからどうこうといった節は皆無に等しいほど。

ドキュメンタリー映画の場合、現状を直視しながら問題提起を促すことに秀でているように思われますが、劇映画はさらにその先の未来の希望や理想までをも描くことが可能なのかもしれません。


『スーパーノヴァ』(C) 2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film Ltd.

『スーパーノヴァ』にしても、初老の男性同士の恋を通して、「異性も同性も関係なく、ただ愛し合っていさえすれば……」とでもいった作り手の想いが滲み出ている感があります。

その意味では今回のLGBTQ+といった概念も、いずれは世界から払拭され、すべての人々に当たり前のものとして認識されてしかるべきなのでしょう。


『Summer of 85』(C) 2020-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-France 2 CINEMA–PLAYTIME PRODUCTION-SCOPE PICTURES

フランス映画界の名匠フランソワ・オゾン監督の『Summer of 85』(8月20日公開)も、1985年の少年同士のひと夏の恋を麗しくも当たり前のように(それこそ「LGBTQ+なんて何?」と言わんばかりの自然さで)、むしろかけがえのない素晴らしくも切ない思春期のひとときの時間として描いていきます。



『スーパーノヴァ』に比べて若い美少年同士というあたり、瑞々しいものがあると言ったら前者の名優ふたりに失礼かもしれませんが(いや、でもあのふたりも素晴らしい名演を示してくれています!)、ここでは真夏のまばゆい海の光の中、熱く爽やかに切なくそして繊細にほとばしる青春の1ページが、オゾン監督作品としては珍しいほど淡々と、しかしながら鮮やかな印象は変わらないままに綴られていきます。

これはきっと監督自身が17歳のときに本作の原作小説(エイダン・チェンバースの「おれの墓で踊れ」)に出会って深く影響されたこととも関係しているのでしょう。



1985年当時の流行風俗なども、当時をリアルに知る世代のこちらとしては実に自然に描出されており、それによっての現代との対比性が逆に今の時代として屹立している、そんな印象を受けました。


『湖底の空』(C)2019MAREHITO PRODUCTION

佐藤智也監督の『湖底の空』(6月12日公開)は、LGBTQ+の要素も組み入れつつ、ヒロインの微妙な心理を繊細に描いた秀作です。

日本人の父と韓国人の母の間に生まれた一卵性双生児の姉・空(そら/イ・テギョン)と弟・海(かい/イ・テギョン)。

そして今、空は中国の上海でイラストレーターとして日本人編集者(阿部力)のもとで活動しつつ、海のほうが画の才能があることにコンプレックスを感じているようです。

そして海は性別適合手術を受けて女性となり、名前も海(うみ)と変えていました……。


『湖底の空』(C)2019MAREHITO PRODUCTION

本作は男女の性別のみならず親子の別、国の別、白と黒の別といったさまざまな区別の要素を劇中に忍ばせながら、その垣根に対してどこまで意識しつつ、どうやって払拭していくべきなのかを見る側に問いかけていきます。

また本作はゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020グランプリを受賞していますが、どうしてファンタスティック・ジャンルの映画祭で本作が上映され、多大な評価を受けたのかも、大きなポイントではあるでしょう。

こういった人の心の越境をモチーフにした秀作を目の当たりにしていくことで、LGBTQ+も含めたさまざまな現代社会の問題が解決していく糸口のひとつになってくれればと願わずにはいれらません。

その意味でも、映画を含む真のエンタテインメントとは、娯楽を通して人々の意識を大きく前向きに啓蒙する力を秘めたものと確信している次第です。

(文:増當竜也)

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