【知恵と工夫】特撮が無くとも面白いSF/ファンタジー映画は作れる!|『夏への扉ーキミのいる未来へー』『サマーフィルムにのって』『星空のむこうの国』etc…
【知恵と工夫】特撮が無くとも面白いSF/ファンタジー映画は作れる!|『夏への扉ーキミのいる未来へー』『サマーフィルムにのって』『星空のむこうの国』etc…
『サマーフィルムにのって』『ロボット修理人のAi(愛)』ジュヴナイルはこれからも……
概して日本のジュヴナイルSFはタイムトラベルやタイムリープ、パラレルワールドといった日常と非日常の狭間にあるかのようなトワイライトな要素をアクティヴに盛り込むことに長けているようで、松本壮史監督の『サマーフィルムにのって』(8月6日公開)も、やはり同傾向の作品といえます。
所属する高校の映画部がキラキラ映画ばかり作っていることに不満たらたらな時代劇オタク少女ハダシ(伊藤万理華)3年生は、あるとき出会った少年・凛太郎(金子大地)に理想のサムライ像を見出し、彼を主演にした時代劇映画の制作に踏み切り、文化祭でのゲリラ上映を目論みます。
ところが実はこの凛太郎、何と未来からやってきたタイムトラベラーだった!?
(C) 2021「サマーフィルムにのって」製作委員会
ヒロインがカツシン(勝新太郎)大好きというところからして、もう映画ファンはノックアウトではありますが、それ以上に本作は10代の時期だけに共有できるような友情や恋愛といった日常的青春要素の中にSFや時代劇(見事な殺陣も披露!)といった非日常が入り込んでいきます。
ハダシの親友ビート板(河合優実)が読んでいる小説が「時をかける少女」だったり、それこそ「夏への扉」であったり、同じく親友の剣道少女ブルーハワイ(祷キララ)が実はキラキラ系の大ファンだったり、なぜ凛太郎がこの世界にやってきたかという理由に至っては、もう映画ファンなら大いに納得!
かくして高校最後の夏とは、まるで「映画」そのもののために存在しているのではないかと思わされるほどに胸キュンすぎる情感を以って、彼女ら彼らを祝福してくれるのでした。
これぞ日本映画ならではのジュヴナイル!
そしてもう1本、田中じゅうこう監督『ロボット修理人のAi(愛)』(7月10日公開)は、修理できない機械はないほどの天才少年・倫太郎(土師野隆之介)16歳の青春を描いたもの。
ここに登場するのはAIBOなど現実に存在するロボットたちであり(そもそも本作はロボット修理人として知られる乗松伸幸さんをモデルに企画されたものとのこと)、科学的雰囲気こそ漂わせつつ、決してジャンル映画ではない……はずなのですが、はてさて最後まで鑑賞していくと一体どうなるのか、これまた見てのお楽しみ!
(C)2021 GENYA PRODUCTION ROBOT REPAIRBOY
いずれにしましても、今はAIBOにしてもここまで技術が進化しているのかと驚かされますし、とどのつまりSFとは本来“SCIENCE FICTION”の略ではありますが、いずれは“SCIENCE FACT”の略になる日もそう遠くはないのかもしれません。
そして本作はそんな“SCIENCE FACT”の中にボーイ・ミーツ・ガール的な思春期要素を好ましく入れ込みつつ、さらにはこの世とあの世の狭間を謳う伝承であったり、現在と過去の因果などから生きることの尊さみたいなものを誠実に描出していきます。
(C)2021 GENYA PRODUCTION ROBOT REPAIRBOY
これもまたジュヴナイルだからこそもたらすことのできるファンタジックな要素の発露であり、こういった題材に対する斬新なアイデアと真摯な姿勢がある限り、特撮の有無の別などとっぱらってSFもファンタジーも一層盛り上がっていくことでしょう。
超大作『ゴジラVSコング』『妖怪大戦争』ともども、今年の夏はこういった珠玉のジャパニーズ・ジュヴナイル・ジャンル映画にも是非注目してみてください。
(文:増當竜也)
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(C)2021 映画『Arc』製作委員会/ (C)2021「夏への扉」製作委員会/(C)高橋葉介・早川書房・ビーチウォーカーズコレクション/(C)2021 GENYA PRODUCTION ROBOT REPAIRBOY/ (C)2021「星空のむこうの国」製作委員会/(C) 2021「サマーフィルムにのって」製作委員会