『返校』をきっかけに、改めてアジアン・ホラー映画に注目してみたい!
7月30日公開の『返校』は、台湾で大ヒットした人気ゲームを原作にしたサスペンス・ホラー映画です。
蒋介石率いる国民党の独裁政権下にあった1962年の台湾を舞台に、放課後の教室からなぜか校外へ出られなくなってしまった高校生男女の恐怖から、やがて政府絡みのむごたらしくも哀しい迫害事件の真相が浮かび上がっていくというもの……。
台湾に限らず、アジア全域とも実はホラー映画の宝庫であることは、ちょっとした映画ファンなら周知の事実ではあります。
(もちろん日本もその中に含まれますが、最近はちと他国に押され気味かな……)
今回はそんなアジアン・ホラーをいくつか紹介していくことにしましょう。
呪われた映画をめぐる『ワーニング その映画を観るな』(20/韓国)
ホラー映画の脚本を2週間で書き上げるようにプロデューサーからムチャブリ命令された女性新鋭映画監督ミジョン(ソ・イエジ)は、ふとしたことで呪われたホラー映画の噂を聞きつけます。
それはとある大学の映画学科の卒業制作『暗転』という作品だったのですが、その上映途中で観客の大半は逃げ出し、心臓発作で死人まで出たというのです。
事件に興味を持ったミジョンに、まもなくして『暗転』を監督したという男から連絡が入り……。
いわゆる「呪われた映画」に魅了されていく映画監督の悲劇とも惨劇ともつかない心の闇を描いたコリアン・ホラー映画。
モンスターめいたものは登場しない代わりに、真面目に恐怖そのものを追求していこうという演出意図が大いにうかがえます。
何より呪いの映画はいかにして生まれたのか?」といった「理由」そのものよりも「現象」そのものに巻き込まれていく恐怖を追求していく趣向は、アルフレッド・ヒッチコック監督『鳥』()とも共通する要素で、この監督、ホラー&サスペンス映画をよく研究しているなと唸らされました。
特に、映画と現実が混沌となってヒロインを翻弄していくあたりは圧巻です。
人間こそ最大のモンスター!『怪怪怪怪物!』(17/台湾)
奉仕活動の一貫で独居老人の手伝いをすることになったいじめっこ高校生たちといじめられっ子のリン。
彼らはそこで食人鬼の子どもを見つけて捕まえ、実験という名の拷問をはじめますが、やがて親の食人鬼が現れて……。
あたかもスプラッタ・ホラー版『大巨獣ガッパ』のごとき様相を呈していくホラー映画ですが、グロテスクながらもスタイリッシュな映像センスは、その手のジャンルが苦手な方をも捕まえて離さないほどの魅力があります。
特にYen Town Band Charaが歌う《マイ・ウェイ》をバックに流しながらのスクールバス大惨劇シーンは圧巻の一言!
一方でイジメのシーンは視覚的にも精神的にもかなりきつく、実は人間こそが最大のモンスターであることを訴えているかのような、人心の闇に鋭く言及した秀作です。
監督&脚本は、日本でも2018年に山田裕貴&齋藤飛鳥主演でリメイクされた『あの頃、君を追いかけた』(11)のデギンズ・コー。
まるで真逆の2本ですが、実は合わせ鏡のように思春期の光と影をそれぞれ訴えているのでした。
明るく溌溂としながら、いつしか切なく映えわたる繊細な青春群像劇を発表した彼は、続いて真逆ともいえる負の要素満載の青春映画に挑戦したのでした。
コミカル転じてダークホラーへ転生『キョンシー』(13/香港)
香港映画界を代表するホラー・アクションといえば、何といってもキョンシー!
その中でも『霊幻道士』(85)シリーズはキョンシーの存在を広く世に知らしめたことでも画期的なものではありました。
しかし、この『キョンシー』、従来のピョコピョコ歩く不気味可愛さなキョンシー映画ではなく、何と『霊幻道士』をコミカルホラーからダークホラーへ転生させたもの!
ストーリーも、かつて『霊幻道士』の道士役で人気を得るも今はすっかり落ちぶれてしまったチン・シュウホウ(チン・シュウホウ本人が演じている!)が、死に場所を求めて幽霊の出るアパートにたどり着いたことから巻き起こる怪異譚!
(シュウホウだけでなくアンソニー・チェン、チョン・ファなど過去のシリーズに出演した俳優が多数出演しているのもお楽しみ!)
さらにこの作品、『呪怨』シリーズで世界に名を馳せた清水崇監督を製作に迎えており、そのことからも本作が恐怖メインで作られ散ることがご理解できることでしょう。
タイ発ロマンス・ホラー『呪いのキス 哀しき少女の恋』(19/タイ)
敬虔な仏教国で知られるタイですが、実はかなりツワモノのホラー大国で、中には『心霊写真』(04)のようにハリウッドリイクされたものもあります。
その中で『呪いのキス 哀しき少女の恋』は、タイに伝わる宙を舞う生首に内臓がぶら下がった妖怪「ガスー」をモチーフに、巧みに思春期ラブ・ロマンスを絡ませた秀作。
既に鑑賞した映画ファンの間では、タイ映画版『トワイライト』とも称されています(現在Netflixで鑑賞可能)。
舞台は第二次世界大戦下、タイの小村。
子供のころガスーにキスされたことから自分もガスーと化してしまった少女サイと、彼女を元に戻す道を模索するノイ、そしてハンターたちと共にガスー狩りへ繰り出すジャッド。
映画は少女とふたりの少年の三角関係を軸に、切なさも嫉妬もあれば恐怖もあり、さらにはクリーチャー同士が織り成す妖怪バトルの妙味まで堪能できるという、かなりてんこ盛りの内容になっています。
ガスーの全体のヴィジュアルがかなり出し惜しみしていますが、いざ出てきたときの一見グロテスクなそのさまも、いつしか愁いのあるものに見えてくることでしょう。
そして邦題にもある「キス」シーンは必見! とだけお伝えしておきます。
今や世界各国のさまざまな映画が配信で簡明に見られる時代、ホラーに関しても、これを良き機にいろんな国の作品をチェックしてみてはいかがでしょうか。
(文:増當竜也)
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