「スーパーヒーロー戦記」は映画館で作品を見る空間そのものが一番のメインのような作品
『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』大ヒット上映中。
仮面ライダー50周年、そしてスーパー戦隊45作目のアニバーサリー作品として、文句なしの最高の出来上がり。
もう見ている最中から「これヤバイ、おもろすぎる」と何度も思いました。
前回、白倉伸一郎プロデューサーへのインタビュー記事がアップされたんですが、その時に聞かせていただいた話もふまえて、「ヒーロー戦記」の感想を書いてみたいと思います。
白倉さんが日本で一番上手じゃないかと思ったのは、やはりメタフィクションの扱い方。
作品という、いわば虚構の世界だけで完結させず、僕らが生きている現実とも絡めるテクニックが、今までのメタフィクション作品よりもさらに高みに行っていて驚きました。
これまでにもこの手法を取り入れた映画はありました。
「平成ジェネレーションズFOREVER」では、仮面ライダーをテレビの中の絵空事、現実の世界の存在じゃないと言い切ったり、『仮面ライダージオウ』の劇場版「Over Quartzer」では、作中で平成ライダーの作品たちを設定も世界観もバラバラだと指摘していたり。
もっと遡ると、40周年の時の「レッツゴー仮面ライダー」では、1971年に仮面ライダーが負けていたら、その後正義の系譜がなかったとしたら、というIfを展開していたり、その根本にはやはり、『仮面ライダーディケイド』という平成一期を総括した作品があったからこそなのかなと思いました。
今作もそうやって長年培われたメタフィクション演出を、さらに昇華させて見せてくれています。
白倉さんはこうおっしゃられてました。
「現実を描きたいわけじゃなくて、お客さんが現実にいるっていうことのほうを大事にしたいんですね」
決してお客さんに媚びているわけではなく、かと言って無視しているわけでもない。
映画作品がメインディッシュなのではなく、映画館で作品を見る空間そのものが一番のメインになってるような、そんな作品。
これはまさしく「平成ジェネレーションズFOREVER」「Over Quartzer」でも感じたことで、僕はこの感覚がとても大好きです。
行くとこまで行ったなと思ったのはやはり鈴木福君、いや大役を務めた福君に君付けは失礼なので福さんにさせていただきます。
まさかの石ノ森章太郎先生の役。
普通の役者さんなら、名前を聞いただけで大袈裟でなく震える人もいるはず。
しかし、福さんはそんなプレッシャーは微塵も感じさせずにしっかりと見せつけてくれました。
ご本人が特撮好きなのは有名な話ですが、その特撮愛のおかげなのか、役にもきっちり体温を通わせてるところはさすが。
ラストの藤岡弘、さんの一言に涙腺が緩みましたが、相手が福さんでなかったらまた違った感情になっていたかもしれません。
メタの部分ばかり取り上げてしまいましたが、内藤秀一郎さんをはじめとした『仮面ライダーセイバー』の面々が本当によかったです。
「ヒーロー戦記」というタイトルですが、実質「セイバー」の映画と言っても過言ではないくらいの活躍でした。
特にルナと賢人のシーン。
現実なのか現実じゃないのか。
物語を綴る小説家の飛羽真が、実は物語の登場人物の一人に過ぎないと分かった時の作品の揺れ。
敵に殴られてピンチに陥るわけではなく、作品そのものがピンチに陥る圧倒的不安。
そこを演じ切る内藤さん。
1年での成長が集約されていてグッとくるものがありました。
このタイミングのライダーがセイバーで本当によかったです。
「本」というツールがあまりにもマッチしていて、いろんなヒーローを組み合わせてもページが混ざったってしまったという設定によって違和感ゼロ。
千明と時雨が戦っても「なんでこの2人?」にはなりません。
ラストはお祭り騒ぎで、全員ドンチャン騒ぎのアクションシーン。
と思って見てたんですが、田崎監督についての質問をしたとき、白倉さんが話されたことを思い出し、ハッとしました。
「一人ひとりに1年間主役を務められてきた重みがあるんだっていうことが、身に沁みていらっしゃいますよね」
絶対に淡々とは見せない。田崎監督自身も何作も関わってきた上でのアニバーサリー。
かっこいい見せ方はお手のもの。
一瞬のアクションに作品が濃縮されてる。
その時代時代で田崎監督も、一作一作愛情持って演出されてきてるからこそなせる業。
もうすぐイマジン達が映画の副音声をやってくれるというニュースも聞きました。
攻める攻める東映特撮。
これはまた見に行くこと間違いなし。
まだまだ「スーパーヒーロー戦記」、終わることはありません。
(文:篠宮暁)
【オジンオズボーン・篠宮暁の“特撮”向上委員会】
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