『もののけ姫』が公開された1997年、こんな<ヤバい>年だった


1997年の日本配給収入は『もののけ姫』が堂々のトップ

『トレイン・スポッティング』の話も出たところで、ここからは1997年公開の映画を振り返ってみる。


1997年の日本配給収入ランキングを参考にすると、『もののけ姫』が1位

2位以下は『インデペンデンス・デイ』『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』『失楽園』と続く。5位には『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』。10位には『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』がランクインしており、10作中3作がアニメだ。


当時のニュースを見直してみたところ、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』の初日レイトショー公演には多くの人々がチケットを求めて並んでいたようだ。数百人にも及ぶ先頭を陣取った高校生グループの1人は語る。

「エヴァの結末を観にきました!」

彼もまさか、その後24年経ってやっとエヴァンゲリオンシリーズが完結するとは夢にも思っていなかっただろう。彼らが今年、劇場で結末を目撃できたことを祈る。

ときに『もののけ姫』のキャッチコピーは「生きろ。」だったが、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』は「だから みんな、死んでしまえばいいのに…」であり、1位に「生きろ」と言われて10位に「死んでしまえばいいのに」と言われる理不尽さが趣深い。

ちなみに『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』のポスターには「生きたおもちゃと不思議な星で大冒険! 生命のねじが巻き起こす、スペクタクル ドラ巨篇」と記されている。「魂のない(死んでる)おもちゃが生きている」というのは、「生きろ」「死ね」の間に挟まれた5位の惹句としてはまさにピッタリだろう。

(C)1997 青山剛昌/小学館・読売テレビ・ユニバーサル ミュージック・小学館プロダクション・TMS

またランキングには入っていないものの、「名探偵コナン」の長編映画第一弾、『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』が公開されている。

長編ドラえもんの多くのタイトルが『どらえもん のび太の(と)○○』と付けられているように、コナンもまた『名探偵コナン ○○の○○』となるのが恒例だ。この「○○の○○」フォーマットは非常に使い勝手が良い。『名探偵コナン ドラゴンタトゥーの女(ウーマン)』とか『名探偵コナン 怒りのデス・ロード』、『名探偵コナン 陰謀のセオリー』のように、適当に映画名を拝借しただけでもそれっぽくなるし、『名探偵コナン 怒りのデス・ロード』はちょっと観てみたい。

(C)1997 Twentieth Century Fox Film Corporation and Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

話を戻して海外に目を向けてみると、全世界の興行収入ランキングは『タイタニック』がダントツ『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』『メン・イン・ブラック』が続く。日本では『タイタニック』のタの字もないが、公開されたのが97年の終わりなので、98年の日本配給収入ランキングで1位を記録している。

第70回アカデミー賞では、その『タイタニック』が作品賞・劇映画音楽賞・音響編集賞など14ノミニー11受賞と圧倒的。しかし主演男優賞でディカプリオはノミネートもされず、『恋愛小説家』でジャック・ニコルソンが受賞した。ディカプリオはその後「一体どんな役ならアカデミー主演男優賞を獲れるんだ!」とギャングに詐欺師、大富豪、元白人傭兵、FBI長官、大農園の領主、証券会社社長などさまざまな役を演じたが、2015年に「熊に襲われて酷い目に遭う人」でついに主演男優賞を獲得することとなる。1990年代〜2010年代中盤は、ディカプリオのアカデミー賞主演男優賞獲得までの旅路であるとも言えるだろう。

他にも、1997年に日本で公開された映画をピックアップしてみると『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』『バスキア』『うなぎ』『ロスト・ハイウェイ』『フィフス・エレメント』『コンタクト』『ブエノスアイレス』など公開規模・ジャンルもさまざまだが、比較的豪華なラインナップとなっている。そのなかでも、個人的には『GO NOW』『死にたいほどの夜』が思い出深い。


マイケル・ウィンターボトムが監督した『GO NOW』はサッカー好きの遊び人、ニック(ロバート・カーライル)が多発性硬化症に冒されてしまい、生活はもちろん、人間関係も上手くいかなくなってしまう話で、テーマは重めながらも極上の人間ドラマが描かれる。何より、前年にトレスポがあったので「しおらしいベグビー」を観れるだけでも衝撃だった。

『死にたいほどの夜』は邦題が既に秀逸。ジャック・ケルアックの『路上』に登場する完全無欠のビートニクス、ディーン・モリアーティのモデルであるニール・キャサディが放浪を始めるまでを描く。セロニアス・モンクやディジー・ガレスピーの楽曲が画面を彩り、タイラー・ベイツによるオリジナル劇中曲も夜の気だるさを的確に召喚する。『The Suicide Suite』のタイトルも素晴らしい。

1997年は大作・小品問わず、現在でもよく上映されたり、話題に上がったりするような作品が多数登場した年だと書いて差し支えないだろう。「話題に上がるような」といえば、映画だけでなくドラマもまた、1997年は凄い年だった。

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(C)1997 Studio Ghibli・ND

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