『もののけ姫』が公開された1997年、こんな<ヤバい>年だった


表通りから横道まで、名曲揃いだった1997年の音楽



1997年の年間シングルヒットチャートの1位は安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」で、これは「バージンロード」の主題歌でもあった。売上は約222万枚でダブルミリオン。2位には先程も言及した「硝子の少年」がつけ、約168万枚を売り上げている。3位はLe Coupleの「ひだまりの詩」。ドラマ「ひとつ屋根の下2」の挿入歌として使われた。

4位以下にもglobe、SPEED、今井美樹、GLAY、Mr.Children、B'z、PUFFY、SMAP、T.M.Revolution、ZARD、L'Arc-en-Ciel、相川七瀬、広末涼子、My Little Lover、電気GROOVE、JUDY AND MARY、スピッツなど、錚々たる面子が並ぶ。

いくら当時CDが売れていたとしても、これだけの強力な相手を抑えて年間2位を記録するのはまさに奇跡と言いたいところだが、「実力通りって言えばそのとおりだよなあ」と思えてしまうのが松本隆・山下達郎タッグの恐ろしさ。無論、KinKi Kidsの力もある。少なく見積もって7割以上堂本剛・光一のポテンシャルによるものだろう。

ところで、もし筆者が1997年の年間シングルチャートTOP100から10曲セレクトするとなると、以下のようになる。

1:KinKi Kids / 硝子の少年
「雨が踊るバス・ストップ」という歌い出しを、松本隆以外の誰が書けようか。ポップスの歴史を索引するかのような美しいメロディを、山下達郎以外の誰が書けるのか。といった奇跡のような1曲。

2:Mr.Children / Everything (It's you)
『Everything (It's you)』の最も素晴らしい点は、カップリングに『デルモ』が入っていることである。

3:広末涼子 / MajiでKoiする5秒前
作詞作曲は竹内まりや。『恋はあせらず』のようなイントロなのに、タイトルが「MajiでKoiする5秒前」なのはヤバい。もう恋してるだろそれ。デモトラックで本人が歌っているバージョンも良いが、やっぱり広末涼子のフレッシュさには勝てない。全国の思春期男子は広末涼子とは付き合えなくても、彼女がつけるクレアラシルくらいにはなりたいと思っていた筈だ。

4:川本真琴 / 1/2
川本真琴の3枚目のシングル。『1/2』ではギターを掻き鳴らしながら歌っているが、実はピアノを弾く姿が一番可愛い。

5:PUFFY / サーキットの娘
作詞作曲・プロデュースは奥田民生。弛いサーフに聴こえるかもしれないがとんでもない。結構いろいろやってます。MVも一瞬回って現代的。

6:LOREN & MASH / Thanatos - If I Can't Be Yours -
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』のエンディングテーマ。しかし、本シングルの真骨頂はカップリングの『​​Komm, süsser Tod〜甘き死よ、来たれ』である。個人的にはエヴァンゲリオンシリーズのなかで最も好きな1曲。

7:エレファントカシマシ / 今宵の月のように
エレファントカシマシ15作目のシングル。同年ドラマ『月の輝く夜だから』の主題歌として使用された。タイアップだが名曲過ぎて今でも歌い継がれている。

8:中谷美紀 with 坂本龍一 / 砂の果実
「​​解剖台の上でのミシンとこうもりがさの不意の出会いのように美しい」の如く、「ベッドの上で空中浮遊する中谷美紀とタランチュラの不意の出会いにように美しい」シュールなMVが印象深い1曲。

9:UA / 甘い運命
UAの7枚目のシングル。『甘い運命』もいいが、千賀かほるのカヴァー『真夜中のギター』がカップリングに入っているので実質的に2枚組と言ってもいい。

10:JUDY AND MARY / LOVER SOUL
当時人妻がヴォーカルのジュディマリのコピーバンドをやっていて、この曲を弾かされた思い出が深すぎるのでセレクトしている。もちろん曲は最高。

正直、これまで書いた文章を書くよりも選曲に時間がかかっている。泣く泣く漏れた曲も10曲どころではない。面白すぎる遊びだったので、当時チャートを追っていた人はぜひ自分だけのプレイリストを作ってみて欲しい。

ここまでは表通りの音楽だが、1997年はAIR JAMが初開催された年でもある。Hi-STANDARD、COCOBAT、COKEHEAD HIPSTERS、HUSKING BEE、ヌンチャクなど、書いているだけで懐かしい。他にもBUDDHA BRANDは「ブッダの休日」をリリースし、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTは「バードメン」をドロップした。MALICE MIZERも、eastern youthも、BRAHMANも、SOBUTも、並べ立てても仕方がないのでこれくらいにしておくが、とにかく、ヒットチャートに入るような音楽も、入らない音楽も、等しくチャレンジ精神に溢れ、クオリティが高かった。それが1997年のシーンだといえる。

ちなみに、『もののけ姫』のサウンドトラックは、年間アルバムチャートで61位を記録。米良美一が歌う主題歌は年間シングルチャートで74位だった。『もののけ姫』で使われた音楽は、まさに映画音楽界の天皇・久石譲と評しても過言ではなく、1音たりとも手抜かりはない。純粋な日本の音ではなく、シンセサイザーを多用し、南米などの民族楽器を用いることで『もののけ姫』の世界の音を生み出した。

さて、1997年の年間シングルヒットチャートの1位は安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」で、売上は約222万枚超えを記録したのは先程書いた。だが、1997年にはダブルミリオンを通り越してトリプルミリオンを達成したディスクがある。

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(C)1997 Studio Ghibli・ND

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