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2021年09月03日

二階堂ふみ、「プロミス・シンデレラ」だけじゃない、今見直したい映画5選

二階堂ふみ、「プロミス・シンデレラ」だけじゃない、今見直したい映画5選


「プロミス・シンデレラ」より ©TBS

現在TBS系列で放送中の火曜ドラマ「プロミス・シンデレラ」が話題の二階堂ふみ。

橘オレコの同名漫画を原作に、夫に不倫されて離婚し、スリに遭って一文無しになってしまった桂木早梅・27歳。

そんな彼女に「リアル人生ゲーム」を要求していく金持ち性悪高校生の片岡壱成(眞栄田郷敦)と、その兄で実は早梅が初恋の相手だった成吾(岩田剛典)などを中心に繰り広げられる新感覚ラブ・コメディです。

ふったサイコロの目で指示されるさまざまな難題をクリアしていきながら、恋か?お金か?ガラスの靴か?……といった、バツイチ&金なし&曲がったことが大嫌いなアラサー女子を好演。

そもそも作品ごとにガラリと異なるキャラクターを演じ分けることに長けたカメレオン女優でもある二階堂ふみ、今回はそんな彼女の映画の代表作をいくつかご紹介!

世界に認められた才能
『ヒミズ』(12)



二階堂ふみは1994年9月21日生まれ、沖縄県那覇市の出身です。

お母さんが映画好きで、幼いころからいろいろな映画を見せられたことから女優の道をめざすようになったのだとか。

12歳の時に地元フリーペーパーのグラビアでデビューし、それがきっかけとなって2008年に芸能界デビュー。

2009年に公開された役所広司初監督作品『ガマの油』で映画デビューを果たします。

2011年、ロックバンドの「神聖かまってちゃん」を巡る若者群像を描いた入江悠監督作品『劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』で映画初主演して第3回TAMA映画賞最優秀新進女優賞と第26回高崎映画祭最優秀助演女優賞を受賞。

翌2012年の園子温監督作品『ヒミズ』が第68回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を共演の染谷将太と共に受賞。これは日本人俳優として初めての快挙でもありました。

『ヒミズ』は古谷実の同名漫画を原作にしつつ、設定などはかなり映画用にアレンジ。

自分を虐待する父親を衝動的に殺害した15才の少年・祐一(染谷将太)の魂の彷徨が激しい狂気へ傾いていくのを、やはり親から虐待を受けていた景子(二階堂ふみ)の無償の愛によって救われていきます。

園監督は撮影直前に東日本大震災が起きたことから、脚本を大幅に改定して舞台を震災後に設定。撮影も被災地の宮城県石巻市で敢行。

暴力的なシーンも多い痛みと絶望の連鎖が延々と続く中、主演ふたりのピュアな愛情がもたらす一筋の光が、やはり震災で絶望する被災者に届くことを祈るかのような作りとなっています。

特に二階堂ふみの存在は、彼女だからこそ成し得た「希望」の象徴としても見事に映え渉っているのでした。

なお、この後二階堂ふみは園監督のヤクザによるハチャメチャ映画制作を描いたナンセンス・コメディ映画『地獄でなぜ悪い』(13)でも、おっかなくも可愛く大人びたヤクザのひとり娘を演じています。

気鋭の監督たちの映画に
連続出演『日々ロック』



『ヒミズ』の後、二階堂ふみは三池崇史監督『悪の教典』(12)や瀧本智行監督『脳男』(13)など、人間の狂気や暴走みたいなものを激しく体現し得る作品の中で10代のスタンスを活かした役柄を果敢にこなしていた印象があり、それこそ毎年のように映画賞を受賞する活躍ぶりを示しています。

2014年も深田晃司監督『ほとりの朔子』、熊切和嘉監督『私の男』、中島哲也監督『渇き。』、2015年も山下敦弘監督『三園ユニバース』、松尾スズキ監督『ジヌよさらば』、荒井晴彦監督『この国の空』など、気鋭の監督作品へ立て続けに出演。

その中には主演デビュー映画以来のタッグとなった2014年の入江悠監督作品『日々ロック』も含まれています。

榎屋克優の同名漫画を原作に、いじめられっ子から一念発起してバンド「ザ・ロックンロールブラザーズ」を結成してロックスターを夢見る日々沼拓郎(野村周平/演奏中、興奮すると全裸になります)とその周囲の連中が織り成す日常をアヴァンギャルドなユーモアとペーソスで描いた青春映画。

この中で二階堂ふみはライヴハウス店長(竹中直人)の姪っ子で「ザ・ロックンロールブラザーズ」のファンながらも、実は彼らよりも曲の演奏が全然上手い狂暴な酔いどれアイドル(?)の宇田川咲をクール&ワイルドに演じています。

冒頭からひたすらファンダンゴしまくりの楽しいオバカ映画ノリまっしぐらで、開巻まもなくして咲がライヴ会場に乱入するくだりも大爆笑であります(中盤で披露されるパフューム風アイドル姿とのギャップもまた良し!)。

しかし、まもなくして拓郎と彼女の交流が始まっていくことで、映画の流れは「面白うてやがて哀しき」センチメンタルな方向へと徐々に変わっていくのでした……。

 

キラキラ映画も良く似合う
『オオカミ少女と黒王子』



このように、どちらかというとギラギラした尖がった役柄を好んで演じていたように映える二階堂ふみではありますが、よくよくフィルモグラフィを振り返ると、結構等身大の女の子キャラも普通に演じていることに気づかされます。

中でも2016年の『オオカミ少女と黒王子』は八田鮎子の同名漫画を原作にしたキラキラ系青春ラブコメの部類に入るもの。

ここでは二階堂ふみが演じるのは、彼氏とラブラブなふりをして、実は恋愛経験ゼロの高校1年生・篠原エリカ。

彼女はひょんなことから腹黒ドSなイケメン男子・佐田恭也(山﨑賢人)に恋人のふりをしてもらうことになったものの、そこでさんざ犬扱いされていくうちに……。

いってみればまったく自信なさげなM系女子の役ではありますが、それでもまったく違和感なく女の子の繊細な心情を醸し出してくれています。

また本作の廣木隆一監督はどんなジャンルでも映画的に昇華させる達人で、長回し撮影も常套ではありますが、そういった厳しい演出にも真摯に答えているのが画面からも容易に見てとれます。

今をときめく門脇麦、横浜流星、玉城ティナ、吉沢亮、池田エライザ、武田玲奈が出演しているなど、お宝映画としても大いに楽しめる作品。

ちなみに2016年度の二階堂ふみは他にも石井岳龍監督『蜜のあわれ』、大根仁監督『SCOOP!』、三浦大輔監督『何者』、前田司郎監督『ふきげんな過去』と大活躍なのでした。

昭和女性の情念を醸し出す
『人間失格 太宰治と3人の女たち』



二階堂ふみの演技に大人の丸みある落ち着きとゆとりみたいなものが感じられるようになったのは、2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」で奄美大島に潜居したときの西郷隆盛の妻となる愛加那を演じてからのような気もしています。

これと時期を前後して彼女が出演した映画が、2019年に公開された『人間失格 太宰治と3人の女たち』でした。

破滅型の作家・太宰治(小栗旬)の遺作「人間失格」の誕生秘話を、太宰と彼を愛した3人の女の視点からフィクションとして想像して描いた作品ですが、監督が蜷川実花ということもあって、破滅の美学を妖艶かつ色彩鮮やかな絢爛たる仕上がりになっています。

二階堂ふみは宮沢りえ、沢尻エリカとともに「3人の女」のひとりで、結果的に太宰とともに入水自殺する山﨑富栄を演じています。

山﨑富栄は夫が戦争で行方不明となった未亡人で(1947年、太宰と知り合った後に戦死広報を受け取っています)、太宰から「死ぬ気で恋愛してみないか」という誘いに真摯に応じた女性として知られています。

ここで彼女が体現する昭和女性の自然体としての奥ゆかしさと、その中からじわじわと滲み出てくる狂おしいまでの情念は、それまで彼女が培ってきたさまざまな役柄を経ての賜物ともいえるでしょう。

ちなみにこの作品の後、彼女は映画『生理ちゃん』(19)で女性ならではの毎月の悩みと対峙する女性を好演していますが、むしろ2019年はあの『翔んで埼玉』が発表されたことでも特筆されるべき年であり、そこで彼女が演じた男子・白鵬堂百美と本作の山崎富栄とのあまりにものギャップがまた楽しい年でもありました。

(そういえば最近『翔んで埼玉2』の製作が発表されましたが……本気か?)

 手塚治虫の世界を
見事に体現『ばるぼら』



2020年はNHK連続テレビ小説「エール」ヒロインでお茶の間を席捲した二階堂ふみですが、その同時期、それとは真逆の魅力に満ちた映画に出演していました。

手塚治虫のカルト的人気の漫画を原作に、その実子・手塚眞が監督した『ばるぼら』です。これぞ彼女の代表作の1本として讃えられる作品でしょう。

耽美派の人気小説家・美倉洋介(稲垣吾郎)がある日新宿駅の片隅でアル中のフーテン娘ばるぼら(二階堂ふみ)と出会い、彼女をマンションに居候させたことから始まる耽美な破滅への道をスタイリッシュに描いたもの。

撮影監督クリストファー・ドイルの映像美と橋本一子のシンプルかつ豊潤な音楽が幻惑的に融合していく中、自堕落極まるだらしない女ばるぼらの不可解さが、手塚ワールドに内包されるユニセックスの要素と巧みに絡み合っていくのは奇跡的なほど!

また、そういった魅力が映画の時間経過とともにどんどん増大していくのを目の当たりにして圧倒されない観客はほとんどいないことでしょう。

さらには、これまでも幾多のラブシーンを披露してきた彼女ではありますが、本作の中盤で展開されるラブシーンの大胆さは他の追従を許さないほどで、そこからも彼女がばるぼらというキャラクターをこよなく愛してやまないことが伝わってきます。

これを見せられては、主人公作家ならずとも皆彼女の魅力にはまり、まるで狂気のような迷宮に堕ちていくのもやむなしと納得させられるほどのものがあるのでした。

 (文:増當竜也)

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