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『アーヤと魔女』はなぜ厳しい評価がされるのか?見方を変えてみてほしい「5つ」の理由

(C)2020 NHK, NEP, Studio Ghibli


2:主人公のアーヤが成長しない? いや、「したたか」で「どこでも変わらない」魅力がある!

本作の最大の特徴かつ魅力になっている点は、主人公のアーヤのキャラクターだ。彼女の長所は、とても「したたか」であること。孤児院にいる時から「要領良く立ち回って」、園長先生や料理長といった大人たちを「操っている」ような女の子なのだ。

(C)2020 NHK, NEP, Studio Ghibli

それは、そのまま作品に込められたテーマにもつながっている。具体的には、企画を担当した宮崎駿と、宮崎吾朗監督は公式サイトでそれぞれ次のようなコメントを送っているのだ。

監督:宮崎吾朗
子どもは、未来の可能性そのもの。
子どもたちが自尊心をもって、自分らしく生きていけるように。
柔軟に立ち回り、壁を飛び越えてゆけるような映画を作りたかった。
昔と比べて子どもの数はどんどん減ってきていて、当の子どもたちは一人で大人たちを相手にしないといけない。そんな中アーヤのように、頭を使い機転を利かせて大人を思い通りに〈操る〉ということが、今を生きる子どもたちに対するひとつのモデルになるのでは、と思ったのです。
(一部抜粋)

企画:宮崎駿
アーヤのしたたかさというのは、ずるいということじゃない。 
昔はみんな持っていて、なぜか無くしてしまったもの。 
こんな時代を生きるために、必要なことなのです。
(一部抜粋)

2人とも、アーヤのようにしたたかに、柔軟に立ち回って生きる子どもの姿を描くことで、今に生きる子どもたちにエールを送りたい、という気持ちがある。実際に劇中では、アーヤは今までの居心地のよかった孤児院から、自分勝手な魔女の家にもらわれて、手伝いとしてこき使われてしまう。そんな状況でも、彼女はたくましく、工夫をしてうまく立ち回ろうとする。その姿に勇気がもらえる内容でもあるのだ。

(C)2020 NHK, NEP, Studio Ghibli

さらに、宮崎吾朗監督は、アーヤの声を演じた平澤宏々路の力が大きい点を踏まえつつ、以下のように彼女が「イヤな子ではない」理由および、その魅力を述べている。

「人に対して意地悪するとか、誰かの足を引っ張るということには、興味がない子なんです」
「人を操って自分はただ楽をしているだけの子でもない。魔法を教えてもらうためには手伝いもちゃんとやる。必要とあれば徹夜もする。何かを手に入れるためには、行動もするし努力もする」
「タフに立ち回るし、『私ってダメなんだわ』とネガティブな弱音も吐いたりしない。『次にどうすればよいか』ということを考え、自分から働きかけてほしいものを手に入れる」

物語を追ってみれば、この宮崎吾朗監督の言葉通りに、アーヤの言動が「一貫」していることがわかるだろう。終盤にアーヤがとある「いたずら」をする場面があるが、それも今の八方塞がりな現状を好転させるための(だが復讐心も込められた)行動だ。本作に対して「主人公が成長しない」という批判意見をいくつか見かけたが、むしろアーヤが「どこでも変わらない」ことが重要な作品だったのではないか。

(C)2020 NHK, NEP, Studio Ghibli

そんなアーヤを「生意気だ」と思ってしまう大人もいるかもしれないが、宮崎吾朗監督は「そんなアーヤのような子どもに、大人も操られていいのでは?」という主張もしている。たとえば「(いい大人の)自分が主体的に何かをするより、若い人に『こうしてほしいなぁ』って言われて、『しょうがないなぁ』ってまんざらでもない顔をすることは、決して悪いことではないのでは?」といった考えによるものだそうだ。確かに大人の方が、アーヤの性格にかわいらさしさ、居心地の良さを感じて好きになれる、理想的な子どもと大人の関係性があるのかも、と思えるのではないだろうか。

また、魔女のベラ・ヤーガと、小説家であるマンドレークの関係性はとっても奇妙だ。どうも夫婦ではないような、「昔からの友人」というだけ、腐れ縁のような関係で一緒に暮らしているように見える。2人の間に割り込むしたたかなアーヤとの関係性をもってして、現代らしい「新しい家族の形」を提示されたような印象もあったのだ。

(C)2020 NHK, NEP, Studio Ghibli

なお、先ほどは予告編の内容を批判的に記したが、以下の別バージョンの予告編での「雷鳴の後に不敵な笑みを浮かべる」アーヤは、今まのでのジブリのヒロイン像と対照的になってて良かったと思う。もちろん、こんな悪どい顔になっても、アーヤは決してイヤな子どもではない。




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