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『恐るべき子供たち』レビュー:詩人コクトー×監督メルヴィル、天才同士の激突が70年の時を越えて4Kで蘇る!



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

1950年に製作されたフランス映画の名作が、70年の歳月を経て4Kレストア版として蘇る!

本作に関して今さらレビューだの何だのは、多くの映画ファンに対して不敬とすら思えるほどではありますが、これから初めて接するであろう若い世代、特にこれから映画の道を目指そうという方にとって必見である理由くらいならば、いくつか記しておいてもバチは当たらないでしょう。



本作の原作・脚色、そして台詞(ナレーション)を担当したのは1889年生まれのジャン・コクトー。

彼は20世紀前半のフランスを代表する世界的詩人であると同時に、小説、舞台、絵画、映画など幅広く活躍する、今でいうマルチ・アーティストの先駆けでもありました。

一方、監督のジャン=ピエール・メルヴィルは1917年生まれ。

『いぬ』(63)『サムライ』(67)『仁義』(70)などで知られる名匠の彼ですが、実は映画制作が撮影所で成されるのが常だった戦前の時代から自主映画を撮り続けてきた、いわばインディペンデント映画旗手の先駆けでもありました。

そしてコクトーはメルヴィルの長編映画デビュー作『海の沈黙』(49)を見て感銘を受け、自身の小説『恐るべき子供たち』の映画化を彼に依頼します。

それまでコクトーは本小説の映画化を絶対に認めず、自分で監督することもないと語っていましたが、メルヴィルの才能に惚れ込んでの衝動を抑えきれなくなってしまったのです。

「詩人」と「監督」の邂逅からは、さまざまな実験ももたらされています。



原作の少年たちの設定は16歳ですが、コクトーはあえてひとまわり以上も年齢が上の俳優たちに演じさせることを希望しました。
(これには公開当時、原作ファンなどの間で激しく賛否が割れました)

メルヴィルは少年ダルジュロスと彼と瓜二つの娘アガットを、女優のルネ・コジマに一人二役で演じさせています。
(コクトーはこのアイデアに関しては反対の立場で、作品の完成後も本作を傑作と讃えつつ、この点のみは批判しました)

またコクトーはメルヴィルに現場を委ねながらも、やはり芸術家としてのサガか、次第に演出に口を挟むようになり(諸説あります)、海水浴場のシーンは彼が演出したとも伝え聞くところです。

こうした点も含めて、コクトー研究家の間では本作を「紛れもないコクト―作品」とみなす向きが多数。



一方で本作は、ジャン=リュック・ゴダールやクロード・シャブロルなど後のヌーヴェル・ヴァーグの旗手たちに多大な影響を与え、フランソワ・トリュフォーに至っては本作を「コクトー最高傑作の小説が、メルヴィル最高傑作の映画になった」として、メルヴィルを“ヌーヴェル・ヴァーグのゴッドファーザー”と最大級の賛辞を捧げています。

このようにコクトー寄りの立場からも、メルヴィル寄りの立場からも、お互いの資質が存分に発揮された名作が『恐るべき子供たち』であり、そこにはやはり「詩人」と「監督」の激突が最上の形で結実したものとみなしたいところ。

その上で映画寄りの立場としては、インディペンデント映画人が世界的名匠の域へ躍り出るきっかけとなった本作を、ぜひともこれから映画を目指す若い世代に、そしてこれから映画を好きになってくれるであろう方々へ、ぜひご覧になっていただきたいと強く願う次第です。

(文:増當竜也)

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