俳優・映画人コラム

REGULAR

2021年10月20日

門脇麦の魅力:「陰」と見せかけ「陽」でも引き込む

門脇麦の魅力:「陰」と見せかけ「陽」でも引き込む

Lv.5:門脇麦史上最強の陽キャ。『チワワちゃん』


(C)2019「チワワちゃん」製作委員会


漫画『ヘルタースケルター』や「リバーズ・エッジ」を手掛けた岡崎京子原作を、若手映画監督の新鋭・二宮健により映画化された『チワワちゃん』(19)。NetflixやAmazon Prime Videoで配信中。

MVっぽさもある、青春群像劇。どういう作品?って聞かれたら、私は「令和版オレンジデイズ(の、上位互換)」と答える。原作者の代表作に『ヘルタースケルター』が挙げられることから、映像の雰囲気にどことなく蜷川実花っぽさを感じたのも納得。

導入はギラギラとしたクラブシーンからはじまるが、物語としては「東京湾バラバラ殺人事件」が題材となっている。被害者の身元は、”チワワちゃん”こと千脇良子(吉田志織)。

いわゆる人生の夏休みを謳歌するミキ(門脇麦)、ヨシダ(成田凌)、ユミ(玉城ティナ)、ナガイ(村上虹郎)、サヤカ(古川琴音)ら男女数名のグループ。ミキの元カレでもあるヨシダがチワワちゃんをナンパしたことから、ミキたちとチワワちゃんの交流がスタートする。

チワワちゃんとは。

ミキにとってのチワワちゃんもそうなのだが、「めちゃくちゃかわいいしいい子だけど自分の近くにいたら嫌な女ランキングで堂々の第1位を飾りそうな女の子」だ。ただ、チワワちゃんのことを誰も憎めないというあたり、嫉妬をも超える魅力を持っているということ。

序盤登場直後、チワワちゃんは「中学のときは背おっきくなりたくて、いっっっっっっっっぱい牛乳飲んだんだけど、結局おっきくなったのは〜おっぱいだけだったー!っていう」と元気に叫び、その場にいる男子一同 高揚、女子一同 失笑。特に同性からすると、普通、こんな子と絡まないよね?でも、ミキたちの輪にすんなり溶け込み、いつの間にか常に中心にいる存在となるチワワちゃん。

そんなチワワちゃんに嫉妬のような羨望のような、複雑な思いを持つミキ。なにを隠そう、ミキはもともとチワワちゃんの立ち位置にいたからだ。

物語やミキの人物像からおわかりいただけたかと思うが、本作品の門脇麦は「門脇麦史上最強の陽キャ」に違いない。趣味の延長線上でモデルをこなし、周囲からはかわいいかわいいと囃し立てられ、スクールカースト高めな子たちとつるみ、浴びるように酒を飲んでタバコを吸い、朝までクラブで踊り倒すミキ。

ソフトなイメージが一気に覆される『チワワちゃん』、陽キャな門脇麦にもノックアウトされること間違いなし。

Lv.6:今、観ている門脇麦は本当に門脇麦なのか。最上級にハードな『愛の渦』


((C)映画「愛の渦」製作委員会

演劇ユニット『ポツドール』の同名舞台劇の映画化作品、『愛の渦』(14)。ポツドール主宰の劇作家・三浦大輔が映画用に脚本を書き下ろし、メガホンもとったという。NetflixやAmazon Prime Videoで配信中。

いやー、この映画はすごい。振り切りすぎていてすごい。なにを観させられてるんだろうと思うほどの123分間。

門脇麦でいう『愛の渦』、松坂桃李でいう『娼年』。

「乱交パーティー」というキーワードで、検索しなければ出てこないとあるホームページ。営業時間は午前0時~5時。料金は男性・20,000円、女性・1,000円、カップル・5,000円。六本木にある豪華なマンションの一室。そこに、ニート、女子大生、フリーター、保育士など様々な人間が集まる。

門脇麦は、蚊も殺せなさそうなそのおとなしい見た目からは想像もできないほどの”誰よりも性欲が強い”女子大生を熱演。オーディションで大抜擢され、一躍時の人となるキッカケにもなった作品でもある。

ソフト〜ハードになる門脇麦に共通して言えるのが「その独特な雰囲気からは想像もつかないようなイメージとのギャップ」。

端から見た目からしてやばそうな役柄というものはあまりなく、『あのこは貴族』のようなソフトなイメージそのまんまか、『二重生活』や『愛の渦』のように「え、この子こんな感じなのにあんな感じなの!!?」ととんでもないギャップを見せられてしまうか。意外性があればあるほど目が離せなくなってしまうのだ。



((C)映画「愛の渦」製作委員会


“一貫して門脇麦”であることは誰の目にも明らかなのに、まったく別の顔を持つこの唯一無二なミステリアスさ、これからもあらゆる作品で翻弄され続けるだろう。

(文:桐本絵梨花)

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