〈新作紹介〉『老後の資金がありません!』嫁・天海祐希×姑・草笛光子が導く人生の楽しき結論とは?
〈新作紹介〉『老後の資金がありません!』嫁・天海祐希×姑・草笛光子が導く人生の楽しき結論とは?
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
タイトルを見て、思わずドキッとされた方はさぞ多いことでしょう(私がそうです……)。
いつでしたか老後の資金に2,000万円くらいは必要と騒がれたことがありましたが、まあなかなか普通の家庭でそれを成すのは大変なことでもあります。
その意味では本作の舞台となる後藤家、節約上手な主婦・篤子(天海祐希)の日頃の努力でそこそこお金を貯めてきていたほうではありましたが、やはり人生何が起きるかわからないもので、ひょんなことから貯金は崩れ落ちるかのごとくどんどんなくなっていく!?
(ホント、人生、一寸先は闇ですよね……)
本作はそういったトラブルの数々を通して、現代日本のお金の問題をコミカルに示唆していきますが、決してHOW TOもののようにウンチクを垂れ流すようなことはなく、あくまでも人間悲喜劇の“映画”として楽しく魅せこもうとしていくあたり、前田哲監督の意地みたいなものが見え隠れしているといっても良いでしょう。
テレビドラマでは漢(おとこ)前な役柄が多い天海祐希ですが、ここでは平凡ともいえる普通の主婦を魅力的に演じていることもまた映画ならではの冒険心の賜物とも思えるとともに、彼女の俳優としての実力に改めて感嘆させられます。
一方で自由奔放で浪費家といった非凡な姑・芳乃を演じる草笛光子の名優としてのオーラは、これを体感するためだけに映画館へ赴いても十分に入場料金の元は取れるといっても過言ではありません(コントまがいのシーンまで三谷幸喜とともに喜々としてやりきる素晴らしさ!)。
また平凡な嫁×非凡な姑の構図は決して安易なバトルの域に落ち込むことなく、むしろお互いがお互いを認め合う共闘関係へと誘われていくあたりもすがすがしく、さらにはこうした関係性は両者がデュエットする「ラストダンスは私に」が指し示すかのような壮麗かつ楽しいものへと導かれていきます。
思えば草笛光子は松竹歌劇団、天海祐希は宝塚歌劇団と、共に華やかながらも厳しいショービジネスの世界を潜り抜けてきた本物のエンタテイナーであり、こうした秀逸な人材をもっと日本の映画&テレビ界は活かすべきと、本作を見ながら改めて痛感されっぱなしなのでした。
なお、本作はコロナ禍の影響で公開が丸1年遅れましたが、その間の国内外の深刻な状況を経て、ようやく緊急事態宣言が解けて「さあ、これから人生どうなる?」といった今後の不安と希望が入り混じる現在のほうが、よりスムーズに共感しやすいものになっている気もしています。
(文:増當竜也)
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