劇場版『きのう何食べた?』:日常を生きて、悩む。でも美味しい料理が心を温めてくれる。
ロマンティックすぎるんですけど!からはじまるシロさんとケンジのすれ違い
本作の物語はシロさんがケンジを旅行に誘うところから始まる。倹約家なシロさんが、ケンジの誕生日プレゼントとして京都旅行に出かけようというのだ。ケンジは彼氏と京都旅行なんて乙女の憧れとおおはしゃぎするが、あまりのロマンティックすぎる旅に段々不安になってくる。
もしやこの裏には、とてつもない恐ろしいことがあるのでは?
その問いにシロさんからの返答はケンジの予想していたものとは違っていた。しかし、シロさんから告げられたあることをきっかけとして、ケンジは深く傷ついてしまう。シロさんは目に前にある状況に思い悩む。お互いに本音をぶつけられなくなってしまうのだ。
物語にはドラマ版からの続投として、主役二人の勤め先のメンバー、小日向大策・井上航(山本耕史・磯村勇斗)カップルやシロさんの両親(田山涼成、梶芽衣子)、買い物仲間の富永さん(田中美佐子)も登場。中でもケンジが働く美容室「フォーム」のスタッフ田淵剛(SixTONES 松村北斗)の言葉は、シロさんとケンジへの大きな問いとして響く。
「一番近い人間に思っていること言わないで、じゃあ誰と本音でつきあうんですか?」
結論としては、葛藤を抱えながらもシロさんとケンジの関係性はまた新しい段階へと進んでいく。そしてそれはお互いしかいない閉じられた世界ではない。親姉弟、友人、職場、仕事で出会う人。それぞれが選んだ家族の在り方が終盤では示されるのだ。
生きていくことの厳しい一面に直面しながらも、別の側面である美味しそうな料理が今回も登場人物たちの心を温めていく。
大きく傷ついたケンジのためにシロさんが作るキャラメルリンゴのトーストは本当に美味しそうだ。
そしてその後も料理シーンは物語の展開に寄り添い登場する。「なんちゃってローストビーフ&アクアパッツァ」、「黒豆(お正月料理)」、「ぶり大根&厚揚げのみそはさみ焼き」、「肉団子」。どれも印象的なシーンとセットになって忘れられなくなる。
さいごに
ドラマ版からの続きとなっている本作。しかし、劇場版だけ観ても話の内容はわかるようになっている。ドラマは全12話とお正月スペシャルがあってもちろん楽しいし、原作コミックスも最新刊19巻が今月、2021年11月に発売予定だ。
筆者も家族の在り方とはなんだろうとふりかえったが、どういう形であっても正解はないのだ。なら自分が大事だと思う存在と一緒にいて、ケンジが劇中で言うように「誰かの嬉しいことってのは、やっぱ嬉しいじゃない」と言い合えたら楽しいんじゃないだろうか。
(文:ささのは)
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(C)2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会