2021年11月18日

〈新作紹介〉『ミュジコフィリア』井之脇海、松本穂香、山崎育三郎らが音から”音楽”になっていく人生の感動を実践する群像劇

〈新作紹介〉『ミュジコフィリア』井之脇海、松本穂香、山崎育三郎らが音から”音楽”になっていく人生の感動を実践する群像劇



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

さそうあきらの音楽系漫画を原作とする実写映画は、これまで『神童』(06)『マエストロ!』(15)がありますが、本作はひとつの楽器や形式などにこだわらない、さまざまなところから聞こえてくる音が“音楽”として機能していくことの楽しさや喜びを大いに体感させてくれる作品です。

一応メインとなるのはピアノや歌とかだったりしますが、総体的には“音楽に情熱を注ぐ者たち”=“ミュジコフィリア”による現代音楽に関する映画として見事に屹立しているあたりが本作最大の美徳であるともいえるでしょう。



京都という古都と現代音楽の融合に関しても、いざ実写で具現化されたものを目の当たりにすると興味深いものがあります。

実写版『時をかける少女』(10)で長編映画監督デビューを果たした後、「人質の朗読会」(14)「マザーズ」(14)「長閑の庭」(19)などテレビドラマの世界で評価を高めてきた谷口正晃監督、久々の劇映画作品ですが、音楽に入れ込む大学生たちの群像を通してデビュー当時の瑞々しさを巧みに保ち得つつ画面から発散させてくれているのが実に好印象。

今年は『砕け散るところを見せてあげる』『Arc アーク』『護られなかった君たちへ』『ONODA 一万夜を越えて』と出演作が相次ぐ主演の井之脇海ですが、今回は彼の出世作である『トウキョウソナタ』(08)以来のピアノをモチーフとする役柄に挑んでいるあたりも映画的原点回帰を果たしているようで、これまた見ていて心地よいものがありました。



さらには彼同様にキャリアを順調に積み重ねている松本穂香の明るく前向きなパフォーマンス性の豊かさにも唸らされました(彼女の歌声そのものも、すごく耳心地の良いものがあります)。



不器用な変人が割かし多く登場する映画でもありますが、それは即ち何かひとつの事象に魅せられた愛すべき人たちでもあり、どこかしらヲタク気質を備えた方なら、どこかにシンパシーを見出すことも大いに可能な作品でしょう。

そして何よりもこの映画の中で聞こえてくるさまざまな音!

ドラマそのものはやがて主人公と異母兄(山﨑育三郎)との確執に移っていきますが、ある音が“音楽”になっていくことからもたらされる人生の奇跡が、ここでは見事に麗しく描かれています。



また同時に、映画の中には音という重要な要素が常に盛り込まれているもので、その伝でも録音や音響効果といったスタッフワークの繊細な作業にも今回改めて注目していただけたら幸いです。

(文:増當竜也)

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