<Netflix 浅草キッド>若き北野武が迎えた「人生の転機」が心に染みる


脇を固める実力派と意外な人物の好演

映画『浅草キッド』の最大の魅力はなにより大泉洋演じる深見千三郎と柳楽優弥演じる“タケ”の絶妙な掛け合いですが、脇を固めるキャストもとても魅力的です。

深見の妻でフランス座の踊り子で、まとめ役の麻里を演じるのは鈴木保奈美。



改めて言うまでもなくトレンディドラマ時代からありとあらゆるジャンル・キャラクターを演じてきた人ですが、今回も江戸っ子の血筋を引いた姉さんを時に逞しく、時にはかなげに演じています。

もう一人のヒロイン、千春を演じるのが門脇麦。歌い手を目指していましたが、気が付けば踊り子にというキャラクターです。



共に駆け出しの“タケ”とは励ましあう仲です。門脇麦は映画『さよならくちびる』でも歌声を披露していましたが、今回も味のある歌唱シーンを披露しています。

これまでのアーティスト活動は限定的なものだけになっていますが、もっと歌声を披露して欲しいと改めてこの作品で感じました。

また、監督の劇団ひとりがその演技を絶賛しているのが、柳楽優弥演じる“タケ”が深見のもとを離れ漫才コンビ“ツービート”を結成する相方のビートきよしを演じたお笑い芸人のナイツの土屋伸之。



物語の中盤以降“タケ”は深見のもとを離れ“ツービート”を結成し、漫才ブームの中心的な存在となります。

監督の劇団ひとりはこの中盤以降の漫才のシーンに“リアリティ”を求めてナイツの土屋にビートきよし役をオファー。

嘘が入ると一気に偽物感が出てきしまうと考えた劇団ひとりは、漫才シーンを重要視し、柳楽優弥とは念入りな漫才のリハーサルを行ったと言います。

最初はうまくリズムが出ずに苦しんだそうですが、土屋が合流したことで、一気にテンポが良い“ツービートの漫才”を作り上げることができたとのことです。

また、この漫才のリアリティを与えるだけで充分だと思っていた土屋の存在ですが、ビートきよしとして味のある演技を披露し、共演者も絶賛してます。

俳優業で目立った活動のない土屋ですが、お笑い芸人がいい味を出す俳優になることは多々あるので、今後に注目です。

ラストの浅草愛にあふれた長回しショットは感動の一言

ラストにはビートたけしとなった“タケ”がフランス座を訪れるシーンが描かれます。

ビートたけしによる映画のおおもとになった楽曲「浅草キッド」をバックに華やかであったころ、“タケ”が過ごしたフランス座の人々の賑やかな日々が描かれます。



「浅草キッド」の歌詞とビートたけしの唄声が心に染みる一本です。

Netflix作品ということで190以上の国と地域で配信されることになります。日本ならではの娯楽文化のあり方などが伝わるのか不安もありますが、“世界のキタノ”の原点を知る最良の機会になるので、広く見られることを期待します。

(文:村松健太郎)

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