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松竹配信、2021年に多く鑑賞された日本映画3選!
松竹配信、2021年に多く鑑賞された日本映画3選!
(C)2019「人間失格」製作委員会
2021年もあとわずか、前年に引き続いてのコロナ禍をはじめ、さまざまな出来事に一喜一憂された1年ではありました。
そんな中、映画などの配信サービス事業が躍進し続けているのは、まだまだ外出するよりも家の中で過ごす日々が多く、それに慣れてきたこととも大いに関係しているのでしょう。
松竹もまた毎年新作から名作まで幅広い作品群を配信していますが、今回はその中から2021年度に好評を博したヒット作3本を順不同でお知らせしたいと思います。
今年も来年も「顔」の小栗旬主演『人間失格 太宰治と3人の女たち』
2021年は日本映画『キャラクター』などからハリウッド映画『ゴジラVSコング』にも出演、また秋からのテレビドラマ「日本沈没―希望のひと―」も話題を集めた小栗旬、2022年度はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が始まります。
そんな彼が2019年に主演した『人間失格 太宰治と3人の女たち』も現在、好評配信中。
これは名作文学「人間失格」そのものを映画化したものではなく、その作者・太宰治が「人間失格」執筆の時期に繰り広げていた赤裸々な女性関係をフィクションとして描いたものです。
野心的で文壇の若き天才である一方、女にはめっぽうだらしなく、しかしながら妙にモテまくる太宰治を小栗旬が艶っぽく好演。正妻(宮沢りえ)、ふたりの愛人(沢尻エリカ&二階堂ふみ)それぞれとの切りたくてもなかなか切れない愛欲の世界が、蜷川実花監督独自の色彩美で絢爛豪華に描かれていきます。
徹底的にだらしないのに魅力的な太宰ではありますが、そんな彼に引き寄せられていくのか引き寄せているのか定かではない山﨑富栄光役の二階堂ふみが出色です。
昔も今も生活は大変!
『引っ越し大名!』
こちらは2019年に公開された時代劇。
土橋章宏の「引っ越し大名三千里」を原作に犬童一心監督のメガホン、星野源主演で映画化したものです。
モチーフとなっているのは江戸時代の前期、生涯に7回も国替えをさせられ“引っ越し大名”とあだ名された実在の大名・松平直矩。
ここでは姫路から豊後國(現・大分県のあたり)への国替えを命じられた直矩(及川光博)から引っ越し奉行を任命された片桐春之介(星野源)の奮闘を主軸に、参勤交代をも超える莫大な労力と財力を要する国替えの模様が面白可笑しく、時にスリリングに展開されていきます。
この主人公となる春之介、気弱で極度の人見知りながら、書物の鬼で知識の宝庫。
(C)2019「引っ越し大名!」製作委員会
そんな彼は、幼馴染の剣豪・鷹村源右衛門(高橋一生)や中西監物(濱田岳)ら頼もしき仲たち、そして前の引っ越し奉行の娘・於蘭(高畑充希)の協力を得ながら、この一大引っ越し仕事に臨むのでした。
松竹では『武士の家計簿』(10)や『超高速!参勤交代』2部作(14&16/原作は土橋章宏)など、従来の時代劇とは異なり、武士の日常生活を経済的な面から見据えたユニークな時代劇が好評を得ており、本作もその流れの中で製作されたものです。
これらを見ると、今も昔も人々はみんなお金や人間関係に苦労しながら生きていることに気づかされ、自分自身の生活を改めて鑑みつつ、どこかしら明日の希望などにも導かれていくのでしょう。
こんな閉塞的な世の中だから
『男はつらいよ おかえり寅さん』
最後の1本は『男はつらいよ おかえり寅さん』です。
御存知、フーテンの寅さん(渥美清)を主人公にした『男はつらいよ』シリーズの50周年記念作品で、通算50作目にあたります。
渥美清自身は第48作目『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(96)を遺作に亡くなっていて、その後でオマージュとして製作された『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』(97)の後、22年ぶりの新作として製作されたことが話題になりました。
設定も『寅次郎紅の花』から20年以上の月日が経った現代が舞台になっており、おいちゃんもおばちゃんももうこの世にいません。
寅さんの妹さくら(倍賞千恵子)とその夫・博(前田吟)もすっかり歳を取りました。そして主人公となるのは彼らの息子で、今は脱サラして小説家になった諏訪満男(吉岡秀隆)。
(C)2019 松竹株式会社
妻を亡くし、娘(桜田ひより)と二人暮らしの彼は、時々おじさんである寅さんのことを思い出します。
そう、この作品、今回の登場人物たちの想い出として引用しながら、これまでのシリーズの名場面を堪能することができるのです。
それらは抱腹絶倒のものばかり!
しかし現実の満男たちの人生は、どこか寂しげです。
そして、ここでは満男と初恋の相手だったいずみ(後藤久美子)との再会と、二人の間で恋が再燃するか否かがスリリングに描かれていきます。
(C)2019 松竹株式会社
満男は奥さんが亡くなっているものの、いずみは夫がいますので、これは不倫になってしまうわけですが、その結末はどうなってしまうのかは見てのお楽しみ。
ただ、みんな辛く哀しいときも含めて、寅さんのことを思い出します。
映画を見てますと、最近なかなか帰ってきてないようで、みんな寅さんに久々会いたがっているようにも見えるのでした。
そこには猥雑ながらも盛り上がっていた昭和後期と、21世紀以降の世界的にも閉塞的な現代社会とを対比させようとする山田洋次監督の意図もあるのでしょう。
そうこう考えていくと、コロナ禍が結局収束することのなかった2021年、この作品が好評を得続けている理由の一環も理解できるような気がしてなりません。
早く世の中の暗雲が払しょくされ、寅さんがまたあの屈託のない笑顔で私たちの元へ戻ってきてくれることを(それが叶わぬ願いと知りながらも)祈り続けながら、2022年に期待を繋げていきたいものです。
(文:増當竜也)
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