映画コラム

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2022年01月25日

『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』で考える多様性の在り方

『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』で考える多様性の在り方


スクリューボール・コメディの肝を押さえたプロット



本作はスクリューボール・コメディとしても一級品である。スクリューボール・コメディとは1930〜1950年代にアメリカで流行した映画ジャンル。男女のカップルがハイテンポな会話を繰り広げながら予測不能な方向へと展開していく喜劇である。

『赤ちゃん教育』では考古学者が目の前に現れた女性に振り回されていき、恐竜の骨格模型を破壊されるまでをコミカルに描いている。『結婚五年目(パームビーチ・ストーリー)』は離婚しようとフロリダを目指す妻を追いかける夫の話だ。道中では、列車内で猟銃を乱射する集団に巻き込まれたり、眼鏡をかけた男性の顔を踏み台にしながら移動したりする様子を怒涛の勢いで描いた作品だ。

現代社会は上手くいかないことが多い。そうした出来事を豪快に駆け抜けていくことで笑いに変えるのがスクリューボール・コメディの魅力である。



『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』の場合、街を豪快に動き回るクリフォードと家が破壊されても愛を注ごうとするエミリーによって事態がドンドン大きくなっていく。ビル管理人が水道管を点検する横で、ハワードおじさんがクリフォードの尻尾を静止させようと踏ん張る。エミリーたちが作戦を練っている最中に、クリフォードが公園の巨大なボールを目撃し走り出す。

しまいには、オーウェンの愛犬をパクッと口の中に入れてしまう。予測不能だ。『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』は犬も歩けば棒に当たるスクリューボール・コメディだった。


子ども向け映画ながらも、いや、子ども向け映画だからこそ映画の中の多様性を考え抜き、スクリューボール・コメディとしても一級品な脚本はお見事である。

脚本家のジェイ・シェリックとデイヴィッド・ロンはドウェイン・ジョンソン主演作『ベイウォッチ』やエディ・マーフィ主演の『アイ・スパイ』の脚本などといったコメディ映画の脚本を手掛けている。彼らの今後の活躍に期待したい。

(文:CHE BUNBUN )

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