『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』原作の再現度がものすごかった「3つ」の理由
『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』原作の再現度がものすごかった「3つ」の理由
3:B級ホラー映画の監督が「とことんやった」結果がこれだよ!
本作『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の監督を任されたのが、ヨハネス・ロバーツであることも重要だ。イギリス映画『ストレージ24』(12)のアメリカでの興行収入がたったの72ドルであることが逆に話題となったり、サメ映画『海底47m』(17)がそれなりの支持を得て続編も作られたりするなど、はっきり言えば「B級」寄りのホラー映画を手がけている方なのだ。そんなヨハネス・ロバーツ監督はゲーム『バイオハザード』の大ファン。『1』と『2』が流行っていた当時は他の人たちがプレイするのを横から観ていた程度だったものの、10年前からはすっかりゲーマーになってシリーズにハマりまくり。2019年の『2』のリメイクの発売も大きなターニングポイントになったそうだ。
そんなB級ホラー映画でそれなりの評価を得ている、そしてゲームの大ファンの監督が、プロデューサーから「ゲームにとにかく忠実に作ってね!」と、なかなかの予算と制作規模をもって提案されたのであれば……そりゃまあ要素を全部ぶち込んだ映画ができるわな!と大納得できるというわけである。
そんなヨハネス監督のこだわりぶりは、プロデューサーのジェームズ・ハリスが「やるんならとことんやるべきだ」と気付かされたほどだったという。ヨハネス監督は前述したようなゲームの要素を「ファンがより一層映画を楽しめるよう、できる限り盛り込まないといけない」という気概で制作に挑んでいたのだから。
さらに前の実写映画シリーズとは違ってアクションよりもホラー要素を重視したり、ゲームでは不遇な扱いまたは背景を持っていたキャラクターにもスポットを当てるサービス精神もみて取れる。警察ヘリコプターのナンバーがゲームの『1』が発売された日付けだったりするなど多数の小ネタも仕込んだという。それらの「全てを楽しんでいってね!」という気概は、ある意味で誠実だ。
それでいて「なんだそりゃ!」と思いたくもなる、ゲームにもなかった斬新なアイデアでの怖がらせ方(?)もある。他にも序盤に陰謀論を安易に信じてしまうことへの批判があるのは、現代に作られる映画らしいポイントだろう。
さらには警官クリス・レッドフィールドを演じたロビー・アメルも御多分に洩れずゲームの大ファンだったそうで、「風景があまりにそっくりで興奮した!」「本当にゲームのキャラクターになってゲームの中を歩いている気がした!」「ディテールへの気配りや目配りが素晴らしかった!」「特定の部屋に入るとカメラが(ゲームの)特定のアングルにシフトしているんだよ!」などと嬉しそうに話していたらしい。出演者がそこまで楽しんだのであれば何よりである。
とにかく、『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』はとにかくゲームへの愛情だけで要素が構成されていると言っても過言ではなく、それはゲームファンにとっての最高のご褒美になっているということをわかっていただけただろうか。
そのおかげで物語に多少(かなり)の無理が出ていたり、舞台をパッチワーク的に繋いだような雑な印象もあるものの、「整合性とかそういうのは別にいいっしょ!」「それよりもゲームをできる限り再現することだろ!」という気持ちで臨めばきっと楽しめると信じている。
そんなわけで、個人的には『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』はこれはこれで美味しくいただけた大好きな映画となった。ゲームのファンであれば、70点満点で65点を期待したら68点くらいになる満足度はあると思う。ゲームを全く知らない、またはマジメなホラー映画を期待して観た人にとっては40点くらいになってしまうかもしれないが、それでもいろんなイベントがテンポ良く起きるので飽きないだろうし、「映画館でちょうどいい感じの(そこそこお金のかかった)B級ゾンビ映画を観たからまあよかったかな」くらいには楽しめるとは思いたい。そんな希望を叶えたい人におすすめだ。
(文:ヒナタカ)
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