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「菅田将暉、ヤバい」と思った映画3選
「菅田将暉、ヤバい」と思った映画3選
『タロウのバカ』:社会からはじき出された少年の哀れすぎる行く末
『セトウツミ』(16)や『MOTHER マザー』(20)など、ハートフル〜ドラスティックまで幅広い作品を手掛ける大森立嗣によるオリジナル脚本・監督作品『タロウのバカ』(19)。
タロウ、エージ、スギオという、社会からはじきだされた3人の少年の日常を綴った本作品。
菅田将暉は、高校生にして挫折を味わい自暴自棄になり、暴力に走ってしまう少年・エージを演じた。
(C)2019 映画「タロウのバカ」製作委員会
この3人の中で一番ヤバいのは、YOSHI演じるタロウだ。
戸籍がなく名前もない、育児放棄され社会からも置いてけぼりになっているタロウには、そもそも何がヤバいのかという線引きを理解していない。わからないことほど恐ろしいことはない。
対して、最も正常な思考を持っているのは仲野太賀演じるスギオ。
スギオは至って普通で、ただただ臆病な孤独なのだ。孤独を恐れているから、エージやタロウから離れられない。だからこそ、スギオのあの決断は彼にとっての最大の勇気だったのかもしれない。
(C)2019 映画「タロウのバカ」製作委員会
そして菅田将暉演じるエージは、ヤバさに対するアクセルを踏んでしまう人物に至ってしまった。
元々は、柔道に明け暮れる明朗快活な少年だったんだと思う。身体が資本な柔道において膝を壊してしまい、柔道部の顧問に「生きてる意味ねぇんだよ」「社会のすみっこで生きてけ」と罵倒されるシーンは、映画であっても二度と見たくないと思ってしまうほどには腹立たしい。
……こんなのさ、人生どうでもよくなっちゃうに決まってるよね。ドラマ「ドラゴン桜」の楓(平手友梨奈)の両親もそうだけど、なぜ親や先生などその子にとって一番近くにいる味方であるはずの大人が、その子の人生を決めつけてしまっているのだろうか……。
(C)2019 映画「タロウのバカ」製作委員会
この出来事を引き金に、エージのやさぐれた日々がはじまる。
タロウのヤバさを加速させたのも、スギオの弱さを全面に引き出したのも、紛れもなくエージだ。でも、全くかばうわけではなく、エージは悪くない。そんな風にさせてしまった、大人が悪いのだ。
育児放棄、犯罪、売春、暴力、社会孤立、孤独死に満ちた世界がセンセーショナルに描かれており、正直見る人をかなり選ぶ作品。が、これは“世界のどこかに存在している世界”であり、受け入れなければならない事実でもあるということを覚えておきたい。
いかなる作品も名作に仕立て上げる、菅田将暉の“裏の魅力”
「ミステリと言う勿れ」(C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン
善人から悪人まで、強固な原型が存在する原作モノにも見事に憑依する菅田将暉。
出演作品を眺めていると「演じたことがないカテゴリはないのではないか」と思ってしまうほどにあらゆるキャラクターを網羅している。
キャラクターといえば、映画『キャラクター』。Fukaseの怪演には圧巻だったが、菅田将暉が彼の良さを押し上げていたようにも思う。
思い返してみると、どの作品においても「菅田くん、よかったよね」ではなく「菅田くんが出てたあの作品、菅田くんも物語もキャストも全部よかったよね」というパターンが多すぎる。そう、ハズレがないのだ。
ここから考えるに、妻・小松菜奈をはじめ、有村架純や二階堂ふみ、仲野太賀、柄本佑など、共演者を輝かせる鏡のような役割をも果たしているのではないか。もちろん、その人それぞれの演技力あってこそではあるが、これもまた菅田将暉の持つ不思議な魅力である。
……またひとつ、彼の素晴らしさが更新されてしまった。
今クールは、月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」の久能整だけでなく、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の源義経も拝むことができる、とんだ贅沢期間。
見逃すことなく、菅田将暉の活躍を追いかけていきたい。
(文:桐本絵梨花)
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