『ウエスト・サイド・ストーリー』、さまざまな社会問題にも向き合うスピルバーグの意欲作


ロバート・ワイズと
スピルバーグの共通項



本作はリメイクというよりも舞台を原作にした2度目の映画化であることが強調されていますが、スピルバーグは決して1961年版をないがしろにせず、当時のファンの想いも大事にしてくれている、そのことが何よりも嬉しいところです。

思うに、スピルバーグ監督と1961年版のロバート・ワイズ監督には共通項があります。

オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』(41)などの名編集マンだったロバート・ワイズは、1944年に『キャット・ピープルの呪い』で映画監督デビュー。

以後、西部劇『月下の銃声』(48)『西部の二国旗』(50)などやボクシング映画『罠』(49)『傷だらけの栄光』(56)、史劇『トロイのヘレン』(55)、サスペンス『私は死にたくない』(58)、アクション『拳銃の報酬』(58)、戦争映画『砂漠の鼠』(53)『深く静かに潜航せよ』(58)『砲艦サンパブロ』(66)、ラブストーリー『ふたり』(73)、パニック映画(のつもりで当時は見た)『ヒンデンブルグ』(75)など、実にさまざまなジャンルの作品を精力的に手掛けています。

一般的には『ウエスト・サイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』(65)で2度のアカデミー賞監督賞を受賞し、その後も『スター!』(68)を発表していることなどから、ミュージカル映画の名手としての印象が強いかもしれません。

もっとも個人的には『地球の静止する日』(51)『アンドロメダ…』(71)『スター・トレック』(09)といったSF、『恐怖の島』(45・未)『死体を売る男』(45・未)『たたり』(79)『オードリー・ローズ』(77)といったホラーを含むファンタスティック・ジャンルの旗手としてもリスペクトしてやまない名匠です。

こういったどのようなジャンルでもゴージャスに仕上げ、さらにはファンタ・ジャンルにも精通したロバート・ワイズの映画職人的姿勢は、スピルバーグの映画に対する向き合い方と何ら変わらないものがあるように思われます。

その伝でも、スピルバーグが20世紀の『ウエスト・サイド物語』を21世紀の『ウエスト・サイド・ストーリー』としてリ・スタートさせようと願ったのも当然の帰結ではあったのでしょう。

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