『アネット』異才カラックスのロック・オペラ・ミュージカル「息すらも止めてご覧ください!」


原案・音楽スパークスのドキュメンタリー映画も公開



レオス・カラックス監督といえば、若干24歳で『ボーイ・ミーツ・ガール』(84)を発表し、続けて『汚れた血』(86)『ポンヌフの恋人』(91)と野心作を連打し、日本でも1980年代から90年代にかけてのミニシタアー・ブームの波にのって大きな話題を集めたものです。

その後『ポーラX』(99)『Tokyo!』(08/オムニバス映画の1篇『メルド』を演出)『ホーリーモーターズ』(12)と、決して多作ではないものの、いずれも実験的かつ激しい感情表現に満ちながら映画愛を謳いあげる意欲作を発表してきました。

それゆえに彼の作品は映画ファンの好き嫌いが激しく別れる傾向もあり、その伝では本作もついていける人といけない人がいるかもしれません(ただしストーリーそのものは全く難解ではない)。

もっとも、少しオーバーヒートした映画を見てみたい気分の方に、彼の映画ほどふさわしいものはないでしょう。

「圧倒的な映画体験!」

この一言こそが、全てのレオス・カラックス監督作品に共通する要素でもあります。



そして、そんなレオス・カラックスの才能に魅せられて本作の主演&プロデュースまで担当したのがアダム・ドライバーです。

『スター・ウォーズ』サーガ最後の3部作(15・17・19)で運命の宿敵カイロ・レンを演じて大ブレイクした彼。

その時期からの出演キャリアを顧みると『パターソン』(16)『沈黙―サイレンス―』(16)『ローガン・ラッキー』(17)『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(18)『ブラック・クランスマン』(18)『デッド・ドント・ダイ』(19)『マリッジ・ストーリー』(19)、そして最近の『最後の決闘裁判』(21)『ハウス・オブ・グッチ』(21)といったリドリー・スコット監督作品への連投など、とにかく当たりが多い!

(少なくとも、見ておいて損はないものばかり!)



こうした作品選択の確かさがアダム・ドライバーの魅力をさらに引き出していることも間違いのない事実で、現に『アネット』も

「レオスの映画だから、スパークスが作曲したミュージカルだから」

と、その出演&製作を引き受けた経緯に関して簡潔に答えてくれています。

そのスパークスですが、1972年にデビューして以来、独創的かつ大胆なタッチでおよそ半世紀の月日をかけぬけてきたロン&ラッセル・メイル兄弟によるポップスのパイオニア的存在です。

映画的側面ではツイ・ハーク監督『ノック・オフ』(98)の音楽を担当したり、『レディ・アサシン』(07)『キック・アス』(10)などには彼らの楽曲が使われ、また1977年のパニック・サスペンス映画『ジェット・ローラー・コースター』には本人役で出演も果しています。

1980年代末から90年代初頭にかけて、日本の漫画「舞」をティム・バートン監督で映画化しようとしたこともありましたが、こちらは残念ながら頓挫してしまいました。



『アネット』にしても、そもそも10代の頃から彼らのファンであったカラックス監督が『ホーリー・モーターズ』で彼らの楽曲を使用したことが縁となって親交を深め、「スパークスの楽曲でミュージカル映画を作りたい」というカラックスの要請に応じて彼らが原案した企画が実ったものなのでした。


『スパークス・ブラザーズ』(C)2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

なお、4月8日からは『ベイビー・ドライバー』(17)『ラストナイト・イン・ソーホー』(21)などで知られるエドガー・ライト監督によるスパークスのドキュメンタリー映画『スパークス・ブラザーズ』(21)が劇場公開されます。

スパークスの半世紀に及ぶ歩みをアーカイヴ映像はもとより当人たちのインタビュー、関係者やファンらのコメントなどを交えて描いていくもの。

『アネット』と連動して、こちらもぜひ劇場に足をお運びください!

(文:増當竜也)

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