2022年04月07日

玉山鉄二インタビュー「『今はちょっと、ついてないだけ』は、セカンドチャンスのきっかけになる作品」

玉山鉄二インタビュー「『今はちょっと、ついてないだけ』は、セカンドチャンスのきっかけになる作品」


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玉山鉄二主演の映画『今はちょっと、ついていないだけ』が2022年4月8日(金)から全国で順次公開される。
かつてはネイチャリング・フォトグラファーとして脚光を浴びた立花浩樹。事務所の社長に背負わされた借金を返済するために地道な人生を選び、粛々と生きていた。そんな時、写真を撮ってほしいと頼まれ、カメラを再び手にする。立花と同様に挫折を経験した仲間たちとの思いがけない出会いが、立花を変えていく。不器用な大人たちが集まるシェアハウス生活。そこで繰り広げられる物語とは—。

伊吹有喜の同名小説を、映画『ハゲタカ』、NHK連続テレビ小説「マッサン」の玉山鉄二を主演に迎え映画化。映画『パーフェクトワールド 君といる奇跡』の柴山健次が監督・脚本を務めた。
cinemasPLUSでは玉山に撮影でのエピソードや立花を演じるにあたり、感じたことなどを伺った。

もっと自分に対して「余白」や「言い訳」を与えてあげてもいい


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――完成した作品をご覧になって、どんな印象を持たれたでしょうか。

玉山鉄二(以下、玉山):そうですね、今の社会にマッチしている作品になっているなと思いました。世の中には保守的な選択をするしかなかった人や、事を荒立てないような生き方を選んでいる人が大勢いると思います。そんな方たちに「セカンドチャンスのきっかけ」を与えてくれるような作品になったのではと思っています。

——立花浩樹は物静かで粛々と生きている印象がありました。立花と玉山さんご自身の重なる部分はありましたか?

玉山:僕も基本的には立花みたいな臆病さも持っているのでそこは似ているかもしれません。

——表舞台から姿を消したカメラマン、立花を演じてどんなことを感じましたか?

玉山:生きていく上で誰しもが闇みたいな部分は持っていると思います。その闇の部分を見ないように蓋をする人もいれば、苦しみながらも向き合い、前を向く人もいると思います。そこに正解不正解はありませんが、今の社会は前者が多いと感じています。だからこそ、「今はついていないだけだよ」というアプローチが社会的にあってもいいのではないでしょうか。そして、もっと自分に対して「余白」や「言い訳」を与えてあげてもいいと思います。少し脱線したとしても、周りと意見が違っても押しつぶされないで欲しいです。

人物像に近づけるため、衣装も髪型もあえてキメず 


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——今回はカメラマンの役でしたが、いかがでしたか?


玉山:そうですね。現場に実際のカメラマンの方が何名かいらっしゃったので、その方々にいろいろとカメラについてご相談をさせてもらったり、確認をさせてもらったりしながら撮影を進めていました。

——撮られる側と撮る側、どちらがお好きですか?

玉山:僕は基本的に自分では撮らないんです。携帯のカメラ機能とかもあまり使っていなくて……。

——それはどうしてですか?

玉山:どちらかというとその瞬間、瞬間は自分の目で見たいタイプですね。写真の良さもあるでしょうが、僕は実際に自分の目で見ることにこだわりを持っています。


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——立花を演じる上で衣装や髪型などは監督さんや衣装さんと話し合って決められたのでしょうか?

玉山:まず、衣装に関してですが、はじめの衣装合わせでは全体的にタイトな感じで、もう少しかっこよかったですね。でも僕は立花のピュアさとダメっぽさを出すために、もう少し“ゆるめ”な感じがいいのではと話しました。髪型もそんなにキメる感じにはしませんでした。

——コロナ禍の地方ロケは大変だったかと思います。

玉山:これまでさまざまな作品で日本各地に行かせていただきました。今回も茂原市、千曲市、幸田町、島原市の役所の方たちや地元の方たちのサポートのおかげで手作り感のある素敵な作品になっています。コロナ禍もあって海外に行けませんが、日本にもこんなに素晴らしい場所があるということを知ってもらえたら嬉しいです。 

たまに向き合いたくなる「昔の自分」


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——母親役のかとうかず子さんが「今はちょっと、ついていないだけ」と立花に話しかけるシーンがとても印象的でした。親子のシーンはどんなことに気をつけて演じられたのでしょうか。

玉山:40代の自分の息子がまだ実家にいてくすぶっている状態を見ている母親の苦悩がくみ取れたので、その母と息子のシーンはとにかく “素朴”ということを大事にしながら演じました。このような親子関係のご家庭は今の日本に実際、たくさん存在していると思います。ですから、よりリアルにそして重なる部分を感じてもらえればと思いました。

——玉山さんの周りに、「今はちょっと、ついていないんだろうな」と感じる人がいたらどんな風に声をかけますか?

玉山:いろんなアプローチがあると思いますが、自分のペースでいいんじゃないかなと思います。おのおのでタイミングが訪れると思うのでそのタイミングがきたら頑張ればいいじゃないかなと思いますね。


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——玉山さんご自身が「今はちょっと、ついていないな」と感じるときの気分転換の方法を教えてください。

玉山:僕は気分転換というよりも、どちらかというととことん向き合うタイプですね。自分で解決しないと嫌なタイプなので。旅行に行って環境を変えることもありますが、それでも向き合ってしまいますね。

——今回の作品はくやしさ、虚しさを表現するときに瞳を潤ませるシーンが何度かありました。とくに印象に残っているシーンはどの部分でしょうか。

玉山:高橋和也さんが演じた巻島とのシーンが印象に残っていますね。過去の自分の映像と対峙し、立花らしくない行動をとるというシーンがあるのですが、演じていてこみ上げてくるものがありました。


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——玉山さん自身も立花のように過去の映像をご覧になることはありますか?

玉山:こういう仕事をしているので「昔の自分」というものを見る機会がたまにありますが、そんな時は変な感情になることがありますね。知識もテクニカル的な部分でも「今の自分」のほうが絶対に成長しているはずなのに、やけに「昔の自分」が大きく見えることもありますし、その逆で見たことにより憶病になることもあります。要するに、「昔の自分」を見ているときの「今の自分」の状態によって見方が違ってくるのかなと思います。

——なるほど、奥が深いですね。

玉山:衝動にかられて「昔の自分」ってどうだったんだろうと、見てみたくなることはたまにあります。

——先ほどの「とことん自分と向き合う」とおっしゃっていたことにつながりますね。

玉山:そうですね。自分が弱っているタイミングだと向き合いますね。でも、本当の自分がどれなのかわからなくなることもあるのですが。


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——最後に、今作の見所を教えてください。

玉山:現代社会の構造において、どうしてもリスタートするのが難しいこともあると思います。無難で波風を立てないような人生を選択してしまう方もいるかもしれません。でも、自分のオリジナリティーを生かし、純粋に自分がやりたかったことを再確認したい人もいるとも思います。そんな方にとってこの作品は背中を大きく押すわけではないですが、少し“チョン”と押してくれるような作品かと思います。どうか気負いせずに観ていただければ嬉しいです。

(ヘアメイク=城間 健<VOW-VOW>/スタイリスト=袴田能生<juice>/撮影=八木英里奈/取材・文=駒子)

<ジャケット/rito structure(rito77.com)、Tシャツ/VEIN(03-6447-2762)、その他スタイリスト私物>

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