「ちむどん」第10回レビュー:黒島結菜の登場にちむどんどんする!(※ストーリーネタバレあり)
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第10回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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「だったら俺が守ってやる」
家計の負担を減らすため、東京に行くことになった暢子(稲垣来泉)。あんなに東京で美味しいものを食べたいと言っていた暢子でしたが、家族と離れてひとりで行くとなると不安です。しかも簡単には戻ってこれない片道の旅です。
沖縄から東京に行くのにパスポートが必要な時代なんですよね。はじめて見ました、当時のパスポート。
黄色く色づいたシークワーサーの木の下で弱気になっている暢子に「だったら俺が守ってやる」と和彦(田中奏生)は励ますものの、暢子に手をつなごうと言われるとと恥ずかしくて拒んでしまいます。
和彦の初々しさにちむどんどんします。
出発の日の前日、サブタイトルにある”別れの沖縄そば”を家族で食べます。
そこで、暢子は優子(仲間由紀恵)に「今日まで育ててくれてありがとう」「いっぱいわがまま言ってごめんなさい」と礼儀正しく頭を下げます。
まるで、お嫁に行くみたいなシチュエーションです。
「ありがとう」と「ごめんなさい」が言えるのが暢子のいいところだと優子に褒められます。
家族はその晩、歌子(布施愛織)の弾く三線で「やしの実」を合唱します。その歌はやがて、上白石萌歌(歌子の本役)のヴォーカルに変わります。歌手になりたい歌子ですから、この歌声はやがて歌手になる伏線なのでしょうか。
朝、暢子はゆし豆腐を買いにいきます。いつもの日課だったこれも最後です。
智(宮下柚百)は「ゆし豆腐 もっとうまく作るから東京とか行くな」と思わず本音を吐露しますが、冗談と引っ込めて、見送りには行かないよと宣言します。ものすごく寂しいからこそ行かない。智の気持ちがひしひしと伝わってきました。
ついにバス停での見送り。暢子は家族と別れ、バスに乗り込みます。後部座席から家族を見つめる暢子の手を和彦が握ります。
「大丈夫、僕がついてる」
ちむどんどんする!
主題歌「燦燦」には〈大丈夫 ほら見ていて〉という歌詞があり、呼応しているように感じます。
暢子は単に無邪気な親しみを和彦に感じているだけでしょうけれど、和彦のなかではほのかに暢子への甘酸っぱい感情が育っていて、最初に手をつながれたときに芽生え、バスのなかでぐんと伸びたに違いありません。
和彦のせいいっぱいの気持ちも暢子は振りほどいて、バスを下り、家族のもとに戻るのです。
家族は幸せ。でも思いきった和彦の気持ちは……。もちろん和彦は、暢子たち家族の幸せを第一に考えているはず。とはいえそれとこれは別。バスに残った暢子の荷物を運び出しながら、ほどかれた手に残るかすかなぬくもりに心が疼いたことでしょう。
「ちむどんどん」は和彦、賢秀(浅川大治)、智と男の子たちが屈折してる分、エモいんですよね。
暢子はまっすぐ過ぎて情緒少なめ。稲垣来泉さんはすごく凛々しくて魅力的です。主人公として物語の進行を担う役割を立派にやりきったと思います。おつかれさまです。
いよいよ黒島結菜さんにバトンが渡されます。
あっという間に7年経過して、1971年。
あれだけ貧しくて困窮していた比嘉家がどうやって暮らせたのかわかりませんが、4きょうだい、すくすく成長したようです。
和彦と手紙のやりとりしていたポストが小鳥の巣箱になっていました。風化してないだけマシですが、時の流れを感じてこれもまたちょっと切ない。
黒島さんがシークワーサーをかじったとき、柑橘の酸味が口いっぱいに広がるように感じました。
黒島さんは全身に感情が溢れていて、そのエネルギーが画面を震わす(それがエモ)俳優。つまり”ちむどんどん”を生む俳優なのです。
(文:木俣冬)
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