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2022-04-25

<独占!>NFTの本格普及は2025年? エンタメへの活用をメタバース界の第一人者・馬渕邦美氏に聞いた



デジタルデータにブロックチェーン技術を組み合わせることでデータに鑑定書や所有証明などの情報を付加できる「NFT」は、近年、注目を集めているWeb3と呼ばれる新しい概念で重要な役割を果たす。ともに話題になる「メタバース」と合わせて、これから10年・20年とWebを支える重要技術の流行に立ち会っている可能性もある。

Webに関する技術周りに興味がない方にとっては、NFTと言っても何のことやら……となってしまうものだ。

例えば創作した芸術作品にシリアル番号を付加して希少性を持たせたり、シリアル番号の付いたデジタル作品を所有している者だけに特典を与えたりする、などということができるようになるのが、NFTを活用するメリットの一つと捉えても良い。

NFTとデジタルアートを組み合わせたNFTアートは、2022年前半の時点では黎明期とも言える。デジタル技術と融合した素晴らしいアートが発表される一方で「お金になりそうなこれからの技術」という捉え方をしているインフルエンサーや企業による商材も登場するなど、玉石混交とも言える状況だ。



果たしてNFTはどのように映画やドラマといったエンターテインメントと関わって行くのか。

2022年3月26日・27日にSHIBUYA CASTで行われた「SHIBUYA NFT ART JUNCTION 2022」(主催:渋谷ファッションウイーク 共催:ギークピクチュアズ・渋谷キャスト)で「NFTで広がるクリエイターの可能性」と題して行われたトークショーに登壇した馬渕邦美氏(一般社団法人Metaverse Japan 代表理事、PwC コンサルティング マネージング・ディレクター、東京大学工学部産学連携協議会メンバー)にお話を伺った。

NFTがどのようにエンターテインメントと結び付くのか



2022年の春時点で、NFTの話題として最も良く見かけるものの一つは、画像データと組み合わせて「NFTアート」「クリプトアート」として売買されている。デジタルデータに唯一性を持たせることで所有の喜びを味わえるという一面と、デジタルデータの所有権が売買できるようになったという投機的な側面とも見て取れる。

NFTがテレビや映画・舞台・コンサートといったエンターテインメントコンテンツと結び付くことはあるのか。また、エンターテインメント業界ではどのように利用されるのだろうか。

――現在はNFTと画像の組み合わせによるNFTアートが話題になっていますが、音楽や映像といったコンテンツでもNFTアートは存在しうるものなのでしょうか?

馬渕邦美(以下、馬渕):これまでデジタルコンテンツは無限にコピーできてしまうし、誰が所有権を持っているものかという証明ができませんでしたが、NFTによって初めて所有や在庫の概念を持てるようになりました。

それぞれのデータを扱うにはマーケットプレイス(データのやりとりをする販売所)が必要になります。いま、マーケットプレイスでは画像のアートが草分けとなり、音楽も取り扱われるようになってきました。今後、様々な形式のデータが積極的に取り扱われる様になるでしょう。

――映像コンテンツはメタバースの中でどういった取り扱われ方がされると思われますか?

馬渕:NFTやメタバースに関係する技術は進歩が激しく、法律や税制、利用ルールの整備が追いついていません。これから、コンテンツを楽しむためのハードウェアの進化やルールの整備が並行して進んでいく中で、コンテンツも充実していくことでしょう。

当面は、映画そのものというよりはファンコミュニティの中で活用されるのではないかと思っています。

――NFTの作品はデジタルのものなので、違法な複製や海賊版といった危険性はあるものでしょうか? 対策は?

馬渕:まだ、リアルの所有権とバーチャルの所有権がマッチしていないんですね。こうしたところの法整備や権利関係の処理はまさに議論が始まったばかりです。

※民法における「所有権」は形のある物が対象となるため、現行の法律上でデジタルデータの所有権が移ることはありません。また、NFTを販売することが、即NFTの著作権を譲渡する、ということでもありません。
NFTは仕組みと現行の法律上では、所有した感覚を得られると理解する方が良いですが、インタビュー中の表現としては、その「感覚」に関する表記を省略しております。

――予想で結構ですが、そうした議論は何年くらいかかると思われますか?

馬渕:基本的なところの議論はされているのでこの1、2年かと思います。こうしたテクノロジーはどんどん進化していくため、どうキャッチアップしていくかという問題も含まれることを考えると、3年くらいはみておきたいかな、という気もします。

NFTには「誰が誰に譲渡した」といった所有者の移動に対する情報を管理したり、同じコンテンツに対してシリアル番号のような情報を付加することでコンテンツを限定数だけ扱ったりすることができる。この考え方を利用することで、NFTアートをオンライン上の会員証のような使い方をすることもできます。

――NFTは、それ自体がアートと紐付く考え方もありますが、所有者としてやシリアル番号を持てるといった特性から、会員証をはじめサービスを受ける資格としての使い方ができるようにも思います。

馬渕:入場チケットの代わりとしてNFTを使うという考え方はできますね。

プログラムもできるので、ファンの人との繋がりも作れますし、映像であればストリーミングをNFTで行うこともできるようになります。

エンターテインメントのクリエイターがNFTやメタバースにどう取り組むか



トークショーでは、2025年ごろからメタバースが本格化するのではないかという予想も語られていた。現時点では情報サービス社やアーティストが取り組む姿が目立っているが、エンターテインメントの世界で準備できることはあるのだろうか。

――今、現時点で俳優さんや映画人が取り組めることがあるとしたら、何があると思いますか?

馬渕:NFTの取引所であるOpenSea(https://opensea.io/)などをウォッチしていただいて、NFTアートにどのような拡がりがあるのかを体感していただくことではないでしょうか。

――とはいえ、暗号通貨の取引所やOpenSeaの登録など、まだ敷居が高いようにも感じます。

馬渕:まだ登録や操作が簡単とは言えないので、気軽に試していただくユーザビリティーが悪いというのが現状でしょうね。その辺りが整えられるのもこれからじゃないでしょうか。

PCのブラウザーで初めてインターネットができるようになってからインターネットが普及するまでにはある程度時間差がありましたが、今のNFTやメタバースの浸透は、まさにPCのブラウザーでインターネットができるという段階。普及の段階にあたる時期が2025年ごろなのではないかと思います。

現在は普及に向けて様々な技術の進化や制度化が進んでいる時代で、私たちは今そこに立ち会っています。技術に恐れをなさずにやってみる、試してみることが、フレッシュな新しい世界に立ち会えることだと思います。コンテンツの作り手の皆さんには、次の波はどういうものなのかというのをわくわくしながら感じてほしいです。

使いづらいのは我慢して(笑)、次の世界が見せるものに乗っていける方は一足先に可能性が広がっていくのではないでしょうか。

NFTやメタバースが普及するために



仮想空間の中でデジタルデータを取引するにはNFTが欠かせない。メタバースとNFTは切っても切れない関係にあると言えそうだ。

NFTやメタバースに取り組む人が増えている2022年。これから普及するための鍵は何だろうか。優秀なコンテンツが創られても、それを鑑賞する人がいなければいけないし、鑑賞のための機材も進歩しなければならない。

普及のためのポイントは何か。 

――普及のためのブレークスルーは何かあるものでしょうか?

馬渕:全体的なユーザビリティ(使いやすさ)の向上は挙げられます。あとはルールを作っていくこと。ルールメイクとユーザビリティ・あとはデバイスの進化(軽量化)が挙げられるのではないでしょうか。

――トークショーにて、Apple Glass(米・Appleが開発中とされる拡張現実眼鏡。世界のデジタルデバイス企業が開発に取り組んでいると思われる)の登場がメタバースの普及を促進させる話がありました。エンターテインメントを楽しむためのデバイスは、それとは別に出てくるモノでしょうか?

馬渕:XR(VR=仮想現実、AR=拡張現実、MR=複合現実など、現実世界と仮想世界を融合する様々な技術の総称)の何がどのサービス・どのデバイスに適しているかというのがあるでしょうね。

メタバースの世界で映画を観るとしたら、120分以上装着することに耐えられるデバイスでなければなりません。現行のそうした製品は重いし熱も持ちます。進化が待たれます。

――映像や舞台の様なモノにメタバースの世界の応用が利くことはあるのでしょうか?

馬渕:生で見るモノの良さはそのまま残るでしょう。NFT関連の技術はファンサービスを始めとした周辺の部分で役立つものは多いでしょうから、そうしたところから普及していくのではないでしょうか。

ファンビジネスの世界から始まりそうなNFTの世界

Web3の重要な要素であるNFT。それ自身がコンテンツに載るよりも先に、所有者やシリアル番号の概念を持たせられる特徴を活かしたファンビジネスへの活用からエンターテインメント界への普及は進むかもしれない、と馬渕氏は語った。

そうしたビジネスと同時に法律やルールの整備が進み、エンターテインメントのデジタルデータの所有を活かしたビジネスが生まれてくるかもしれない。

現在のNFTの動きを追うことで、Webの世界に訪れる大きな変化の目撃者になれるかもしれない。エンターテインメントを通してそれを体感できる可能性が、きっとあることだろう。

 (撮影・取材・文=奥野大児)
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