2022年05月03日

ものすごく怖いのに、なぜだかめちゃくちゃ笑ってしまう。心霊YouTube界のニューウェーブ『デニ怖』5つの魅力

ものすごく怖いのに、なぜだかめちゃくちゃ笑ってしまう。心霊YouTube界のニューウェーブ『デニ怖』5つの魅力



売れている芸能人には必ず霊が憑いている。霊が憑いてない芸能人は売れない」……とある有名霊能者の言葉を信じ、売れるため霊に“憑かれ”ようとしている芸人がいる。

その名は「デニス」。

吉本興業に所属する、植野行雄さんと松下宣夫さんからなるコンビだ。
芸能生活の出だしこそ好調だったデニスだが、年々露出量は下降。正直、現在は「売れている」部類には入らない。

デニスが“本当に”売れるために立ち上がったのが、『デニスの怖いYouTube』(通称:デニ怖)。本チャンネルの概要欄には、第7世代・第6世代の波に乗れなかった「6.5世代芸人デニスの再起をかけた“恐怖の逆襲YouTube”」と記載されている。


「霊に憑かれる」ためにデニスが奮闘

廃旅館や廃神社、霊界に繋がる公衆電話といった心霊スポットを訪れるのはもちろん、呪いの日本人形や特級呪物と1泊2日など……動画には、とにかく「霊に憑かれる」ためにデニスが奮闘する様子が記録されている。

ラップ音が鳴る・物が落ちる・謎の声が聞こえる……といったTHE・心霊現象から、出演者の入院や体調不良といった(因果関係は不明だが)リアルな影響も起きている。心霊チャンネルとしての本格ぶりはさることながら、「売れるために」と体当たりを続けるデニスのひたむきさに心を掴まれる人が続出。

結果、心霊マニアもそうではない人も虜にし、チャンネル登録者数は18.2万人(2022年4月20日現在)。心霊YouTube界のニューウェーブとして、人気を急拡大している。

『デニ怖』は、観れば観るほど深みにハマるチャンネルだ。ものすごく怖いのに、なぜだかめちゃくちゃ笑ってしまう。この不思議な魅力を、ひとりでも多くの人に伝えたい。デニスが憑かれ、売れゆく過程をみんなで追いかけたい!!

……ということで、『デニ怖』の魅力を5つのポイントから紐解いていく。

POINT1.対照的な人間性がむき出しになる

抗えない恐怖を前にすると、人の濃縮された“本性”が見える気がする。恐怖に立ち向かうときに溢れ出る、デニス2人の本性があまりにも魅力的過ぎる。

恐怖の前で、行雄さんは持ち前のメンヘラを存分に発揮する。「行きたくない」と駄々をこね、スタッフに暴言を吐き、発狂寸前。相方・松下さんの姿が見えなくなると「のぶくん!のぶくん!!」と、迷子の子どもが母親を探すように叫ぶ。

大の大人がゴネまくっているのに、なぜかかわいらしく、嫌な気持ちにならないからすごい。

どう見られるかなんて意識できないくらい、本能全開で怖がる様子に思わず笑ってしまう。……が、おそらくこれが、恐怖を前にした人の“リアル”な反応だ。

対して松下さんは、行雄さんとはまったく異なる反応を見せる。

初回から肝は据わっているのだが、回を重ねるごとに様子が変わっていく。なんというか、「霊を憑けて売れる」ことへの責任感が強くなっている。例えば、心霊スポットで原因不明の物音がしたら、本来は逃げたくなるはずだ。それなのに、松下さんは音の出どころを探しに行ってしまう。

そんな果敢な松下さんは、今「心霊スター」と呼ばれている。順番に動画を観ていくと、松下さんに心霊スターの自覚が芽生えていく様子が分かるので面白い。

また、松下さんはとても穏やかで優しい。恐怖を前にしても、そのスタンスは変わらない。暴れる行雄さんに怒ることもない。それ自体はすごく素敵なことなのに、一周まわって怖い。松下さんは「サイコパス」とも呼ばれている。

何回心霊スポットに行ったとしても、新鮮に怖がってキレる行雄さん。そして心霊スターの階段を順調に登り、今や心霊YouTube界を牽引する存在になりつつある松下さん。恐怖の前でむき出しにされる2人の人間性が、面白過ぎる。

POINT2.霊を喜ばせるためにネタ披露

デニスは、心霊スポットで「ネタ」をする。これは、「霊を喜ばせて憑いてもらおう!」という、とてもハッピーな理論に基づく行動だ。一発芸をしたり、漫才をしたり……「ネタに霊力が宿る」という理由で、ネタ合わせをすることもある。この様子が、あまりにもシュール。劇場やテレビで観るのとはまったく違う。極限状態のネタは、面白いとか面白くないの前に、迫力がある。

なんというか、すごく“重い”。ずっしりしている。当たり前だが、観客は(いたとしても)見えない。真っ暗で、(基本的には)静かな空間でネタをするのだ。ネタがウケないときに「重い」と言うことがあるが、この場合はリアルに「空気が重い」。

心霊スポットの、どんより質量をまとった空間でネタをする……どんな心境なんだろう?霊は喜んでいるのかな?想いを馳せながら見守るのが面白い。

POINT3.「なにも分からない」全員霊感ゼロのチーム

『デニ怖』は、デニスとスタッフ数名のチームで運営されている。なんとこのチーム、全員霊感が無い。そのため、心霊スポット現地ではなにも検証ができない。例えば、触っていないのに物が落ちたとしても、それが霊現象なのか、風が吹いたからなのか、現場ではなにも分からない

霊能者が同行していれば、ある意味簡単だ。「この部屋には霊がいます」と証言があれば、仮に霊障が起きていなくても「いる」動画が撮れる。しかし『デニ怖』チームは全員霊感が無い。つまり、なにか起きるまでロケをし続ける必要がある。本来であれば2~3時間で終わる心霊スポット探訪に、8時間くらいかけるらしい。宿泊までして霊を追い求めることもある。

もちろん編集スタッフにも霊感は無いので、動画のテロップにも「声がした」「物音がした」「謎の影が映り込んでいた」……など、“事実”のみが書かれている。

いち『デニ怖』ファンとしては、視える&お祓いのできる霊能者同行のもとロケをしてくれたら安心だなと思ってしまう。でも、そうではないからこそ、ここに記録されているのはヤラセのないホンモノの現象。「全員霊感ゼロ」は、『デニ怖』の武器でもあるのだ。

POINT4.取れ高の鬼・千葉ディレクター

『デニ怖』を支える存在、本チャンネルの名物ディレクターである千葉さんが凄い。ある意味、霊より怖い。千葉D、通称「撮れ高の鬼」。ほか、「悪魔」「鬼畜」「鬼軍曹」「気狂い」「デニ怖の秋元康」などとも呼ばれている。

心霊スポットを前に足がすくむデニス(主に行雄さん)に対し、千葉Dはまったく容赦しない。例えば、1本目の動画で初めての心霊ロケに戸惑うデニスにかけた言葉は「売れたいですよね?」。



優しく「一緒に行こうか」「やめておこうか」とかは言わない。「売れたいなら行け」の無言の圧力。これぞプロ。

千葉Dの、中途半端な映像は撮らないという執念が凄いし怖い。鬼すぎる!と思うが、こうも思う。千葉Dは、デニスを売れさせたい、その一心で厳しいことを言っているのだ。この厳しさの裏に、深い深い愛情があるんだ……!!!(たぶん!)

そして、『デニ怖』はものすごく編集のレベルが高い。そのまま地上波で流しても、違和感は無いと思う。YouTube独特の過度な演出がなく、観ていて疲れないのだ(精神は疲れる。怖いので)。

とりあえず1本観れば、千葉D&編集の凄さが分かると思う。

POINT5.3つの楽しみ方ができる

『デニ怖』では、ひとつの心霊スポットを三階層で楽しむことができる。
 
【1】動画本編
【2】視聴者コメント
【3】シークエンスはやともさんによる検証

『デニ怖』は長時間収録、さらに数台のカメラを回すので、1度のロケで数十時間の映像データが残る。それらをスタッフが観返して心霊現象を探し、莫大な時間をかけて編集された動画がチャンネルにUPされる。また、前述の通りチーム全員が霊感ゼロ。それゆえ、見逃している現象も多い。

コメント欄には、視聴者から「〇:〇〇に子どもの顔が映ってる」「〇:〇〇に女性の声がする」などの指摘がたくさん入っている。筆者は怖そうなシーンで目をつぶってしまうため、自分で霊現象を見つけることはできない。コメント欄を読みながら観返すと、新たな発見があるから面白い。

また、『デニ怖』には顧問的存在がいる。それは、吉本の後輩芸人・シークエンスはやともさん。幼い頃から霊を見て育ち、さらにお父様も霊感が強いという生粋の“霊視芸人”である。何度も言うが『デニ怖』チームは全員霊感ゼロ。彼らだけでは、なんの結論を出すこともできない。そこで登場するのが、はやともさんによる検証動画だ。

●シークエンスはやとも 公式YouTube:シークエンスはやともチャンネル〜1人で見えるもん。〜

はやともさんはデニスとともに動画を観返し、「これはこういう意味だと思う」「この部屋にずっといたら危なかった」など、霊視芸人の目線でコメントをしてくれる。はやともさんの言葉はユーモアがありつつ、ストレートで分かりやすい。

【1】動画本編、【2】視聴者コメント、【3】シークエンスはやともさんによる検証。この3つがそろったとき、ひとつの心霊スポットストーリーが結末を迎える気がする。

《例:「呪われた廃旅館」をめぐるストーリー》

【1】動画本編&【2】視聴者コメント



【3】シークエンスはやともさんによる検証




 『デニ怖』には、シークエンスはやともさんのほか、陣内智則さん、原田龍二さん、オカルトスイーパーズ(心霊YouTuber)といった豪華メンバーとのコラボ動画も投稿されている。デニスだけで心霊スポットに赴くのとは違う面白さがあるので、是非チェックしてみてほしい。

●陣内智則 公式YouTube:陣内智則のネタジン
●原田龍二 公式YouTube:原田龍二の「ニンゲンTV」 
●オカルトスイーパーズ 公式YouTube:オカルトスイーパーズ

最後に

筆者は、怖いことがものすごく苦手だ。ホラー映画は観れないし、おじいちゃん家の暗い廊下はずっと怖いし、どんな熱帯夜でも足を出して寝れない。YouTubeの心霊映像なんて、本来は絶対に観ない。

そんな筆者が『デニ怖』にハマった理由は、シンプルに「本当に面白い」からだ(interestingではなく、本当に笑ってしまうという意味で)。

YouTubeでよく芸人の動画を観ているからか、あるとき関連動画に『デニ怖』が出てきた。興味本位で(半目で)観てみたら、面白かった。めちゃくちゃ怖いのに、笑ってしまう。人生で初めての感覚過ぎて、中毒みたいになってしまった。

遠くない将来、きっとデニスは「売れている芸能人には必ず霊が憑いている」という言葉を体現する。くれぐれも身体に気を付けながら、新感覚の“笑える”心霊YouTubeを続けていってほしいと思う。

イベント情報

ゴールデンウイーク真っ只中、5月5日(木)に『デニ怖』リアルイベントが開催される。その名も『こどもの日!屋根より高いデニ怖LIVE ~気狂いたちの心霊祭り!~』。

会場チケットは毎回早めに完売してしまうそうだが、オンラインチケットは無限に購入できる。

●オンラインチケットはこちらから

イベント開催だけでなく、初のチャンネルオリジナルグッズ発売も決定した『デニ怖』。良い感じで憑かれ、売れつつあるのだと思う!今は、心霊YouTube界のニューウェーブに乗る絶好のタイミングかもしれない。

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(文:堀越愛)

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堀越 愛

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