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『ハケンアニメ!』注目して観たい「3つ」のポイント



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2022年5月20日(金)に公開の『ハケンアニメ!』。アニメーション業界で働く人々の泥臭さ、作品に懸ける想いが存分に伝わってくる作品だった。

筆者は、制作進行職としてアニメーション業界で働いていたということもあり、細かい現場の描かれ方に共感したと同時に感銘を受けた。


劇中アニメ「サウンドバック 奏の石」

また、本作の劇中アニメーション「サウンドバック 奏の石(サバク)」と「運命戦線 リデルライト(リデル)」のクオリティも非常に高い。

劇中アニメーションに留めておくのではなく、ひとつの作品として鑑賞したいほどだった。

本記事では、アニメーション業界の描かれ方や劇中アニメーションを紹介するほか、原作と実写版の相違点について考察していきたい。

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※本記事では物語の核心には触れていませんが、一部ストーリーに触れています。

注目1:泥臭いアニメーション業界の現場



本作の見どころのひとつは、「アニメーション業界の描かれ方」だろう。

まずは、労働環境。参考資料が多く並ぶ机の前で、アニメーターたちが黙々と作業をしている。暗い部屋の中で、シャッ シャッと作画用紙とペンが擦れる音が響き渡る光景は、他の業界の人が見たらきっと異様だ。

世間ではデジタル化が加速するが、アニメーション業界は依然としてアナログで作業している会社が多い。



アニメーションの設計図となる絵コンテ、アニメーターが原画や動画を描く作画用紙、アニメーションのタイミングなどの指示が書かれたタイムシート、キャラクターのセリフが書かれたアフレコ台本。紙で指示を出し、紙で作業するアニメーション業界の様子を、本作はありのまま描いていた。

それぞれの「紙」に制作会社ごとのロゴマークが印字されていた様子から、スタッフたちのこだわりが垣間見えて楽しい。



また、アニメーション業界で働く人々の「作品に対する想い」も丁寧に描かれている。

「サバク」の斎藤瞳監督(吉岡里帆)も、「リデル」の王子千晴監督(中村倫也)も、作品のクオリティに一切妥協しない。数コマしか映らないカットの光の色や、パーティクルの形、カット同士の繋がりなど、気になる箇所はとことんリテイクを出す。



そして、監督の要望に対して「作品のため」と素直にリテイクを聞き入れ、寝る間を惜しんで作業を進めるアニメーターたちもプロフェッショナルだ。みんな、それぞれ自分の中にこだわりを持って作品と向き合っている。

こうしたクリエイターたちを束ね、放送に間に合うようスケジュールを管理している制作進行やプロデューサーたちも無くてはならない存在だ。監督やアニメーターたちを信じて見守り、時に叱咤激励をする。



指示を出す人、作業する人、管理する人。たった30分のアニメーションを放送するためには多くの人の協力が必要であり、1人でも欠けたら成り立たないということが、本作を通して存分に伝わってくるはずだ。

注目2:高クオリティの劇中アニメーション


劇中アニメ「運命戦線リデルライト」

『ハケンアニメ!』はタイトル通りアニメーションが舞台となる作品。斎藤監督が手掛ける「サバク」も、王子監督が手掛ける「リデル」も、どちらも非常にクオリティが高かった。

辻村深月が手掛ける同タイトルの原作でも、「サバク」と「リデル」の設定はかなり詳細まで描かれている。実写映画化に際して、アニメーション制作陣がそれぞれの作品をより具体的にイメージできるよう、辻村深月が2作品全24話のプロットを作成したのだそう。

2作品とも、ストーリーにしっかりと軸があり、話の展開にドキドキしながら観入ってしまった。


劇中アニメ「サウンドバック 奏の石」

子ども向けのロボットアニメ「サバク」は、アニメ「テルマエ・ロマエ」などの谷 東監督が務める。キャラクター原案は日清食品カップヌードルのCM「HUNGRY DAYS」シリーズのキャラクターデザインなどを務めた窪之内 英策が、ロボットのメカデザインは「機動戦士ガンダム00」で知られる柳瀬敬之が担当。


劇中アニメ「サウンドバック 奏の石」

「地球を守るためにロボットに乗って戦う」少年少女たちは、自分たちに課せられた使命を全力で全うする。壮大に描かれた自然を背景に登場人物たちが一生懸命戦っている様子を観ていると、一瞬で作品の世界観に引き込まれていく。

ロボットの描写は、スタイリッシュでかっこいい。アニメーションに真摯に向き合う斎藤監督同様「相手にまっすぐ訴える」作品だった。



魔法少女たちのバイクレースの様子を描いた「リデル」は、「プリキュア」シリーズで演出や監督を務めてきた大塚隆史が、キャラクター原案は「魔法少女まどか☆マギカ」の岸田隆宏が担当。

「リデルライト」と呼ばれるバイクに乗って、少女たちは年に一度バイクで競い合う。白熱したバイクレースのシーンとは対照的に、デフォルメされたキャラクターたちの可愛さが特徴。


劇中アニメ「運命戦線リデルライト」

ピンクや赤に水色など、ポップな色遣いや背景の描写から、ここではない「異世界」で繰り広げられている物語だと想像できる。天才肌の監督・王子ならではの巧みなバランスやニュアンスが功を奏した作品だ。



劇中アニメーション「サバク」「リデル」のアニメーション制作には、Production I.Gをはじめ日本を代表するアニメプロダクションやトップクリエイターが集結。異なる2作品の特徴を捉え、別作品としてしっかり描き分けていた。

そして2作品とも、高野麻里佳や梶裕貴、高橋李依、花澤香菜など、日頃主役級のキャラクターを演じている声優たちが担当。

豪華な制作陣と声優陣が一丸となって作られたアニメーションは、劇中でしか観られないのがもったいないほど見応えたっぷりな作品だった。

注目3:原作と異なる設定



実写版『ハケンアニメ!』は、小説版「ハケンアニメ!」と少しだけ設定が異なる。違う点は「監督の描かれ方」だ。

小説版の斎藤監督は、「サバク」以前にもすでに監督としてのキャリアがある人物として描かれている。一方で実写版は、「サバク」が斎藤監督の監督デビュー作という設定だ。



そのため実写版は「失敗したら終了」の風潮が強く描かれていた。斎藤監督は、天才肌の王子監督を相手にプレッシャーを感じながら監督業を進める。スタッフや声優と上手く連携が取れなかったり、仕事量の多さに疲弊したりする彼女の姿から、監督という仕事の難しさが伝わってきた。

王子監督の描かれ方も、小説版と実写版で異なる。小説版は冒頭で失踪後、「リデル」全12話分の絵コンテを完成させて戻ってくるのに対し、実写版は最終話を除いた11話分完成させて戻ってくる。



天才と呼ばれてきたからこそ、期待を裏切らない、完成度の高い作品が求められている王子監督のプレッシャーや葛藤が実写版で鮮明に描かれていた。「地道に机に向かうことでしか進まない」監督業の孤独な一面が見えた場面だ。

アニメーションへのリスペクトや愛であふれた作品



『ハケンアニメ!』は、辻村深月が手掛ける約600ページほどの小説が原作となっているため、最初は「どの箇所をどう切り取るのか」が全く見えず、不安だった。

実写版を観て感じたのは、小説版では表現しきれなかった箇所をしっかりと映像に落とし込み、新しい『ハケンアニメ!』を生み出していたということだ。会話の温度感や現場の泥臭さ、そして何よりアニメーションの描写は、映像でなければ伝えることは難しい。



作る人、導く人、支える人……さまざまな立場の人が協力しあってひとつのアニメーションを作る過程を描いた本作は、多くの人に「刺さる」作品となるだろう。

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(文:きどみ)

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