(C)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

『シン・ウルトラマン』面白い、だが賛否両論を呼ぶ「5つ」の理由


賛否両論ポイント4:空想科学の楽しさやロマン/現実に即したメッセージ性には欠ける

『シン・ゴジラ』には明らかに3.11を経験した、災害の多いこの国に住む日本人を鼓舞するメッセージが見てとれた。だからこそ怪獣映画という枠を超えて強い支持を集めた、普遍性を獲得した作品だったと言えるだろう。

だが、『シン・ウルトラマン』で描かれる物語はフィクションとして完結する内容であり、そうした現実の情勢に、タイムリーにフィードバックできるようなメッセージは受け取りにくい。強いて言えば、陰謀を企む外星人の登場がコロナ禍などにより混乱に陥った世界での「正しさ」を認識する姿勢につなげられる、人々の縁が事態の解決を導くということくらいだろうか。

だが、空想科学としての楽しさやロマン、ウルトラマンという作品の本質を追求した内容こそ肯定できるという方もいるだろうし、現実の世界に即したメッセージ性などなくても良いと思える方もいるだろう。フィクションは、それだけで現実で生きる人々の救いになるのだから。

賛否両論ポイント5:度のすぎるセクハラ描写

どうしても拒否反応を覚えてしまった、最大の問題点と言えるのは、劇中にあからさまなセクハラ描写があることだ。ある状況になった長澤まさみをローアングルから捉えた画、そして「長澤まさみの臭いを斎藤工が執拗に嗅ぐ」という“変態性”を笑うようなギャグシーンがあるのだから。

これらは、おそらく作り手もセクハラだと認識しているのだろう。山本耕史演じるメフィラスからは批判的な言及がされているし、前者はその直後のネットやSNS上で女性または話題の人物を下品にからかう浅ましさへの糾弾につながっているとも言えなくもない。だが、そうであっても悪目立ちしすぎているし、そこに至るまでの設定もやや強引であるし、そもそもウルトラマンという作品でセクハラ描写を持ち込むべきではなかったと思うのだ。一本の映画として振り返っても、これらの描写は全く必要ではない。



また、長澤まさみ演じる浅見は初代で言えば「フジ隊員」に当たるキャラクターだが、そちらがパンツルックであったのに対し、今回はリクルートスーツ(スカート)を着ている。狙ったにせよ意図的でないにせよ、そのためにローアングルの画が露悪的で下品なものになってしまっているのは、非常に残念だ。

それらを1万歩譲って、セクハラを相対的に批判をする意図のもと打ち出されたものだと思おうとしても、長澤まさみ演じる浅見の方が「他人の尻をパンッと叩いて焚き付ける」というシーンが2度もあるというのはスルーできない。言うまでもないが、男女関係なく身体的な接触そのものがセクハラであるし、こちらは劇中で強く批判されたりもしないため、この行為そのものを良いものだと肯定しているようにさえ見えてしまう。クライマックスでこれをやってしまうのは、完全にノイズだったのだ。

SNS上で、これらの『シン・ウルトラマン』のセクハラ描写に批判が集まっているのは、良いことであると思う。一昔前だったら「これくらいはいいだろう」と笑って許されたようなセクハラ描写に対し、受け手の意識が変わっていったということでもあるからだ。

だからこそ、樋口真嗣監督と、脚本を務めた庵野秀明、スタッフや関係者には、これらの批判を真摯に受け止めていただきたい。今作られる大衆向けの娯楽映画だからこそ、価値観のアップデートをしてほしいと、映画ファンの1人として改めて強く願う。

次回の「シン」シリーズこと、『シン・仮面ライダー』に心から期待をしている。

(文:ヒナタカ)

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