「初恋の悪魔」第5話レビュー:鈴之介(林遣都)の嗚咽とハグの理由、4人の友情に泣いた
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林遣都と仲野太賀がW主演を務める「初恋の悪魔」が2022年7月16日スタート。
本作は脚本家・坂元裕二が送るミステリアスコメディ。停職処分中の刑事・鹿浜鈴之介(林遣都)、総務課・馬淵悠日(仲野太賀)、生活安全課・摘木星砂(松岡茉優)、会計課・小鳥琉夏(柄本佑)ら曲者4人がそれぞれの事情を抱えつつ難事件に挑む姿を描いていく。警察モノ、ラブストーリー、謎解き、青春群像劇……全ての要素をはらんだ物語の結末はどこへ……?
本記事では、第5話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
「初恋の悪魔」第5話レビュー
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第5話はあえて言うなら鈴之介回だった。いつもの「マーヤーのヴェール……」シーンはないが、視聴者の心に深く響く回となった。
隣人・森園(安田顕)に言われ、自分の家にある開かずの間を開けた鈴之介(林遣都)。階段から続く地下には、明らかに人を監禁していたような部屋があった。一体だれがこんなことを。怖いけど「僕が怖いのはシャンプーしてるときに背中をトントンされることだけです」「シャンプートントンだけです」と謎に強がる鈴之介。何と森園は、ドアを閉めて鈴之介を閉じ込めてしまった。森園、結局裏の裏でシリアルキラーだったのか……!?
森園は、鈴之介が自分を観察していたことに気づいており、彼をあやしいと思っていたらしい。謎の踊りを踊っていたのは「小説家あるある」で、作中に書こうと思っていたものを自分で実践していたという。家に出入りする女性たちも編集者だという。作中で扱う殺人事件の話を喫茶店でしようものなら、通報されかねないらしい。
森園は突然、5年前に中学生が行方不明となり、数日後に遺体で発見された事件の話をし始める。ホームレスが逮捕されたが、亡くなった中学生は「地下室にいる」という言葉を遺しており、他に真犯人がいるのではないかと思っているらしい。地下室のある家に住んでいる鈴之介を疑っていたのだ。鈴之介は、「ここは僕の家に違いないが、僕の家ではない」と言うが、全く取り合ってもらえない。
「お化けなんてないさ」の歌を歌って恐怖を紛らわそうとする鈴之介がかわいい。「ここでは助けを呼んでも誰も来ない」という森園に、「どこだって同じだ、僕には助けてくれる人間なんていない!」と答える。鈴之介は、小学生の頃のことを思い出していた。そこでは「鹿浜くんカウンセリング」ともいうべき、恐ろしい光景が繰り広げられていた。
「鹿浜くんは変だから〇〇してあげたほうがいいと思います」
「鹿浜くんとは話題が合わないから、流行のテレビを教えてあげたほうがいいと思います」
など、「鹿浜くんをどうしたほうがいいか」をクラスメイトが提案し、女性教師がそれを褒めて拍手するという地獄のよう時間だった。なんだこれ、こんなのいじめじゃないか。観るだけでも苦しくなるシーンだった。今までの、頑なすぎるようにも思えた鈴之介のセリフの数々に納得がいった。
一方、琉夏(柄本佑)は思いを寄せる渚(佐久間由衣)に「最近事件についてお手紙で助言してくれる方がいるんです。優秀な刑事だって聞いてるから鹿浜さんなのでは?」と言われて複雑な気持ちになる。星砂(松岡茉優)と2人で撮った写真を見てデレデレする悠日(仲野太賀)のところへいき、「幸せそうな人を見てどう思うかで自分が幸せかどうかが決まる」「僕は不幸せなようだ」といつものめんどくさい感じで話し出す。
鈴之介の話を出して「数日連絡取れないんだって」「穴にでも落ちてればいいのに」「なぜ僕を叱ってくれないの、僕の醜い嫉妬心を」と相変わらずな感じだ。
鈴之介と森園は、もみ合いになり2人とも閉じ込められてしまう。鈴之介は、この家を譲ってくれることになった椿静枝(山口果林)という年配の女性の出会いを思い出していた。座り込んでいる椿さんに具合が悪いんですか? と声をかけ、おぶって家まで連れて行ったのだ。「僕はただの冷血な変人なんです」という彼を面白がり、親しくなり家にちょくちょく立ち寄るようになる。鈴之介にとっては数少ない、人の温かさに触れた経験だった。
だがそんな日々も長くは続かなかった。ある日彼女の家を訪れると、彼女は倒れて亡くなっていた。いつか終わるならこんな気持ち知らなければよかった……と鈴之介は後悔する。彼女は身寄りがなかったため、この家を譲り受けることになったのだった。
地下室にはある男の免許証と手帳のようなものがあり、森園と2人で読み始めると、この部屋に監禁されていた男性の手記だった。座り込んだ女性を家まで連れてきたらお礼に食事をと言われ、眠くなって起きたら閉じ込められていたというのだ。「あなたも狙われていたんじゃないですか」と言う森園に、「彼女がそんなことするはずない」と答える鈴之介。あれほど凶悪犯罪が起こるのを楽しみにしていたのに、実際に大事な人が関わっていたかもしれないとなるとショックを受けるのだな……。
一方で、悠日と琉夏、星砂は鈴之介の家に訪れる。ドアが開いていたので中に入ると、謎のモニターと日記のようなものを発見した。とある事故で壁が崩れ、女性とその子どもが巻き込まれて亡くなった。2人は椿の娘と孫だった。その日は椿の誕生日で、現場には誕生日ケーキの箱が落ちていた。この事件で市の管理責任が問われたが、不起訴となった。納得がいかない彼女は、自分で手を下そうと、役所の人間を狙って襲ったのだった。
モニターに鈴之介と森園の姿が映る。地下室の存在に気づき、助けに来た3人。いまの鈴之介には、助けに来てくれる人がいたのだ。
平謝りする森園が帰り(一応監禁って犯罪だけど大目に見るのね、まぁ鈴之介も覗いたりしてたしな)、4人になると、女性の日記には続きがあったことに気づく。結局男は逃げ、女は逮捕されたが、情状酌量がつき早めに出てこられた。
鈴之介が椿と出会ったのは、奥さんの出産が近い同僚を気遣って「冷血な変人なのかと思ってました」と言われた直後だった(ひどいな)。
「あなたと一緒にいると、優しい気持ちになれる。世の中を恨む悪魔になっちゃダメ。人は人、自分らしくしてればいつか未来の自分が僕を守ってくれてありがとうって褒めてくれる」
「悲しみが消えたわけではありません、娘と孫が生きたこの世界を生きたくなったのです」
そして見せられた最後のページには
「あなたに助けられました。ありがとう、鈴之介くん」
と書かれていた。
「ちょっとおしっこ行ってきます」と鈴之介が部屋から出ると、彼の嗚咽が聞こえてきた。鈴之介に人と接する温かさを教えてくれた椿もまた、彼に救われていたのだ。これはもらい泣きしてしまう……。
「世の中を恨む悪魔になっちゃダメ」というセリフは、鈴之介だけでなく、自分にも向けた言葉だっだんだな。タイトルにもある「悪魔」という言葉が初めて出てきたが、この作品での悪魔は=世の中を恨む人、なのだろうか? 今後の展開にも注目したい。
「今日はありがとう」と素直にお礼を言う鈴之介に「それは何? 人々が通常使ってる意味のありがとう?」と余計なことを言う琉夏。
「今度カラオケでも行こうか?」
「いいよ」
「今行く?」
「いいよ」
と、4人でカラオケに行くことに。みんなでYUIの「CHE.R.RY」を大熱唱。夜の雑踏を4人並んで笑顔で歩く4人は幸せそうで尊くて、この時間が永遠に続けばいいと願わずにはいられないが、一方でこんな時間は長く続かないんだろうなとも思ってしまう。
子どもの頃の自分に「大丈夫だ! 自分らしくいればいつか未来の自分が褒めてくれる、僕を守ってくれてありがとうと。友達もいつかできる」と言って抱きしめる鈴之介の言葉には、観ているこちらも励まされた。こんな自分が……と思ったことがある人はみんな、刺さるものがあったんではなかろうか。
星砂と悠日のやり取りもまた心に残った。
「人間て大事な思い出は身体全部で覚えるんだなって」
「大事なことは身体全部で覚える、それが生きるってことなんだなって思う」
「だからね、あんたね、私に何があっても私のこと覚えててくれるかな」
「覚えなくたって忘れるわけないじゃないですか」
「忘れるわけないじゃないですか」
星砂を抱きしめて言う悠日。この星砂がいなくなってしまうかもしれないなんて嫌だな……悠日がこの面子の中で唯一リア充だった(浮気されてたけど)のも何となくわかる。それにしても切ない……。
後日、悠日の兄・朝陽(毎熊克哉)が亡くなった現場に訪れた悠日と星砂。同僚刑事の話を聞き、朝陽のスマホの話をするうちに星砂は逃走してしまう。また森園が元弁護士だったことが発覚する。
刑事に復帰した鈴之介が東京で見かけたのは星砂だったが、”蛇女”と呼ばれる別人格のほうだった。どうする、どうなる……!?
(文:ぐみ)
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