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成田凌の隠しきれない透明感:誰かを“愛する役”がよく似合う
成田凌の隠しきれない透明感:誰かを“愛する役”がよく似合う
(C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
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刹那の魅力に惹かれずにはいられない。それが成田凌だ。
映画やドラマなどで観ていると、自然と心に予防線を張ってしまう。この人を好きになったら危ない、と思いながらも一瞬の表情で恋に落ちてしまう。演技、表情が魅力的なのは間違いない。同時に心を掴んでくるのは、透明感だ。
今回は成田凌の数多くの出演作の中から2作品を厳選して、彼の透明感についてみてみたい。
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『窮鼠はチーズの夢を見る』切ない恋の狭間で揺れる苦しみ
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』。水城せとなの人気漫画「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」の実写化だ。
成田が演じるのは主人公・大伴恭一(大倉忠義)に大学生のころから想いを寄せる今ヶ瀬渉。今ヶ瀬は探偵をやっており、恭一の妻に依頼されて恭一の浮気調査をしていた。
実際に不倫をしていた恭一に、7年ぶりに会ったにもかかわらず今ヶ瀬はカラダと引き換えに、妻に黙っていることを約束する。最初は今ヶ瀬を拒絶していた恭一だったが、次第にそのペースに乗せられていく。
大倉演じる恭一がまさしくクズ。不倫はしているものの、妻のことは大事だから別れたくない、とのたまう。言い寄られたら断れないし、いいなと思ったら自分を止められないタイプなのだろう。
だが実は妻も浮気していて、離婚の理由のために浮気調査を依頼していたのだ(相手が浮気をしていれば慰謝料はとれると考えていた)。「お金でしか私たちはつながっていなかった」という言葉にショックを受けた恭一は今ヶ瀬に電話をする。
(C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
少しずつ、今ヶ瀬が恭一の生活を浸食していく。今ヶ瀬は計算高く見えるし、恭一が振り回されているようにも見えるけれど、今ヶ瀬はいつも少し苦しそうだ。
恭一がどのように女性と付き合っているかも知っている。寛大に振舞おうとするが、恭一に拒否されたくなくて、ギリギリのところで自分を押し殺す。その苦しみでわずかに動く表情筋が、あまりに雄弁で観ている者の心を動かす。
(C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
一方で、恭一から愛情をほんの少しでも受けたときの表情のかわいらしいこと。
恋愛は楽しいことばかりではない。それでも、自然と顔がほころぶようなことだって絶対にある、ということを改めて思い知らされる。スッと空気に溶け込んでいく今ヶ瀬の想い。作品だけではなく、観ている人の中にも浸透していく。
それにしても、今ヶ瀬の「心底惚れるって、その人だけが例外になっちゃうってことなんですね」というセリフは名言である……。
成田は『窮鼠はチーズの夢を見る』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞している。
『人間失格 太宰治と3人の女たち』軽蔑と愛情がせめぎ合う
映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』では小栗旬演じる太宰治を支える編集者・佐倉潤一を演じている。
太宰治の物語だが、佐倉は映画のオリジナルキャラクター。太宰の才能に惚れ込んでいる一方で、近くで太宰の嫌な部分もたくさん見ている。妻(宮沢りえ)と子どもがいながらも、複数の女性と逢瀬を重ね、自殺を繰り返す。
史実では知られている話でも、映像として見るととんでもない男である、太宰治。倫理観はどこに!!と叫びたくなるほどだ。
(C)2019「人間失格」製作委員会
そんな太宰に腹立たしい思いを抱えながらも、佐倉は太宰のそばにいる。スター作家となった太宰はある種、やりたい放題。そんな太宰に対して、佐倉もときにはこらえきれずに感情を爆発させる。
「心から軽蔑します」。なかなか言えないセリフだ。
女性と恋をすることで作品を書いているような人だから、恋を奪えば太宰は書けなくなったのかもしれない。それをわかっていても佐倉は真っ直ぐに太宰に言葉をぶつける。その純粋さが、太宰と相反する形で際立つ。そのようにぶつかっていくのは、軽蔑をしながらも太宰という人間を愛しているから。
なかなかにクズの役も似合う成田凌だ。これまで多くの俳優が演じてきている太宰治を、成田が演じたらどのような姿になるだろうか、とつい想像したくなってしまう。
(ただ本作は小栗旬演じる太宰の妻を宮沢りえが演じ、太宰に親しげに話しかける伊馬春部を瀬戸康史を演じているものだから、つい別の作品を連想してしまう)
<成田凌>役を空間に溶け込ませる力
(C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
直感で感じてしまうような、危険な匂いがある成田凌。もちろん、クズな役柄だけではなく、紳士的な役も、真面目な好青年の役も演じる。その中で、共通して感じられるのが透明感だ。
どんな役を演じていても、見え隠れする何色にも染まらない芯のようなものが魅力になっているのではないか。その透明感があるからこそ、憎み切れない部分もあるような気がするし、ぶつける愛情もとても美しいものに感じられる。
余談だが、不倫をしている太宰治も恭一も似たようなセリフを口にする。急に別れたり、突き放したりしたら、相手の女性がかわいそうだと。そのときに見せる成田のまなざしが個人的には好きだ。
成田は声優として『君の名は。』と『竜とそばかすの姫』に出演しており、彼の透明感は新海誠作品や細田守作品にフィットしているのかもしれない。
次はどのような作品で成田凌の魅力を垣間見ることができるのか、楽しみだ。
(文:ふくだりょうこ)
■『人間失格 太宰治と3人の女たち』配信サービス一覧
| 2019年 | 日本 | 120分 | (C)2019「人間失格」製作委員会 | 監督:蜷川実花 | 小栗旬/宮沢りえ/沢尻エリカ/二階堂ふみ/成田凌/千葉雄大/瀬戸康史/高良健吾/藤原竜也 |
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