<相棒>祝・もうひとつの名コンビ復活!亀山薫と伊丹憲一の軌跡
(C)テレビ朝日
▶︎「相棒」画像を全て見る
2022年10月12日(水)スタートした「相棒 season21」。おそらく、多くの「相棒」ファンがこのときを待ち望んでいたことだろう。
初代相棒・亀山薫(寺脇康文)がついに帰ってきた!
待ちに待った第1話、亀山が「右京さん!」と杉下右京(水谷豊)を呼ぶ声が響き、久しぶりに並んだ初代特命係。ワクワクせずにいられなかった。
だが、心躍ったのはこの2人の再会だけじゃない。筆者はむしろあの呼びかけを耳にしたときにこそ、亀山が本当にこの世界へ戻ってきたのだと強く実感した。
「元特命係の亀山!」
この声の主はもちろんあの男。亀山の永遠の喧嘩友だち(?)、伊丹憲一(川原和久)だ。
■「相棒」関連記事をもっと読む
「相棒」名脇役・捜査一課の伊丹刑事という男
映画「相棒シリーズ X DAY」より (C) 2013「相棒シリーズ X DAY」パートナーズ
「相棒 pre season」初回から登場し、今シーズンに至るまでレギュラーとして活躍している「相棒」シリーズ名脇役の伊丹。
警視庁捜査一課の刑事である彼は、事件に何かと首をつっこむ特命係の存在が気に食わず、特に亀山とは犬猿の仲。伊丹の「特命係の亀山!」のセリフとともに亀山・伊丹が小競り合いを繰り広げるのが、「相棒」初期シーズンの名物だった。
共に熱血漢で考えるより先に行動しがち……といった共通点が見られ、似た者同士だから喧嘩してしまうと思われる亀山と伊丹。ただ、明るく気さくな亀山に対して伊丹はどちらかというと無愛想。言葉や態度も荒く、絵に描いたような強面刑事といっていい。
とはいえ、彼は決して怖いだけの男ではない。悪質な犯人を許さない伊丹、事件解決のために奔走する伊丹、そして上司の理不尽な指示に憤る伊丹。彼の気骨ある姿を視聴者は幾度となく目にしてきた。
仏頂面やぶっきらぼうな態度のせいで誤解されがちだが、心の奥に右京や亀山と何ら変わらぬ熱き正義感を宿している。それが伊丹という男なのだ。
亀山と伊丹、協力の軌跡を振り返る
犯罪を許さぬ思いは同じ。だからこそ、伊丹は疎ましく思いながらも特命係を認めており、これまで何度も右京、そして目の敵にしている亀山とも協力してきた。
亀山と伊丹の協力といえば思い出すのが、「相棒 season1」の第8話「仮面の告白」。連続通り魔事件の犯人を逮捕するために2人が一緒に張りこみをする回だった。容疑者のアパートを見張りながら、食事をしていない亀山に伊丹が手持ちのパンを差し出すやりとりがなんとも絶妙。「アンパンじゃだめか……ジャムパンならどうだ?」という伊丹のセリフに心動かされた視聴者が当時どれだけいたことか。無骨な中にも情のある伊丹の人柄、憎まれ口を叩きつつ実は認めあっている2人の関係性が伝わってきた。
他に亀山と伊丹が印象的な回を上げるとすれば、2人の剣道姿を楽しめる「相棒 season5」第7話「剣聖」だろうか。同回では、伊丹の尊敬する剣の達人が斬殺され、警察の事情で動けない伊丹が特命係にそれとなく捜査を依頼。右京たちが事件を解決した後、至極無愛想な態度でお礼の品を置いていく伊丹の姿が微笑ましかった。
さらに、劇場版第1作『相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』での2人も忘れられない。
本作品では、亀山と伊丹が爆発事故を防ぐために奔走。不審なボートを追って川に飛びこんだ亀山を伊丹が別のボートで追いかけて引き上げる。「相棒」きっての頼りになる2人の刑事が力を合わせる場面は本当に胸熱だ。
なお余談になるが、伊丹の魅力を知る上でぜひ見てほしい劇場作品がもう1つある。彼が主役をつとめるスピンオフ劇場作『相棒シリーズ X DAY』だ。
本作品は伊丹が日本を揺るがしかねない“金融封鎖計画”が絡む事件に立ち向かう社会派サスペンス。伊丹とサイバー犯罪捜査官・岩月(田中圭)との亀山らとのそれとは一味違った掛け合いが楽しめる。
亀山と伊丹は背中合わせの「相棒」
「相棒 season7」の第9話で、亡き友人の思いを受け継いでサルウィンに行くために退職した亀山。警視庁を出ていく彼を最後に見送ったのは、他でもない伊丹。(※右京はその後、電話で別れの言葉を贈った)。いつものように喧嘩しながらも最後に黙って亀山に手を振る伊丹の姿が寂しい余韻を残した。
この別れの際に伊丹が亀山にかけた言葉は「元特命係の亀山!」。「season21」第1話で、亀山を前にした伊丹が口にしたのと同じ言葉である。これがなんとも感慨深かった。長く離れていても2人の関係性が決して変わっていないのだと感じさせてくれた。
そして、続く第2話で亀山を警視庁に戻すために一役買ったのも伊丹だった。
妻の美和子(鈴木砂羽)とともにサルウィンを国外退去させられた亀山。仕事も住む場所もなくした彼を見かねたのか、伊丹は自分が警視庁に「ねじこんでやる」と申し出て、おかげで亀山は嘱託職員として特命係に戻ることができた。
一体どうやってねじこんだのか?と同僚の芹沢(山中崇史)らは不思議がっていたが、伊丹がとった方法は実にシンプル。特命係の上司・甲斐峯秋(石坂浩二)に土下座したのだ。
亀山の復職を甲斐に頼むというだけなら、おそらく右京にもできたこと。とはいえ、右京ならば土下座まではしなかっただろう。「お願いするときゃ土下座一択!」を貫いた。この男気、この不器用さこそが伊丹である。
力になる理由を亀山を「いびり倒して引きこもり亀にする」ためだと語った伊丹。彼がそう言うならばそれでいい。でもファンは察する。右京以外で亀山の退職を誰よりも寂しく思っていたのはきっと伊丹だ。
亀山と伊丹の関係もまた「相棒」といえるのではないだろうか。いつも一緒に事件に向き合うわけではないが、それでもどこかでお互いがつながっている。特命係を横並びの相棒とするなら、亀山と伊丹はいわば背中合わせの相棒。普段はそっぽを向きながらもいざというときに助けあう。確かな絆が2人の間に間違いなく存在している。
亀山薫の警視庁復帰でこのもうひとつの名コンビも復活。2人の喧嘩がまた見られると思うと「相棒」ファンとして嬉しくてたまらない。
そして10月26日放送の第3話でも、伊丹が亀山のために動いた。
池袋の輸入雑貨店の店長が殺害された事件で、現場で姿を目撃されてそのまま逃亡した亀山。彼が容疑者となってしまう中、亀山への協力を疑われて捜査からはずされた伊丹は、右京に頼まれて怪しい人物の周辺を探る。
「出戻り亀のせいで……」といつもの調子でぼやいていた伊丹。だが、実際彼は中園参事官(小野了)に亀山が犯人でない可能性を進言していた。また、右京とともに亀山のいる現場へ駆けつけて「亀山!」と叫んだ声からは真剣さが伝わってきた。きっと案じていたのだろう。
あの亀山が人を殺すわけなどない。右京を別にすれば、警視庁で一番そう信じていたのは伊丹に違いないのだから。
(文:田下愛)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。