続・朝ドライフ

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2023年01月09日

「舞いあがれ!」浩太の訃報で帰郷する貴司のさりげない思いやりが沁みた<第67回>

「舞いあがれ!」浩太の訃報で帰郷する貴司のさりげない思いやりが沁みた<第67回>

2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。

本作は、主人公が東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。ものづくりの町・東大阪で生まれ育ち、 空への憧れをふくらませていくヒロイン・岩倉舞を福原遥が演じる。

本記事では、第67回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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ばんばと貴司、東大阪へ

第66回で浩太(高橋克典)が突然亡くなり愕然としてからの、第15週「決断の時」(演出:田中正)は五島の祥子(高畑淳子)が訃報を聞いて急ぎ、東京に向かうところからはじまります。

祥子が出かけにふと仏壇のある部屋を振り返ると、浩太の記憶が蘇ります(この現在と過去のカットのつなぎがなめらか)。駆け落ちから何年もしてやっと和解しておいてよかったですよね。もしずっと確執があったままだったら駆けつけることもなかったでしょう。

貴司(赤楚衛二)も一緒に行きます。「なんで?」と浩太の死因を聞くときの語調が柔らかくてよかったです。

お葬式から帰ってくるめぐみ(永作博美)、祥子、舞(福原遥)、悠人(横山裕)、貴司、勝(山口智充)、雪乃(くわばたりえ)。いつもの路地がさみしげです。

めぐみ「こがんなことになって こがんつらいことってあるとやろか 母ちゃん よう耐えられたねえ 父ちゃん 死んだとき」

祥子「めぐみがおったけん まだ中学生で めぐみばちゃんと育てんばち それだけば考えて夢中で働いとった」

めぐみはいまになってようやく祥子の気持ちに気づきます。確執はとっくに溶けたようでしたが、大事な人が亡くなったときの気持ち、そのとき、自分のために頑張ってくれたのだと知るのです。
同じような経験をしないとわからないことってあるものです。それを2代続けての伴侶の死から描きます。祥子もめぐみも夫が早逝して、女手ひとつで生きていく。それが才津家の女の宿命? と思うと、舞も?と思ってしまいますね。舞はまだ結婚すらしていませんが。

第67回、回想への入り方がなめらかだった場面がもう1回あります。舞が疲れて帰宅して玄関で浩太の靴を見て、三和土で座って靴を磨いていたことを思い出し、たまらなくなります。「父ちゃん、もうおらん」と号泣する舞に寄り添うめぐみ。第1週で、シンクの前に座って泣いていためぐみに寄り添う浩太の場面を思い出しました。お葬式の帰りも、このシーンも、ずっと夕暮れ。NHKの演出家さんはこういうシックな場面がうまいですね。

浩太の死の哀しみを癒やす間もなく彼の残した会社をどうするかめぐみは迫られます。悠人は売るの一点張り。祥子が心配して「人間やバカ力でることもあっとぞ」と例の「向かい風」を例えに助言しますが……。悠人の凧はどこへいったでしょうか。

めぐみは自分が経営者になって浩太も守りたかった会社を守ろうと考えます。まるで祥子がめぐみを守るために頑張ったように。もちろん子育ても大変ですが会社はかなり大変だと思いますが……。

銀行の人から書類にサインを求められ、めぐみは緊張のあまり判をつくのに失敗します。一瞬、騙されるのでは……と不安になりました。
【朝ドラ辞典 (はは)】

主人公を産み育てる、朝ドラには欠かせない存在。父は早逝したりだめな人が多かったりするが、母は強く頼れる存在であることが少なくない。なかには母が早逝するパターンもある(「おひさま」など)。劇中、主人公がやがて母となることも多い。普遍性の象徴のようにも感じる。


(文:木俣冬)

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