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2023年01月11日

「大奥」第1話:キャスティングの妙に唸る。冨永愛&中島裕翔らが再現するよしながふみの世界

「大奥」第1話:キャスティングの妙に唸る。冨永愛&中島裕翔らが再現するよしながふみの世界

よしながふみ原作の連続ドラマ「大奥」(NHK総合)が1月10日よりスタート。

3代将軍・家光の時代から大政奉還に至るまで、奇病により男女の立場が逆転した江戸パラレルワールドを描く本作には、冨永愛、中島裕翔、堀田真由、福士蒼汰、風間俊介、斉藤由貴らが名を連ねる。

本記事では、第1話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「大奥」第1話レビュー

女将軍・徳川吉宗が存在している!

……と、思わず感動してしまった。よしながふみの大ヒット漫画を映像化したNHKドラマ10「大奥」。1月10日に放送された初回の放送は想像以上の出来で原作ファンを唸らせた。

本作は、若い男子のみが感染する奇病・赤面疱瘡の蔓延により、男性の人口が著しく減少。家光以降の将軍職も含め、あらゆる家業が女性から女性へと受け継がれるようになり、男性は“子種”として宝のように大事にされる江戸パラレルワールドを描くSF時代劇となっている。

物語の舞台になるのは、女将軍のために美男三千人が集うとされる「大奥」だ。原作通り、第1話は貧しい旗本の子息である水野祐之進(中島裕翔)が幼なじみ・信(白石聖)への身分違いの恋を断ち切るために、大奥入りを果たすところから始まる。水野はそこで、8代将軍の吉宗(冨永愛)に見初められるのだった。

原作は家光編、吉宗編、綱吉編といった風に、将軍が変わるたびに登場人物や物語に漂う雰囲気にもまた変化が少しずつ生じてくるが、中でも比較的平和で、ハッピーな結末を迎えるのがこの「8代・徳川吉宗×水野祐之進 編」だろう。

いわば、「男女逆転の大奥」という世界観をのぞきに来た人たちを容赦なく沼に引きずり落とすプロローグ的なエピソードとなっている。ここで外したら、視聴者が一気に離れていく可能性もあったが、キャスティングの妙により初回からガッチリ心を掴んだ。

今回は一巻をまるごと映像化した形になるが、おおよそシナリオは原作をそのままなぞっていく。大奥に入った後、将軍への謁見が叶わぬ御目見以下の中でも最も位の高い役職に就いた水野。何もわからず戸惑う彼の味方になってくれるのが、大奥で仕えて10年以上のベテラン・杉下(風間俊介)だ。

まだ俗世に染まりっていない若さみなぎる水野と、そんな彼を時折からかう、憂いを帯びた大人の男性だが遊び心もある杉下。まるで弟と兄のような関係を築いていく二人のやりとりが軽妙で心地が良い。

原作ではその後、こじらせ美男子の鶴岡と剣を交えた水野が、大奥の陰湿さを嘆く場面がある。しかし、そのエピソードは丸ごと省き、副島をはじめとした意地悪な古参たちはいるものの、物語全体が平和なムードに包まれた。

これによって、吉宗にとって初めての夜伽相手・ご内証の方に選ばれ、結果死罪を命ぜられる水野の青天の霹靂ごとき衝撃が強調されていたように思う。

また、「ご内証の方は打ち首になる」という事実が伏せられたまま、吉宗と水野が床を共にするのもドラマならではの演出。原作だと、ここで吉宗は水野の最後の願いを叶え、自身を幼馴染の名で呼ぶことを了承する。自分が夜伽相手に選んでしまったばかりに辛い思いをさせてしまう水野への申し訳なさが強調されるので、吉宗が水野に対して恋愛感情を抱いているか否かについてはわからなかった。

しかし、今回は吉宗がかなり水野を気に入っていることが伝わってくる。

吉宗役の冨永愛はキャスティングが発表された当初から「イメージ通り」と原作ファンから好評だったが、その寄せられる大きな期待に答えた。原作の吉宗に違わぬ威厳とオーラ。その上、冨永が演じることで吉宗の色気や無邪気な可愛らしさなどが引き出される。

特に水野に対して「私は着物や化粧に興味はないが、男に興味がないわけではないぞ」「今日からそなたは私の男じゃ」と吉宗が迫るシーンは悶えた。

だが、それほどまでにお気に入りの水野を吉宗は潔く手放す。死んだことにして幼馴染のもとに返してやるのだ。なんともいじらしい。そんな心優しき吉宗だが、大奥を取り締まる御年寄筆頭・藤波(片岡愛之助)にはちょいと灸を据える。

35歳以下の見目麗しい男子たちに暇を出す吉宗。「使わぬ種を囲い込む。この贅沢こそが上様のご威光」と杉下は水野に語ったが、そのようなものは吉宗に必要はない。幕府の財政再建のため、男子たちに外の世界で幸せを掴ませるため、吉宗は英断を下した。

抵抗する藤波に「黙りゃ!このたぬきじじい!」と一蹴する吉宗のかっこよさたるや。片岡愛之助が演じているにもかかわらず、藤波が小物に見えてしまうほど。

その後、怒りに狂う藤波に吉宗の片腕・加納久通(貫地谷しほり)が冷静な対応を見せる場面も原作のイメージ通り。柔らかい雰囲気を纏っているにも関わらず、実はとんだくせ者である久通もまた貫地谷しほりにしか演じこなせない。

原作ファンとしては、キャスティング担当者に金一封を贈りたいほどの感動がそこにあった。これは今後の家光・綱吉編も大いに期待できるのではなかろうか。

(文:苫とり子)

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