『すずめの戸締まり』岩戸環に幸せになってもらうための「芹澤朋也VS岡部稔」の考察
これからの環さんは「自分のために生きていける」
環さんは、劇中で「幼い鈴芽がいたために婚活もうまくいかなかった」と言ってはいけないことを言ってしまった。さらに、『環さんのものがたり』では幼い鈴芽のことで必死になりすぎて「あれほど好きで好きでようやく交際にこぎつけた年上の彼氏が離れていったことにも気づいていなかった」ことも語られている。だが、映画本編の終盤で、鈴芽と環はお互いに洗いざらいぶちまけた、でも「ぜんぜんそれだけじゃかとよ」と環から言って仲直りができ、今後は気兼ねなく不平不満を言い合える関係になることが示されている(『すずめの戸締まり』の小説版でもそのことが語られている)。
さらに、鈴芽は母の椿芽と同じく看護師を目指していることも予想できる。鈴芽の机に置かれた看護士になるための参考書がそれを示しているからだ。これから鈴芽は自立して生きていける、つまり環さんは子離れができる、いや「自分のために生きていける」ことも予見できるのだ。
つまり、環はこれからは鈴芽に気を遣わずに好きな人と一緒になってもいい、生涯を共にするパートナーを気兼ねなく見つけられる段階になれたとも言える。
そんな環さんを幸せにしてあげられる候補の男性は2人。草太の親友の芹澤朋也と、環の漁業協同組合の同僚である岡部稔である。筆者が事前にこの2人についてアンケートを取ったところ、芹澤朋也がやや優勢という結果になった。
『すずめの戸締まり』を観た人にお聞きします。すずめの叔母さんこと岩戸環に付き合ってほしいのはどちら?
— ヒナタカ@映画 (@HinatakaJeF) November 13, 2022
結論から申し上げれば、筆者も環さんとくっついて欲しいのは芹澤朋也派である。その理由を、双方の言動を元に記していこう。
芹澤朋也の推しポイント:気遣いができる男
芹澤の最大の推しポイント、それは何よりも気遣いができる男ということだ。ドライブで(後述するようにズレてはいるものの)ゲストに合わせた選曲をしているし、それ以外でも自然体で環さんのための行動ができている。さらに推したいのは、環が鈴芽と胸の内を言い合ってお互いに傷つけてしまい、泣きながら近寄ってきた時のことだ。芹澤はここで「どうしたんすか?」とっさになだめようとするものの、その手は環の身体に触れないように寸前で止めている。だがアイスクリームを落としてしまって、(小説版によると「もうやけくそで」)肩に手だけを置いてあげる。むやみに異性へは身体的接触はしない、だが「ここまでなら」肩に手を置いてあげる、彼のその距離感を肯定したいのだ。
また、芹澤はオープンカーでタバコを吸っていて「煙、嫌すか?」と環に聞いて、「まあ君の車やからねえ」と半ば「許可」をされていた。しかし、最後に持っていたタバコには火がつけられていない。新海誠監督曰く、このタバコに火をつけなかったこと自体が芹澤の成長を示しているとのこと。彼は許されたとしても、許されたレベル以上の気遣いができる(成長できる)男なのだ。
そもそも、激安の中古で屋根が閉まらないとはいえ、自分のオープンカーがあわや事故にあいかけ道の外へと突っ込んでドアも壊れてしまったのに、そのことで芹澤は鈴芽と環を責めたりはしない。それどころか、自転車で草太のところに向かう環(と鈴芽)を見て盛大に笑って「いいなあ草太のやつ」とつぶやく。自分の役割を果たして、あとは鈴芽(と環にも)にそこまで大切に思われている親友に想いを馳せる。なんていいヤツなんだ芹澤は……!
もちろん、環と芹澤の間には、明確に恋愛と言える関係は言及されていない。だが、環と鈴芽にとって、芹澤は大切な友人になったのは間違いないし、こうしたポイントから「今後の可能性」は示唆されていると思うのだ。
芹澤朋也のここが気になる:選曲のセンスがズレている
芹澤がドライブ中にかけた曲は『ルージュの伝言』や『夢の中へ』など。環と鈴芽がケンカをした後は、そのものズバリ『けんかをやめて』を流したため、「うるさいっちゃ」と環に怒られていた。芹澤はその時「ゲストに合わせて選んでいるんだけどなあ」と言っていたが、その前『ルージュの伝言』も『夢の中へ』も1970年代の曲であり、40歳前後の環さんにとっては年代が上すぎるのでわりと失礼でもある。それを持って、芹澤は「余計なお世話」もしてしまう人物と言える。
ただ、選曲のセンスこれも「認識がズレている」程度のくらいであるし、エンドロールで芹澤と環と鈴芽はやはりオープンカーに乗り(どのような選曲をしていたかは不明だが)楽しく3人で歌っていた。環が(鈴芽も)うっとおしさを感じていた選曲もおそらく受けいられた、もしくは共に楽しく歌える曲を選曲できるようになったということなのだ。
やはり、この3人は恋愛と呼べる関係にはならなかったとしても、住む場所が離れているとしても、今後とも良い友人同士の関係になれることだろう。
他にも芹澤朋也には懸念材料がある……だが推せる!
他に懸念すべきは、芹澤が小さい声(実際には相手に聞こえている)とはいえ「闇深ぇ」と鈴芽と環のすぐそばで言ってしまってることだろうか。やはり、芹澤はやや失礼で不遜なところもある。だが、その闇の深さを部分的にでも知ったということは、それに対しての彼女たちへの気遣いも今後はできるということでもあるのではないか。やはり、芹澤は見た目のチャラさとギャップのある、それ以上の誠実さがあるし、本当に教師に向いているんじゃないかとも思える。
また、芹澤と環さんが20歳近く年が離れているということもあるが、これについては個人的にまったく心配していない。環さんの方がそれを気にする可能性はあるものの、芹澤は前述したように自分のオープンカーが壊れても、それで環と鈴芽を責めたりはしない、とても度量が大きい男だからだ。ていうか、「年齢を気にして気を遣ってしまう環」と「年齢を気にせずグイグイくる芹澤」の関係性は尊いに決まっているのでめちゃくちゃ見たい。そんな年の差カップルが大好きです(個人的趣味)。
何より、「表面上は軽く見えるが、内面は誠実」という芹澤のキャラクターは、必要以上に「重さ」を胸の内に抱え込んでしまう環さんとは、実は相性が抜群だと思えるのだ。この2人こと「芹環」のカップリングの二次創作をもっとください。同人誌を出したら買います。
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会