人生を変えた映画

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2023年01月31日

シンガーソングライター・崎山蒼志を奮い立たせた世界的ダンサー・田中泯の“場踊り”

シンガーソングライター・崎山蒼志を奮い立たせた世界的ダンサー・田中泯の“場踊り”


一本の映画が誰かの人生に大きな影響を与えてしまうことがある。鑑賞後、強烈な何かに突き動かされたことで夢や仕事が決まったり、あるいは主人公と自分自身を重ねることで生きる指針となったり。このシリーズではさまざまな人にとっての「人生を変えた映画」を紹介していく。

今回登場するのはシンガーソングライターの崎山蒼志さん。中学生から音楽活動をはじめて、現在20歳。言葉を紡ぎ、歌い続けていた中で、崎山さんが強烈なシンパシーを感じた作品があった。

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『名付けようのない踊り』

世界的ダンサー、田中泯のダンスを犬童一心監督が撮影した本作。2017年から2019年の間、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛など33箇所を巡り、踊る姿を収録。〈場踊り〉という泯による独自の踊りの迫力が映される。
公式HP:https://happinet-phantom.com/unnameable-dance/
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※「テレ東本舗。WEB」および田中泯氏公演会場(一部会場を除く)等での限定販売商品となります。


爆発する生命力を前にして、生ぬるいことはしてられない

田中泯さんを初めて知ったのは、映画『るろうに剣心』でした。その俊敏で、力強いアクションに、この方は何者なのであろうと思い、調べると、ダンサー・舞踊家であることを知りました。


どんなふうな踊りを踊っていられるのだろう。気になりました。そうして探して見つけた映像で、"場踊り"を知ることなります。田中さんが踊られている踊りです。今まさに居る、その場所と踊る。周りの風景や大気と完全に一体となった人物がそこにいました。畏敬の念を抱きました。当時の私が知っていたダンスとは一味も二味も違いました。風に揺れる草木、土の上で、はためく衣服、寝転がりゆっくりと動く姿。表情に、全身に、何かが憑依しきっているような、その場と、共にあったのです。

感銘を受けたと同時に、私は絶大なインスピレーションと、自分のこれからも挑戦したい、やりたいことに少しだけ誇りを持てた、そんな気がしました。当時から私は、部屋に差し込んでくる光、その場の一瞬の密度に集中し、音を鳴らしイメージを膨らませる形で、即興で音楽制作していました。自己に秘めたる内面性を表現するというよりは、外側の世界に意識を向ける。外側の世界を自分の中で肥やしていく。烏滸(おこ)がましいようでもありますが、表現は違えど、場踊りには微かにシンパシーを憶えたのでした。


アルバム『並む踊り』に収録されている「踊り」という楽曲は、田中泯さん、そして大好きな詩人である、小笠原鳥類さんの作品に感化され、書き殴るように作った楽曲です。そういったご縁もあり、映画公開の際にコメント依頼をいただいたのが、今作との出会いでありました。印象的な言葉、シーンがいくつも飛び交います。田中泯さんの一挙一動に、強く胸打たれます。その凄みは、到底言葉にできません。

私はこの映画に凛と滾る、爆発する生命力に、自分自身、生ぬるいことはしていられないと思います。もっと純粋な心で、懸命に考え、イメージしたい。自分を震え立たせてくれる、指針の一作です。

(文・崎山蒼志)

Profile


崎山蒼志(さきやま・そうし)

シンガーソングライター

2002年静岡県浜松市生まれ。2018年5月インターネット番組の出演をきっかけに世に知られることになる。FUJI ROCK FESTIVALなどの大型フェス出演、ツアーを精力的に行いながら、テレビドラマや映画主題歌、CM楽曲などを手掛けるだけではなく、独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。雑誌「ギター・マガジン」では連載「崎山蒼志の未知との遭遇」を、新潮社文芸雑誌「波」でも連載コラム「ふと、新世界と繋がって」の執筆を担当中。
https://sakiyamasoushi.com/

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