「Get Ready!」第4話:過去一の神回。「MIU404」“青池透子”を彷彿とさせる美村里江の演技に涙
妻夫木聡主演のドラマ「Get Ready!」が2023年1月8日放送スタート。
本作は、多額の報酬と引き換えに、手段を選ばず患者の命を救う正体不明の闇医者チームの活躍を描いたダーク医療エンターテインメント。闇医者チームのメンバーには、主人公で孤高の天才執刀医・波佐間永介(通称:エース)を妻夫木、その相棒である交渉人・下山田譲(通称:ジョーカー)を藤原竜也、凄腕オペナース・依田沙姫(通称:クイーン)を松下奈緒、若き万能ハッカー・白瀬剛人(通称:スペード)を日向亘が演じる。
本記事では、第4話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
「Get Ready!」第4話レビュー
「Get Ready!」第4話は、闇医者チームの執刀医・波佐間=エース(妻夫木聡)と、オペナースの沙姫=クイーン(松下奈緒)の手術シーンからスタートした。
相変わらず、息がぴったりの二人。モニターでその様子を見ていた白瀬=スペード(日向亘)は下山田=ジョーカー(藤原竜也)からクイーンの技術はエースが仕込んだものだと聞き、クイーンの過去が気になり始める。
クイーンはオペナースになる前に何をしていたのか。なぜ闇医者チームに合流したのか。その過去が、新たな患者候補の人生と重なっていく。
今回の患者は、天才彫刻家と知られる女性・洋子(美村里江)。脳腫瘍が見つかり、剣持(鹿賀丈史)が院長を務める千代田医科大学附属病院に入院していたが、摘出が不可能であると判断され、病院を脱走。残された時間で最期の最高傑作を作ろうとしていた。
そんな彼女の元に、ジョーカーが交渉に赴く。洋子はずっと無名の彫刻家で、苦労してきたが、5年前に発表した作品をきっかけにその才能が認められるようになった。努力家で人から認められる才能がある。これならエースも「生きる価値がない」とは言わないだろう。
本人もまた手術を望んでおり、報酬も6億円までなら出すという。今回は何も問題はない……はずだった。
手術にあたり、洋子のMRI画像を確認していたエースはあることに気づく。洋子は脳腫瘍がきっかけで後天性サヴァン症候群(怪我や病気で脳を損傷し、特定の分野で際立った能力を発揮すること)を発症。5年前から急に才能が認められるようになったのもそれが原因だった。
つまり腫瘍を摘出すれば、命が助かる代わりに才能が消える。「命か才能か、あなたが生きる価値を選んでくれ」と洋子に問いかけるエース。これまでは患者の生きる価値を決める側に立っているエースが、患者自身に答えを委ねた。なるほど、新しい展開だ。
頭を悩ませる洋子に、自分の利益のためもあるだろうが、「才能は生きるために利用するものだ。そのために命をなくしてはいけません」と問いかけるジョーカー。何より、恋人の倉木(青柳翔)も洋子に生きてほしいと願っている。
だが、彼自身、洋子が才能よりも命を選び切れない一つの理由。倉木は全国に美術館を保有する一族の人間であり、洋子の才能を見出したのも他ならぬ彼だった。自分が才能を失えば、彼も離れていくのではないか。まるで禅問答のような終わらぬやりとりに、終止符を打ったのがクイーンだった。
患者から多額の報酬さえ貰えれば、それでいいと考える利益優先主義に思えたクイーン。そんな彼女がわざわざ洋子の前に現れた理由、それはクイーン自身も洋子と同じ経験があったからだ。
闇医者チームのオペナースになる前、クイーンは大手ジュエリーメーカーのデザイナーだった。宝石のデザインのみならず、天然のダイヤと比べても何の遜色もない人口ダイヤの研究もしていたという。しかし、ダイヤモンド市場には世界中で強力なカルテルが結ばれており、クイーンが生み出した人口ダイヤはその均衡を崩しかねないものだった。
よって、クイーンは何者かに命を狙われるように。そんな時、彼女を助けたのがエース。クイーンは彼に手術で顔を変えてもらっただけではなく、オペナースとしての技術を身に付けてもらった。これが今、クイーンが闇医者チームにいる理由である。
「結局、自分のことは自分で決めるしかない」「選んだのは私。もしこの先、後悔することはあっても納得はできる」と洋子に腹をくくらせるクイーン。果たして、洋子が選んだ道とは。
第4話は、ラストに大きなどんでん返しがあった。倉木に「才能なんかなくたっていい」「何もなくたって一緒に生きてほしい」と言われ、手術を受けることに同意したはずの洋子。無事に手術は成功したが、彼女は才能を失ったことによるショックで精神的に不安定になり、倉木に別れを告げる。
命は救われたのに、何となくモヤモヤが残るラストだなと思いきや、これは全て嘘。結局、洋子は倉木のために彫刻家としての才能、ひいては鼓動が聞こえてくるような作品を生み出す生きがいを捨てることはできなかった。
よって、脳腫瘍は摘出せず、残りの人生を、命を彫刻に捧げることに決めた。洋子が倉木についたのは、嘘は嘘でも優しい嘘。「後悔することはあっても納得はできる」というクイーンの言葉通り、死と直面する恐怖、倉木を手放し、ひとり彫刻に向かう孤独や喜び……様々な感情がない交ぜになった洋子のラストシーンに思わず一筋の涙が頬を伝った。
同じく美村里江がドラマ「MIU404」の第4話で演じた青池透子役を思い出す。命の灯火が今にも消えそうになったときに湧き上がる人間の強さを表現させたら、彼女の右に出る者はいない。
美村の名演も相まって、第4話はこれまで以上に心に響く回だった。もちろん、医者が救える命があるのに救わないという展開に意見は分かれるだろう。ただ、本作はあくまでも「自分の命の行く末は本人が決めること」という結論を取った。
洋子の遺作が並ぶギャラリーで倉木が涙を流しながらも穏やかな表情を浮かべていたように、本人が最期まで自分らしく生きたことがその人を大切に思う人にとっても救いになることが往往にしてある。洋子の人生を通して、考えさせられることがたくさんあった。
(文:苫とり子)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)TBS