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2023年02月01日

「大奥」第4話:「わしは仏をさらってきたのじゃ」斉藤由貴の春日局は憎くて愛おしかった

「大奥」第4話:「わしは仏をさらってきたのじゃ」斉藤由貴の春日局は憎くて愛おしかった


よしながふみ原作の連続ドラマ「大奥」(NHK総合)が2023年1月10日よりスタート。3代将軍・家光の時代から大政奉還に至るまで、奇病により男女の立場が逆転した江戸パラレルワールドを描く本作には、冨永愛、中島裕翔、堀田真由、福士蒼汰、風間俊介、斉藤由貴らが名を連ねる。

本記事では、第4話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「大奥」第4話レビュー

かつて、こんなに心揺さぶる悪役がいただろうか。春日局に扮する斉藤由貴の名演は、きっとこの先も人々の心に残り続ける。

NHKドラマ10「大奥」第4話のテーマは“変化”だった。新型コロナウイルスのパンデミックにより世界が一変するのを目の当たりにした私たちは知っている。人は良くも悪くも変わってゆける生き物だということを。

だからこそ、村瀬(石橋蓮司)が吉宗(冨永愛)に語る「若者は大人になり、世は移り変わっていきます。けれど一方で、その流れから取り残される者が出てくるものです」という言葉に深く頷ける。3代将軍・家光の時代にも、時代の変化に順応する者と、その流れに取り残される者がいた。

愛する有功(福士蒼汰)との間に子どもができず、春日局にあてがわれた新しい夜伽の相手との間に姫君をもうけた、“家光”こと千恵(堀田真由)。彼女は娘という守るべき存在ができたことで、その娘が生きる国の情勢にも目を向け、積極的に政を治めるようになる。

この頃には赤面疱瘡で男子の人口がかなり減少しており、多くの女性が男性に代わり、家業を継いでいた。しかし、依然として武家においては女性が家督を継ぐことは許されていない。

それは女性に戦働きはできないとする春日の意向であったが、千恵だけではなく春日の実の息子・正勝(眞島秀和)や他の御中臈たちも、戦乱の世が再び起こりうる可能性は低く、時代に応じた制度改革が必要だと気づき始めている。

千恵や有功の人生を奪っただけではなく、愛し合う二人の仲を切り裂いた憎き存在ではあるが、時代についていけず大奥の中で孤立していく彼女の姿は少々いたたまれない。

そんな中、春日は病に倒れ、その看病をお褥すべりとなった有功が見ることに。有功は千恵が母となり、より麗しくなっていく姿を日々目にしながら、壊れそうな心を僧侶だった頃のように人に尽くすことで何とか持ちこたえていた。そこで思わぬ春日の過去を知る有功。

織田信長を裏切った明智光秀に仕えた斎藤利三の娘として、命を狙われる身だった春日は、いつ殺されるかも分からぬ戦乱の世を終わらせてくれた徳川家康に心から感謝している。だからこそ、徳川の威光を示し続け、ひいては家康が作ってくれた平和な世を守るためなら手段は選ばなかった。

「鬼でもなければ平気なはずはございますまい」という有功の言葉が、人の心に寄り添う姿勢が、春日の被らずにはいられなかった鬼の仮面を剥いでいく。

「あの日、わしは仏をさらってきたのじゃ。間違いばかりのババであったかもしれぬ。じゃが、そなたには気の毒であった。じゃが、そなたをさらったことだけは間違いではなかった」

原作にはない、春日の台詞が心の一番柔らかい部分に触れる。そして、有功に「どうか世が滅びるその日まで上様と共にいて下され」と懇願する春日の穏やかな表情は仏のようで、また千恵を実子のように思う母のようで涙が止まらなかった。

千恵は誰かに守られる側から誰かを守る側になり、以前よりも強くなった。いつか滅びゆこうとも、愛するものたちが存在する世を守るため。春日も同じだったのだろう。やり方は間違っていたとしても、正勝のことも、千恵のことも彼女は鬼になることで愛し抜いた。

斉藤由貴がこんなにも憎くて愛おしい春日を作り上げたくれたことに感謝しかない。

(文:苫とり子)

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