スーパーマラドーナ劇場/OmO
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インタビュー

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2023年02月06日

「準決勝に進むために必要なものは、ウケと色」スーパーマラドーナ・武智が見たM-1GP2022

「準決勝に進むために必要なものは、ウケと色」スーパーマラドーナ・武智が見たM-1GP2022

2001年にスタートした、日本一の若手漫才師を決める賞レース、M-1グランプリ。

その注目度は年々増加。2022年大会においては、過去最多となる7261組の芸人がエントリーしたことや、常連組・ラストイヤー組が予選で敗退していったこと、2021年大会とは一新されたファイナリストの顔ぶれなどが決勝戦の放送前から話題になっていた。

そんなM-1グランプリ2022を、M-1への愛が深い芸人はどうみていたのか。スーパーマラドーナの武智に話を聞いた。

(画像提供:スーパーマラドーナ劇場/OmO)

2019年と同様に盛り上がったカギは、出順の妙

――昨年末、12月19日に決勝戦が行なわれたM-1グランプリ2022。武智さんから見て、どんな大会でしたか?

すごく良い大会だったと思います。僕の中で、1番盛り上がったのは2019年(ミルクボーイが優勝)だったと思っているのですが、それに近いぐらい盛り上がっていましたし、おもしろかったです。大会の内容的にも2019年大会と似ているなと思いました。

――どのような点が似ていましたか?

主に出順ですかね。

2019年って、優勝候補のかまいたちが2番手だったんですよ。それで「2番手やったら、強いほうのネタを当てないと決勝ラウンドまで残れない」と判断して、ほんまはファイナルラウンドに取っておく予定だったUFJのネタを先にやることになって。その結果、2番手にして、平均95点の点数を取ったんです。

――660点ですもんね。

2番手でそんな点数が出て、和牛も652点と高くて、大会全体の平均点数が上がっていったんですよ。

しかも、この優勝候補2組の次に出たのが、すゑひろがりずやったのが、またいい順番で。ぐんぐん上がっていった頂点のところで、ミルクボーイが681点という。

笑神籤(えみくじ)というシステムだからこそ生まれた、奇跡的に美しい順番でした。

――それと似ていたのが、2022年の決勝戦だったと。

そうなんです。トップのカベポスターがボケ数の多いネタを最高の出来で見せてくれて、トップバッターとして申し分なかったなと思います。カベポスターに高得点をつけざるをえない状況に審査員を追い込んだ結果、全体的に得点が高くなって、盛り上がったと思うので。

それからゴールデンタイムと言われる4、5、6番がロングコートダディ、さや香が続けて高得点を取ったあとで、変化球っぽいネタの男性ブランコが続くという。

それに加えて、ウエストランドが10番目にして3位の男性ブランコと入れ替わり最終決戦へというドラマも。2019年のぺこぱを思い出しました。

――たしかに。出番順って大切なんですね。

特にトップバッターは重要です。1番手がスロースターターだと、全体的に点数が跳ね上がらないような大会になってしまうので、芸人にとっても、大会全体としても出順は重要やと思います。

ファイナリスト3組、武智の当初の優勝予想は?

――ファイナルラウンドに進んだ3組、ロングコートダディ、さや香、ウエストランドはどうでしょう?

ウエストランドのファイナルラウンドでのネタは、初めて見たものだったんですけど「こんな隠し球もってたんや」と感心しましたね。毒の味がさらに鋭くなった漫才で、爆笑を重ねてたので、すごいなと思いました。

それでロングコートはロングコートらしい、漫才コントを曲げずにやってて、きっちり笑いを取っててよかったですね。

――武智さんは、どなたが優勝すると思っていましたか?

僕はファーストラウンド1位通過のさや香が優勝するのかなと思ってました。

――なぜでしょう?

人間味が溢れてたのが、さや香やったんですよね。だから、ウエストランドと接戦になるんじゃないかなと。

でも、あとでさや香の新山に話を聞いたら、現地のウケは完全にウエストランドのほうが上やったみたいですね。「漫才が終わった瞬間に負けたと思った」って言ってましたから。

――近年、優勝するコンビに共通する点はなんだと思いますか?

オリジナリティや生き様、人間力が出るコンビが強いなと感じています。最年長の錦鯉さんや、最下位を取ったことのあるマヂカルラブリーのように。ウエストランドが優勝したのを見たときに、その気持ちが強くなりましたね。

「ウケてても落とされていた」M-1予選で気になった存在も

――冒頭で「良い大会だった」とお話ししてくださったのですが、それは予選の時点でも感じてらっしゃったんですか?

そうですね。例年、めちゃくちゃウケてるコンビは通ってたんですけど、今回はウケてても落とされていたので。お笑いの層が厚くなって、より厳しく審査されてるなと感じました。

――決勝戦までコマを進めたコンビと、そうではないコンビの違いはなんでしょうか?

ウケてても落ちてしまったコンビは色や形が見えない、「こういう漫才師」というのが薄いなと。準決勝まで進んだコンビは尖りに尖っていて、自分らの色がありまくる28組が選ばれてるなという印象を受けました。

――ラストイヤー組や常連組が予選敗退するというのも、2022年大会のトピックだったかなと思いますが、そのあたりはどう見ていましたか?

準々決勝と準決勝を配信で見させてもらって、単純におもしろさとウケの量で(準決勝に進んだ)28組のほうが勝っていたなと思いました。

ただ、ランジャタイは28組に引けを取らないほどめちゃくちゃウケていたので、落ちたのは悔しいだろうなと思います。あえていうなら、ランジャタイのネタはどの設定であっても、良くも悪くもランジャタイらしいネタなのですが、今回の審査員さんには、それが逆に新鮮味に欠けるものとして映ってしまったのかもしれないですね。

――なるほど。武智さんは大阪の準々決勝の会場でMCを担当されていました。予選のMCとして、どのように振る舞うことを意識されてましたか?

主役は出場者のみんななので、1組目をやりにくくさせないために会場をあたためておくことに尽きるかなと。各ブロックが終わるごとに、MCが出ていってしゃべるのですが、1組目を3・4組目と同じぐらいのあたたかさでスタートさせれるようにすること。

――予選当日、舞台裏で出場者の方とお話はするのでしょうか?

廊下ですれ違ったり、楽屋まで挨拶しに来てくれたりしたら一言交わしますけど、あまりプレッシャーになっても嫌やろうし、ネタ合わせもしたいやろうから「がんばれよ」とか「期待してるわ」ぐらいで終わりますね。

やっぱり当日はピリピリしてるんでね。相方の田中も「できるだけ視界に入らないように気配を消してる」って言ってました。

――2022年は準決勝に進めなかった芸人の中で、2023年大会では進むのではないかと期待している方を教えてください。

僕らがMCをさせてもらった日に、1番ウケてたのはダブルヒガシでしたね。あとは鬼としみちゃむ。

それからバッテリィズは、カラーもおもしろさもあったので、これから内容を詰めてウケの量を増やせたら良いとこまでいくんじゃないかなと。2023年大会で楽しみにしています。

――個人的には年々大会の価値が上がっているようにも感じます。武智さんにとって、M-1とはどんな大会でしょう?

優勝すれば、人生は激変すると思います。決勝に出るだけでも好転はしますが、好転して、仕事が増えたときに対応できるかどうかは、今までの自分らの仕事への向き合い方によって変わるんだろうなと。ウケれば仕事が継続的にもらえるし、ウケなかったら減っていきますから。

それと、第1回大会から20年以上経って、M-1自体が1個のカリスマを纏うようになってきたようにも思います。僕らがダウンタウンさんを観て、憧れて、お笑いの世界へ入ったのと同じような感覚を、M-1に対して持っている若手って多いんだろうなと。

(取材・文=於ありさ)

明日は後編として、出場者が解禁となった「THE SECOND」の展望について語っていただいたインタビューを公開予定!

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