「大奥」第9話:冨永愛×三浦透子の名場面に感涙!2人のようなリーダーがいてほしい
本記事では、第9話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「大奥」第9話レビュー
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冨永愛演じる八代将軍吉宗とその娘、三浦透子演じる九代将軍家重。この二人の抱擁に、あたたかい涙が頬を伝った。
「大奥」第9話の前半は、前回と同様にオリジナル要素が強く、吉宗と赤面疱瘡との戦いが描かれた。特に注目されたのが、進吉(中島裕翔)が発見した赤面を1人も出していない村に伝わる妙薬「猿の肝」だ。果たして、これは赤面の特効薬となるのか。
結果的に、吉宗は市中で発生した赤面の感染拡大を防ぐことはできなかった。小石川療養所に患者を隔離し、猿の肝を与えたが思わしい効果は出ず。じゃあなぜ当該の村から1人も赤面が出なかったのかといえば、それは村が山に囲まれていたからに過ぎない。まだウイルスが地方まで広がっていなかっただけなのだ。それなのに、最悪なことに進吉たちが持ち込んだウイルスによってその村から感染者が出てしまう。
ご情報に惑わされたり、むやみやたらな移動で感染が拡大したり、3年前に発生した新型コロナウイルスに振り回されていた私たちの姿と重なる。未知のウイルスはいかなる時代でも我々人間の脅威となるのだ。
これまで様々な改革を成功させてきた吉宗でさえも、言葉通じぬ相手を前に敗北を喫する。だが、この時の悔しさが洋書の輸入制限緩和に繋がった。男たちが蘭学を学ぶことも許可する吉宗。
彼女は赤面に勝つことはできなかったが、医学の発展に大いに検討し、シーズン2で描かれる医療編に登場する蘭方医の青沼や、研究者である平賀源内にバトンを繋いだのだ。そのことを一連のエピソードで強調させる実に鮮やかな構成。お見事としか言いようがない。
またここで吉宗が味わった悔しさは、後半で描かれる後継者問題にも活かされる。さあ遂にお待ちかね、家重の登場だ。通常の歴史でも言われていることだが、家重は脳性麻痺による言語・排尿障害があったとされる。この難しい役を三浦透子が生きた演技で見事に乗りこなした。大奥の家重は確かに存在していたと感動を覚えるほどに。
新たに自分付きの小姓となった龍(當真あみ)に嫌がらせレベルの要求をする家重は、確かに歪んでいる。だが、そこにちゃんと身体が思うように動かせない苛立ちや憤りが見えるのだ。一方で、将棋を指す仕草などにふと彼女の聡明さが映る。自分のことを思い、泣いてくれる龍と一緒にいる時の家重の言葉がいつもより少しだけ聞き取りやすくなるのも印象的だった。決して、未知のウイルスみたいに理解できない相手じゃない。理解しようと努めれば、誰だって本当は彼女の心の内に気づくことができるのだ。
そこに渦巻く感情を三浦透子は色鮮やかに見せてくれる。龍役の當真あみ、大岡忠光役の岡本玲の家重に向ける瞳にも嘘のない尊敬や忠義が宿っていた。原作で味わったのと同じ感動がそこにある。
後継者問題には余計な口を挟まずにいた久通(貫地谷しほり)は、一つだけ吉宗に進言する。「将軍の器とは、他のものを思う心の有る無しであると私は考えております」と。たしかに彼女がついていきたいと願った吉宗にはその心が有った。吉宗は一度だって己の利益のために動いたことはない。突っ走って周りが見えなくなるほどに、いつだって国の行く末、ひいては民のことを思っていた。
なりふり構わず赤面撲滅のために奔走し、失敗しても諦めず、反省を次に繋げる。自分たちの国のトップに立つ人はそういう方なのだという信頼と安心を、私たちはいつも求めているような気がする。だけど、なかなかそれが満たされないから、本作で描かれる吉宗の姿に恋い焦がれるのだろう。
そして、家重もそんな母と志は同じだった。「役立たずだから死にたい」という彼女の訴えを、吉宗は「生きるなら人の役に立ちたい」という叫びに変えた。
表の態度や振る舞いがそのままその人の心を映しているだけではない。これは本作がずっと描いてきたことだ。家光(堀田真由)は有功(福士蒼汰)に、綱吉(仲里依紗)は右衛門佐(山本耕史)に、そして家重は吉宗に本当の自分を見つけてもらった。吉宗にはずっと久通がいる。
どの将軍の人生も波乱万丈ではあるが、決して悲劇で終わらせない。どこかに希望を残すこの物語がやはり好きだ。次週はついに最終回。シーズン2が決まっているとはいえ、しばしの別れが寂しくて仕方ない。
(文:苫とり子)
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