「らんまん」池田蘭光と万太郎が男旅<第9回>

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第9回を紐解いていく。

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名教館がなくなる!?

「舞いあがれ!」でもあったミサイル発射のニュースで本放送が休止になりました。

※参照:朝ドラ辞典「放送休止」


万太郎(小林優仁)の懐中時計分解は第9回に引きずらず、新たなトラブルが……。

万太郎は番頭の給料の2ヶ月分もする高価な植物の本を購入し、峰屋の人たちを唖然とさせます。万太郎は当主としての自覚が足りず、店のことはお構いなし、自分の好きなことばかりしています。

あんなにいやがっていた名教館ではいまやすっかり生き生きと学び、生徒たちのなかでも優秀で頼られています。

それをじっと見つめるタキ(松坂慶子)。満足したのかと思ったら、名教館をやめさせると言うのです。あんなに「名教館」「名教館」とうるさかったのに。今度はやめたくないという万太郎の言うことなんて無視です。

タキにとっては峰屋がすべて。峰屋のために学ばせ、峰屋のために辞めさせるのです。

残念、無念……と思ったら、万太郎が辞めなくても名教館は廃校になることに。国が小学校を作ることになったためです。

私塾制度がなくなって、誰もが学べる時代になった良さと同時に、画一的な教育になっていくという欠点もあるでしょう。いまの日本が学校制度によって培われたことを感じさせるエピソードです。

池田蘭光(寺脇康文)のように独自の教育を子どもたちに施すことは、植物のそれぞれの個性を認識することでしたが、政府が決めた教育を全員に施すことは個性重視ではなくなってみんないっしょになってしまいます。

蘭光はこの地を出る前に自然の見納めに、万太郎ともうひとりの生徒で武家の子・広瀬佑一郎(岩田琉生)をつれて一泊でフィールドワーク的なことをします。ふたりは最も優秀な生徒なのでしょうか。武家代表&商人代表でしょうか。

厳しいタキが一泊を許したのは、万太郎に男親がいないことを気にしたからかもしれません。ちっとも当主としての自覚が芽生えないのは、男親がいないからではないかとタキはまた自分が女性であることを気に病むのです。

男旅。自然の植物を観察する蘭光と万太郎。第8回では書物に書いてあったことから「毒はないし味もない」と言っていた蘭光ですが、第9回では実際に食べて確かめて「こういう確かめかたもある」と言います。葉っぱを食べて「苦い」という顔をしたときの小林優仁さんの顔が自然で良かったです。



”自然の力は人よりも大きい。人はそれを封じ込むことはできん。”
(蘭光)

川を見ながら蘭光は語ります。
でも「共に生きるのはどうしたらええがでしょう」と佑一郎に聞かれても蘭光は答えません。それは現代でもまだわかっていない真理です。ただ、植物にはあまり興味を示してないけれど、川に興味をもった様子の佑一郎、ゆくゆく中村蒼さんが演じ、万太郎との交流は続いていくようです。土木工学を学び工部省に入省すると、NHKドラマガイド「らんまん」(NHK出版)に書いてありました。自然のちからと共に生きることを考えてその道に進んでいくのでしょう。

さりげなく自然災害に対する警鐘を盛り込むのも、震災以降の物語であります。が、自然の力を人は封じ込むことができないというのは、自然災害に限ったことではなく、疫病もですし、大好きな人たちと死に別れることや、時代が変わってこれまでの価値観が変わり、私塾を閉めないといけなくなることとも重なりました。


(文:木俣冬)

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