インタビュー

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2023年04月21日

黒木華「ちょっとサボるくらいでいい」映画『ヴィレッジ』が描いた社会で生きるリアル

黒木華「ちょっとサボるくらいでいい」映画『ヴィレッジ』が描いた社会で生きるリアル

『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』『余命10年』の藤井道人監督がオリジナル脚本を手がけたことでも話題の映画『ヴィレッジ』が4月21日(金)より公開される。本作は美しい集落・霞門村(かもんむら)を舞台に、閉鎖的な世界に蔓延る現代の日本社会の闇を投影したサスペンス・エンタテインメントだ。
主人公・片山優(演:横浜流星)は、村にゴミの最終処分場が建設されることになったのをきっかけに、人生が一変。過去に起きた事件によって村中から蔑まれ、希望のない毎日を強いられる。そんな優に手を差し伸べるのが、東京から戻ってきた幼なじみの美咲(黒木華)だ。

同調圧力の強い環境の中で、優とともに運命に抗う美咲を通し、黒木は何を考えたのか。社会で生きていくことをテーマに話を聞いた。

社会で生きていくリアリティが表現されている

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――映画を観て、どのキャラクターも最低限の幸せをこなしている感覚、心から「居心地が良い」と思えていないような生きづらさを感じました。黒木さんは、作品に対してどのような印象を持ちましたか?

黒木華(以下、黒木):最初に脚本を読んだとき、重たい話だなと思う一方、村社会で生きている人たちに限らず、社会で生活している上で、なんらかのコミュニティに属していたらあることだなと感じました。多くの方がリアリティをもって観ていただけるだろうなと。

――その中で、黒木さんが演じた美咲はどうにか状況を好転させようと、前向きに振る舞うキャラクターです。美咲の印象も教えてください。

黒木:美咲は東京の生活で精神的に参ってしまい地元に帰ってきたのですが、村にも居場所がないんです。監督が「(横浜さん演じる)優の合わせ鏡のように描きたい」っておっしゃっていたのを聞いて、「そういうことか」と。美咲も優も居場所がないんですよね。



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――本編を見たときに、同調圧力の強い環境の中、なぜ美咲が腫れ物扱いされている優に手を差し伸べたのかは気になったところだったのですが、「鏡」だったからなんですね。

黒木:きっと自分の中にある弱さを優にも見ていたんでしょうね。美咲が優にかける言葉は、美咲が誰かに言って欲しかった言葉なのかなと思ったところもありました。もちろん心からの言葉ですけど、自分にも必要だったのかなと。

笑ってやり過ごしていれば、うまく生きていけることも知っている。でも、優と再会してから、本当の意味で居心地の良い場所を見出せていたんだと思います。

――役作りの上で、藤井監督とディスカッションしたことはありますか?

黒木:自分の気持ちをどのくらい隠すのか、あるいは出すのか話し合いました。美咲は東京で心を病んだことをみんなに知られた上で帰ってくるのですが、「私はしんどいです」と見せる必要はないと思いましたし、監督も「ふとしたときに見せる顔に美咲が抱えていたものを映せたら」とおっしゃっていたので。そのバランスをどうするかは話し合いましたね。

一緒にいる人が心地良いと、居心地が良い

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――居場所というのが1つのテーマなのかと思いますが、普段の生活の中で居心地を良くするために心がけていることはありますか?

黒木:なるべく笑顔でいろんな人に話しかけるようにしています。でも、相手があまり話したくなさそうだったら、無理矢理そういうことはしなくて、空気を読むことを優先しちゃいますね。

――なるほど。空気を読みすぎて、気疲れしてしまうことはないんでしょうか?

黒木:疲れるときもありますが、一緒にいる人が心地良いと感じることで、自分も居心地の良さを感じられるタイプなんです。仕事が円滑に進むほうが嬉しいし、ストレスは自分で解決できたらいいかなと。でも、皆さん大人なので学生時代ほど、そういうことに悩むことはないですけどね。

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――そうですよね(笑)。ちなみにストレスの発散方法はなんなんでしょう?

黒木:おいしいごはんを食べることです! 地方ロケに行ったときは、おいしいお店を探して「ここに行こう!」って。そのために頑張っています。普段も、大きいお仕事が終わったらお寿司を食べたり。おいしいものは外せないですね。

――お寿司がご褒美なんですか?

黒木:いや、なんでも。おいしいものだったらなんでも好きです。

海が近いところにいるときはお魚、山が近いと山菜やお肉と、その土地のおいしいものを食べに行きます。

――『ヴィレッジ』の撮影期間中は、何を食べましたか?

黒木:スケジュールがタイトであまり外に食べに行けなかったのですが、肉割烹のお店に行ったり、お蕎麦を食べたり……。あとは、撮影場所の近くのごはん屋さんが差し入れしてくださったプリンがすごくおいしかったのを覚えています。地元の人に紛れてカウンターで焼き鳥を食べたこともありましたね。おいしかったな〜。

――声をかけられなかったんでしょうか?

黒木:はい。みなさんも私も目の前の焼き鳥に夢中でしたから!(笑)

「頑張りすぎなくていいし、ちょっとサボるぐらいでいい」

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――居場所というテーマから派生して、この映画が公開される4月は新生活を始められる方も多くいます。黒木さんが演じた美咲は村を出て東京で生活を送っていたキャラクターですが、黒木さんご自身の上京エピソードを教えてください。

黒木:一人暮らしを始めたときに突然ホームシックになりました。頻繁に親に電話していましたね。

でも、東京に出てくるときはウキウキした気持ちのほうが強かったです。自分の好きな仕事をするために出てきたので。あと、一人暮らしっていうのも楽しいじゃないですか、自分の時間を自分のために使えるし、東京ならお芝居も、映画もたくさん観られますし。

――では、最初から東京を楽しめていたんですね。

黒木:うーん…でも、お仕事が安定するまでは自分のことが後回しになっていた気もします。だから、これから上京して来られる方も、慣れるまで時間がかかって当然かなと。あまり頑張りすぎなくていいし、ちょっとサボるぐらいでいいと思います。

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――ありがとうございます。『ヴィレッジ』の公開1週間後には、主演映画『せかいのおきく』も公開されます。今年の残りでやりたいことはありますか?

黒木:大河ドラマの出演が決まっているので大河を頑張れたらいいなと。吉高由里子さんとも柄本佑さんとも久しぶりなので、共演できるのが楽しみです。あと、プライベートでは海外に遊びに行きたいです。

――特にどこに行きたいですか?

黒木:メキシコに行ってみたいですね。ダイビングが好きで免許も取ったのですが、なかなか行けてなくて。海の中って、何がいるかわからないですし、魚や得体の知れない生き物に会えるのがすごく楽しいんです。世界と切り離されている感覚になれて、癒やされる。メキシコの海はすごくキレイだと聞いたことがありますし、さらに未知の世界なんだろうなと思うと、今1番行きたい場所です。 

(ヘアメイク=新井克英/スタイリスト=高橋茉優/撮影=大塚秀美/取材・文=於ありさ)

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